318、村長の長女シンディ
というわけで早速出発。ラルゴからじっくり話を聞いてもいいんだけど、マジですぐ着くからね。
あ、ほら、もう見えた。
「降ろすだけでいいのか? 俺らはもうこの村に用はないしな。」
「あ、ああ、構わん。というかすまねぇ。まさかこんな一瞬で着くなんて……これがあの魔王なんだな……噂にゃ聞いていたが、とんでもねぇ……」
飛んできたのにとんでもないって? ぷぷぷ。
あ、こいつを降ろしてさっさと行こうと思ったら思いっきり村長と目が合ったじゃん。まだ上半身裸だし。外で何やってんだよ。
「やあ村長。さっきぶり。こいつが用があるらしくてさ。置いてくよ。」
「てっ、てめえスサイエ! どのツラぁ下げて来やがったあ!」
「まっ、待ってくれ村長! 話を! シンディと話をさせてくれ!」
シンディ? ああ、惚れた女がいるとかって話だったな。
「バカかてめぇ! とっくに嫁に出したに決まってんだろがあ! とっとと帰れやあ!」
そりゃそうだ。スサイエ、いやえーっとラルゴはもしかしてロマンチストなのか? 職人馬鹿って話もあったし。
「嘘だ! そんなハズがねえ! 俺達は約束したんだ! いつかきっと一緒になるって! 迎えに来るって!」
マジかこいつ……三十代後半のくせに心は少年なのか? そういうの嫌いじゃないけどさぁ、見てるこっちがきっついなぁ……
仕方ない。少しだけ、ほんの少しだけ助け船を出してやるか。
「なあ村長。ちょっと相談。遠くからチラッと様子を見るだけならどうだい? こいつだって幸せそうにしてる娘さんを見たら諦めもつくんじゃない?」
「ちっ、魔王様よぉー。嫌な口出しはやめてくれよな。こりゃあんたにゃあ関係ねー話だからよ」
ごもっとも。
「関係ないと言えばないけど、あると言えばあるんだよな。こいつは役に立つ男だからな。今後も気持ちよく仕事をして欲しいわけよ。ちなみに、遠くから見てそれでもまだ恥ずかしげもなく未練たらたらってんならそこら辺の海に落として頭を冷やしてやるよ。」
「くっ……」
『魔王殿、あやつ何やら嘘をついておるぞ』
おっと、こっちの村長センサーが反応したかい。先ほどまでの会話の中で嘘があるとすれば……あ、もしかして……
「なあ村長、その子、シンディだったか。本当に嫁に行ったのか?」
「あ、当たり前だろお!」
『これだの嘘は。ただちと弱い』
あらまぁ。でも弱いって何だ?
「え、もしかしてこの村にいるの?」
「いっ、いるわけねーだろ!」
『これも嘘だのぉ』
いるんかい。
「悪いな村長。こっちの超イケメンがいるだろ? 彼って嘘か本当か分かる個人魔法を持っててな。その子がこの村にいるってことは分かった。スサイエと会わせたくない事情があるなら言ってくれ。」
個人魔法って言っておけば真実味があるだろ? 誰がどんな個人魔法を持ってるかなんて誰にも分からないんだからさ。
「くそったれがぁあ! 当たり前だろがぁ! たかが職人風情に! 村長の俺の娘をやれるわけねーだろがぁ!」
あぁ、なるほどね。そんな考えもあるのか。たかが漁村の村長のくせに言うじゃないの。
「分かった。それなら俺は納得した。ちなみに本人の気持ちはどうなんだ? 今何歳か知らないけど未婚のままなのか?」
「だから嫁に出したっつってんだろーが!」
『妙だの。嘘でもあり本当でもあるようだわえ』
嫁に出したけど村にいる。普通に考えれば村人と結婚したってことになるが……でも嫁に出したってのも嘘っぽいんだよな? てことは……
「旦那が死ぬか何かして村に戻ってきたのか?」
「いっ、いるのか! シンディは村に!」
「だからいねーって言ってんだろ! いい加減にしろやぁ!」
「お、お父さん? それに、スサイエ!」
おっ、本人登場か。私の推理は正解かな? まあ村長のおかげだけどさ。
しかしさぁ、私達ってこんなことしてる場合じゃないんだけどなぁ。マイコレイジ商会が潰れるかどうかの瀬戸際だってのに。
でもやはりアレクがワクワクした顔してんだよなぁ。女の子だねぇ。かわいいねぇ。




