317、ラルゴの衝動
スサイエ、じゃなかったラルゴの仕掛けは偽印本体に対するもので印影には影響がない。だから偽証文であることを証明するには何も関係しない。
残り三割の勝ち目をどうするか……あいつらがまだ大事に偽印なんてキープしてればいいんだけど。
とりあえずアレクや村長と相談だな。この話は聞こえてただろうし。
「……というわけで、確実に覆せるとはいかないよね。ここから何かいい考えないかな?」
「あるわ。といってもフェリクス様にお縋りすることになると思うけど。」
おっ、アレクそれは何だい?
「おお、儂か?」
「ええ。こうなったら直接交渉するしかないと思うのです。ドストエフ様、そしてリゼットの兄と。あぁ、ラルゴとはリゼットの兄の名前でもありますわね。まあそこはさて置き、その時にフェリクス様には彼らの心を読んでいただきたいのです。」
なるほど。それだけだと証拠としては弱いけど、心を読むうちに何やら物的証拠の在処が分かるかも知れないってことだな。
つーかスサイエがラルゴを名乗ってるのって実は偶然じゃないのか?
「なるほどの。あい分かったぞえ。どこまで読めるかは相手の魔力次第だがの。期待はしてくれるなよ?」
「分かった。悪いけど頼むね。」
「ありがとうございます。」
そうと決まればさっさとフランティア領都に戻るとするか。おっとその前に。
「なあ村長、さっきのヤバい話に関係するんだけどさ。この村ってブータルグ作ってるんだよね?」
「んー、作ってはいるけど。あんまり芳しくないよ?」
だろうね。あっちの村と比べても規模が半分どころじゃないもん。
「もっと発展させたいとは思ってる?」
「んー、そりゃあね。よくできたブータルグは高く売れるからね。伯爵様としても力を入れたいとはお考えらしいよ」
伯爵……ここらの領主か。
「海の向こうにあるセパルス村なんだけどさ。近々ブータルグが専売になるんだってよ。こっちでもそんな動きはあったりするのかい?」
「え、専売? あのセパルス村が!? それってどうなの? 大丈夫なの?」
「さあな。あっちの村長はぶち切れてたけどね。領主は儲かるんじゃない? 一時的には。」
「だ、だよね? ぼくみたいに学のない人間でも分かるよ? あっちの領主様何を考えてるんだろう……」
「というわけで今のがヤバい情報ってやつね。今の話はここの領主に話しても構わんよ。任せる。もしかしたらその件でまた来るかも知れないからさ。その時はよろしく頼むね。」
「伯爵様ならすでにご存知かも知れないけど……一応ぼくからもご報告した方がいいよね……絶好の機会かも知れないものね」
いくら王家に献上する品々を作っていたとしても、いつまでも続くとは限らないもんね。専売なんかして遊んでる間にぶっちぎってやりなよ。
「なっ、なぁ、あんたその情報いつ知ったんだ?」
おや、ラルゴが口を挟んできた。
「ついさっき。午前中だな。」
「はああああ!? 何だそりゃ!? いったいどうやってこの村まで来たってんだ!?」
どうでもいいけどラルゴの奴はすっかり元気になってるな。さっきまで元気なさそうにしょぼくれてたのに。
「そりゃもちろん飛んできたのさ。ちなみに今朝は王都にいたぞ。」
「い、意味が分からねぇ……」
「で、それがどうかしたか? セパルス村に用でもあるんなら乗せてってやるが。でも帰りは知らんぞ?」
「ほ、ほんとか!? た、頼む! 連れてってくれ!」
私もあまり人のことは言えないけど、こいつもしかして思いつきで行動してるんじゃないだろうな?
「別にいいけど、マジで帰りのことは知らんからな?」
「ああ! 構わねぇ! ちょっと荷物をまとめてくる! 待っててくれぇ!」
行っちゃったよ。本気か。何考えてんだろうね。
「んー、ラルゴはさ。セパルス村に惚れた女がいたんだよ。でもあっちの村長に大反対されてさ。アレクサンドリアまで行ったのはその後だったかな。まさか今でも惚れてるとでも言うのかねー?」
何年前の話か知らないけど、そんなのとっくに結婚してるに決まってんだろ。つーかあのムキムキ村長が大反対したからにはそれなりの理由があるんだろうねぇ。
どうせ帰り道のついでだからセパルス村に寄るのは全然手間じゃないし。私も話ぐらいは聞いてみるかねぇ。だってアレクが興味深そうにしてるんだもん。ロマンスの香りでもしたのかな?




