315、ドマルサン伯爵領ウプーセ村
漁師街の定食屋って感じかな。
それでもいい酒いい海鮮、そしていいブータルグが出されて私達は大満足。なお支払いはここの村長持ちだった。いやぁ悪いねぇ。
いい買い物もできたことだし、ぜひまた来たいものだ。渡りの職人スサイエ探しがメインだってのに全力で観光しちゃってるなぁ。時間にそこまで余裕はないってのに。
「じゃあ村長、またね。」
「ピュイピュイ」
コーちゃんがご馳走様だって。偉いね。
「おっ、おお……頼むからよ……マジで」
『浮身』
『風操』
では、対岸の村まで行ってみよう。またねー。
到着。やっぱ飛ぶと一瞬だな。実際は百キロルってとこかな。この距離でよくあっちから陸が見えたな。と思ったら、こっちは山が高いのか。あの先端がずらりと見えてたわけね。ほぉー、海から山までの距離がやけに近いな。こりゃ険しそうな土地だね。
さて、お目当てのウプーセ村は……あれかな? 上空から見た感じ本当に漁村って感じじゃん。タティーシャ村よりはギリ大きいぐらいでさ。
とりあえず海辺に着陸。港の体裁もあんまり整ってないなぁ。これじゃあセパルス村のライバルなんて無理じゃない?
おっ、釣り人発見。一人だけか。やけに集中してるなぁ。声かけにくいじゃん。
「やあこんにちは。釣れるかい?」
「えっ!? あぅっ! あぁーー! 逃げられたーー! 何すんだよーー! ん? 誰だお前? うわっ超美人!? めっちゃかっこいい!?」
忙しい奴だなぁ。
「まあ落ち着けよ。俺は六等星冒険者カースってもんだ。村長に会いたいんだけど、いるかい?」
「はあぁ!? 六等星ぇ!? その若さでかよ! マジで!?」
お前だって私と同年代ぐらいだろ。こういう村に若い者は少ないだろうに。でも六等星の価値をちゃんと知ってるのは偉いね。冒険者ってだけで見下す奴は少なくないからさ。
「ギルドカード見るか? まあそんなことより村長んちを教えてくれよ。」
「……お前村長に何の用だよ? 妙な面子でよーー」
「んー、別に村長じゃなくてもいいんだけどさ。スサイエって職人を探してんだよ。ここの出身って聞いたもんでさ。何か手がかりないかと思ってな。」
「スサイエ? 悪ぃな、知らねーや。仕方ねーから村長んとこ連れてってやるよ」
さすがに若すぎたか。似顔絵的にはあいつって三十代後半ぐらいだもんな。
「悪いな。これ、取っといてくれ。」
銀貨を一枚。こんな時はケチらないのがコツさ。
「ん? おっ、うおおっ!? おまっ、マジか……も、もしかして冒険者って儲かるのか!?」
「まあな。五等星ともなると白金貨がホイホイ動くぜ。」
嘘じゃないよ。フェルナンド先生だって普通に手持ちに白金貨があったんだし。先生は四等星だけど。
「は、白金貨!? なんだよそりゃあ……」
「銀貨は十枚で金貨一枚じゃん? 白金貨は金貨千枚だな。」
さらに上に大白金貨とか王貨とかあるって聞いたこともあるけど見たことないんだよね。流通するもんじゃないんだろうね。超プレミア記念硬貨みたいなもんだろ。
「ゴクリ……冒険者ってすげえんだな……」
十等星から九等星に上がれる者はそこそこ多い気がするけど、七等星まで上がれる者は三、四割ぐらいだろうか。六等星だと……一割? データなんかないけど。
「ここだ。おーい村長ぁー! いるかーい!?」
うーむ、村長宅とは思えない荒屋だな。それでも他の家々より二割は大きい、のか?
「んー? なんだー?」
おっと、玄関からではなく家の裏側からひょっこり出てきた。
「客だよ。六等星冒険者だってさ。なんか人を探してるんだと」
「んー。人ぉ?」
どうでもいいけど、この若い者は帰らないのか? 釣りの最中だったろうに。
「やあどうも初めまして。六等星カースってもんだ。スサイエって職人を探してるんだよね。だからって別に賞金首とか手配されてるってわけじゃないから心配はいらないよ。」
「スサイエ? スサイエ……」
この村長って小柄で細いし表情も柔らかいけど、なーんか笑顔がわざとらしいなぁ。村長なりの処世術だろうか。こんな時は……
「あ、これ取っておいて。」
金貨を一枚。大盤振る舞いだぜ。
「んー、これはこれは。スサイエね。もちろん知っておるとも」
「マジで? もしかして村にいる?」
「んー、居るのはいるけど。あいつに何を聞きたいんだい?」
「仕事についてだな。大都会でいい仕事したみたいでさ。ぜひ詳しく聞きたいってわけだよ。」
「んー、そうかね。まあいいや。あんな者でも村には貴重な職人だからねー。連れていかれると困るよ?」
ほー、大事にされてるんだね。人口少なそうだもんなぁ。本当にブータルグのライバルなの?
でも一発で見つかってよかったなぁ。
あれ? この村にいるんならなぜさっきの若い者は知らなかったんだ?




