312、海鮮干物ショッピング
相変わらずこの村長は上半身裸なんだね。ムキムキしちゃってまぁ。
「お待たせしましたぁああ! あれ? シンディは……い、いや、こちらぜひ食べてみてくださぁぁぁあい!」
大男がちょこんと持ってきたお盆には小皿が三つ。それぞれに薄切りにされた……ブータルグ? が乗っている。ほおー。味の想像がつかないが、気になるねぇ。
「ピュイピュイ」
コーちゃんが真っ先に食いついたのは、三つのうちで一番色がきれいなやつだ。黄金色って感じ? 私もそれからにしてみよう。爪楊枝なんかは刺さってないし、指で摘むのね。どれどれ……
美味い……これすごいな……どう表現していいのか分からないけど、なんかねっとりしてる。なのにベタベタしつこくないし。そこに程よい塩味。これ酒の摘みにも最高じゃない?
「これ、いいわね。ベゼル・ベイヤードと絶対合うわ。あとヒイズルのお酒、ツーホ村のアキツホニシキの特等純米生原酒なんか最高に合うと思うわ!」
「うむ、旨いのぉ。確かにこれは飲みたくなるではないか。のう村長よ。この近くでこれを肴に酒を飲める所はあるかの?」
「ピュイピュイ」
こっちの村長の言い分にコーちゃんも大賛成だ。村長が二人でちょっとややこしいな。片や超絶イケメン、片やムキムキの大男なんだけど。
とりあえず他の二つも食べてからね。ちなみにカムイは建物内に入ってすらいない。
「はっ、はいぃい! ご、ございますとも! 開店は昼前ですがそれはもうすぐにでも開けさせますのでぇええ!」
今が午前十時ぐらいか。いやぁ悪いねぇ。
さて、残り二つはどうかな……
うーん、悪くはないけど最初のが美味すぎたせいかインパクトに欠けるなぁ。
「村長、この黄金色のブータルグだけどどのぐらい売ってもらえる?」
「はっ、はいぃ! 先ほどの大金貨ですと一箱丸ごと提供させていただきますぅうう! 重さにしますとだいたい百キロムほどになるかとぉおおお!」
おっ? そんなにいいの? いやぁ嬉しいなぁ。
「ではそれで頼めるかい? 一応確認だけど、その黄金色のやつが王家献上品なの?」
「いっ、いえ……申し訳ないのですが献上品ともなりますと、お値段がもう一段階上がりまして……それに品薄なもので……」
あー、それもそうか。なら仕方ないな。献上品かそれに次ぐ物って頼んだわけだし。でも満足。百キロムもあれば大勢で食べてもしばらく無くならないだろうしね。
「分かった。それで構わないよ。ついでに他にも売ってもらえるものがあれば買いたいんだけど、お勧めは何かある? さっき女の子には昆布茶だったかな? あれを頼んだけど。」
「おおおぉおぉ! そうでしたか! ならばもう少々お待ちくださいぃいい! どっささりお持ちいたしますのでぇええぇ!」
張り切ってるなぁ。なんせ商売としては美味しい相手が来たんだからさ。言い値で買うぜ? どうやらぼったくりどころかサービスしてくれてるみたいだし。
「失礼します。あっ、お父さん」
「おおシンディ! ここは任せたからなぁ!」
またもや入れ違い。そして親子なのね。全然似てないけど。母親似かな?
「えっ? あ、はい。お待たせしました。こちら昆布茶の元です。粉末型と煮出し型がありまして、粉末型はそのまま溶かすだけです。煮出し型はこのようにお湯を注ぎます。飲み終わった後はこちらを食べられる方も多いです」
ほう。二種類あるのか。どちらも飲むのに手間がかからなくていいね。
「分かった。どちらも貰おうか。ところでそれの最高級品とかあるのかい?」
「はい、あります。そちらは私では触れませんので後ほど父から出させようと思います」
おお、やっぱあるのか。商魂逞しいね。もちろん喜んで買うとも。
「お待たせしまいたぁぁああ! お前らも入れぇえ!」
「失礼しゃーっす」
「しゃーっす」
「しゃす」
村長だけでなく色黒の男達までぞろぞろ入ってきた。みんなお盆を持ってるね。
「父さん、それから献上用の昆布茶も持ってきてもらえる? お客様がご所望なの」
なぬ? 献上用?
「お、おお、待ってろやぁ!」
「ではその間にこちらの説明をしますね」
男達はお盆を置いたら出ていったもんな。
へー、これはいいね。干物がメインなんだけど開いて干したやつから丸ごと干したやつまで盛りだくさんじゃん。小さい干物なんかまるで煮干しじゃん。絶対いい出汁が出るだろ。カムイだって喜んでそのままボリボリかじりそうだし。
なるほどね。この村は干したり乾燥させたりするのが上手いってことかな。ブータルグもそうだけど長期保存もできつつ味もいいと。それにしても、よくもまあこんなに多種多様の魚をゲットできるもんだよなぁ。釣りだけじゃ明らかに無理だろ。やっぱ網も使ってんだろうなぁ。漁獲量ではタティーシャ村にダブルスコア勝ちってとこか。その代わり潜ったりはしてなさそうだな。海は危ないもんね。
何にしてもいい買い物ができそうだね。おっと、スサイエのことも忘れちゃいけないな。そっちが本題だからね、一応。
村長が戻ってきたら聞いてみよう。




