307、マルテアの仕事
「…………というわけでマルテアを追いかけたんだよね。スサイエでもよかったけど手がかりがなくてさ。その辺りも含めてマルテアから話を聞かないことには話が進まないじゃん? で、なんで逃げた?」
「ふむ、そうだったのか。フランティアのマイコレイジ商会ね。それが本当なら一大事だけど……どうなんだマルテア? お前は偽印なんて作ってないよな?」
「も、もちろん作ってない! 考えたこともねーよ!」
『カース殿、こやつ嘘をついておるの』
おっと伝言が届いた。村長センサーは頼りになるねぇ。
「分かった。マルテア、お前を信じるぞ。だから約束してもらおうか。ボワート親方の名にかけて正直に話すってさ。」
先に親方の話を聞いて、食い違いをほじくり出しつつ追い詰めようかと思ってたけど……村長センサーが優秀なこともあるし、もういきなりマルテアに喋らせた方が早そうだね。
「あっ、ああ、っがががががばだっごぉ……い、今の魔力は……」
「ん? ただの契約魔法だぞ。別に問題だいだろ? ただ正直に話してくれるだけの効果しかないんだからさ。いいよね親方?」
「致し方ないね。マルテア、信じているぞ。」
「あっ、えっ、そ、その……」
「さてマルテア。お前はマイコレイジ商会の偽印を作ったか?」
「ぐっ、うぐっ、おお、つ、作った……」
おおー。いきなり大正解かよ。私のこれまでの経験からするとこの手の奴って関係ありそうと見せかけて実はただの小悪党で、しかも関係ないって場合が多かったのに。いきなり当たりを引くとかマジ珍しいんだけど。
「お前だけか? スサイエはこの件に無関係か?」
逃げた渡りの職人は二人。そのもう片割れは関係してるのか?
「あいつもだ……後で知ったけど俺ら二人に話ぃ持ちかけてきてやがった。おおかた出来のいい方を使ったんじゃねーのか……」
「なるほどな。お前らに依頼してきたのはどんな奴か覚えてるか?」
「何となくなら……二回しか会ってないから」
ふーむ、しかも半年ぐらい前だろ? あんまり期待できないなぁ。
「フェリクス、頼める?」
「うむ。」
「そいつの顔をしっかり思い浮かべてみな。上手くいったらご褒美出すからさ。」
大金貨をチラ見せ。渡りの職人は金に汚いって誰かが言ってたもんな。
『思描念写』
「ふぅむ、ちと記憶が甘いようだの。」
あぁ……若そうな男だ。イケメンと言ってよさそうじゃない? 残念なことにはっきりとは写ってないんだよなぁ。ピンボケって感じでさぁ。半年も前なら仕方ないか……
「あら? ねえカース、これもしかしたらデルヌモン様じゃない?」
「え、デルヌモン……って辺境伯家の、えーっと、五男だっけ?」
言われてみればそんな気もするが……マジで?
「なあマルテア、こいつは名乗ったか?」
「い、いや……」
そらそうだろうなぁ。でも変だなぁ。あいつ程の貴族がわざわざ自分で動くか? 渡りの職人に顔を晒すリスクを冒してまでさぁ。
あっ、いや待てよ? デルヌモンって最近動きが分からないってリゼットが言ってなかったっけ? もしかして長男のために地下にでも潜ってこんなことばかりやってるとか?
そういやデルヌモンって意外と自分で動くタイプでもあったよな? いつだったか領都でもいいタイミングで現れて私達と揉めた王都の偽職人を連行していったもんなぁ。これ意外とデルヌモン本人ってこともあるかも……
あとはそうだな……ヤバい仕事だから誰にも任せられなかったって事もありそうだな。確かに辺境伯家ほどの大貴族の跡目を狙おうかって者があんなセコい偽造やらかしてるなんて配下が忠臣であればあるほど知られるわけにはいかないかもね。
でも分からんなぁ……五男デルヌモンはもう完全に跡目は狙ってないんだろうか? ただの長男派の一人として生きていくつもりか? それって用済みになると消されるだろ。それぐらいあいつも自覚してそうなもんだが……うーん分からんなぁ。
それはそうと、ここからどうしよう。
マルテアかスサイエが偽印を作ったのは確定として、リゼットの兄がその偽印を使ったって証拠はないんだよなぁ。
まっ、でも大丈夫だろ。適当に拐って契約魔法かけてもいいし村長センサーに頼ってもいいし。何とかなる気がしてきたぞ。
「な、なぁ、喋ったしちゃんと思い出したんだから、さっきの金貨、くれるんだろう?」
『ちゃんと』じゃねーだろ……ピンボケじゃねーか。まったく、こんな時でも渡りの職人ってやつは……
ん? 金に汚い……そんな奴がヤバい仕事をして、端金貰ってはい終わり、ってなるか?
もしかしてこいつ、いやこいつら大当たりの大ホームランかましてくれてんじゃない? もしそうだったら大金貨だってあげちゃうぜ!




