305、刺棘鵙
叔父さんを送った後。私とアレク、コーちゃんとカムイの四人で山頂へ。村長はふらりと消えちゃった。散歩かな?
まだ昼前の柔らかな陽気。吹き抜ける風。アレクが淹れてくれたお茶の香ばしいこと。魔力があんまりないせいか眠くなっちゃうよ……うとうと……
……あ、寝てた?
「ごめんアレク、寝てたみたいだね。膝枕ありがとね。」
座っていたはずが、いつの間にか膝枕されていた。ありがたいねえ。この世の何よりも弾力に富みつつも柔らかな極上の枕だよ。
「ううん。カースの重みが心地よかったの。寝顔もじっくり見せてもらったわ。私だけの特権ね。」
「あはは、それはそうかも。そろそろお昼かな?」
太陽の位置的にね。
「そうね。歩いて帰る?」
「いや、飛んで帰ろうよ。今日はもう疲れたからね。だからアレク、これお願い。」
「まあっ! 責任重大ね! 分かったわ。任せて!」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
あー、コーちゃんとカムイは散歩してから帰るのね。じゃあ後でね。
実は気を利かせてくれたのか?
「じゃあアレク、お願いね。」
「ええ。じゃあカース、いらっしゃい。」
ぬふふ。悪いねぇ。ミスリルボードに座るアレク。そこに膝枕をしてもらう私。そんな状態で遊覧飛行とは素晴らしき贅沢だね。
『浮身』
ミスリルボードがゆっくりと浮かんでいく。今のところ水平はとれている。
『風操』
ゆっくり前へと進む。いいね。丁寧に制御してるね。
ボードの周囲に風壁は張ってないね。まあ三つ当時はさすがに難しいもんね。二つ同時に使うのだって結構難しいんだし。
基本的に空を飛ぶのって『浮身』でボードや自身を浮かせつつ『風操』で空気の流れを作って前進するって感じなんだよね。風壁を張ってたら空気の流れにプラスして全体を押しまくるって手もあるし」。
もちろん『風操』だけでも飛べなくはないけど、それをやると魔力の消費が激しくなっちゃうんだよね。
あと出だしの勢いをつけるために『金操』を使うのも有効ではあるけど、それだと魔力の消費が千から万倍違うからなぁ。緊急以外ではそうそう使わないかな。
あー、さっきの山頂もいい風が吹いてたけど上空もいいなぁ。天気がいいせいか本当にそよ風って感じでさ。揺れも少ないし快適だねぇ。アレクいい感じ。
無事ベゼル男爵邸へ到着。
途中で小鳥がアレクの肩に止まって可愛い組み合わせだね、なんて話してたらそいつを狙う猛禽系の魔物まで来ちゃって少し危なかったね。フクロウ系かな?
危うくアレクの柔肌に傷がつくとこだったじゃないか。
私を膝枕してるから身動きがとりにくい。おまけに魔法を二つ使ってるから迎撃もしにくい。助け船を出そうかなーとも思ったけど、アレクに限ってそんなの不要だろうと見守ってたわけだが……びっくり。
いきなり小鳥から魔力を感じたかと思えばズバッと飛び出しやがった。そのままフクロウの腹を貫いて逃げてったんだよね。びっくりだね。ただの小鳥かと思えば魔物だったんだね。見かけによらないねぇ。
アレクによると刺棘鵙の一種かもって話だった。モズの魔物か……
さて、男爵邸での昼食も済んだことだし、王都に行くとしようか。渡りの職人マルテアを探さないとな。
「魔王さん。この度は、いえ、いつもベゼル家を助けてくださりありがとう。またいつでも来てくださいね」
お見送りは叔母さん。お土産はワインを一樽。私にも、村長にも一樽ずつだ。豪快だねぇ。
「こちらこそ。いつもいいお酒をありがとうございます。大事に飲みたいと思います。」
去年は四樽もらったのに、それでもなくなるもんなぁ。大事に飲もっと。
「お邪魔いたしました。叔父様にもよろしくお伝えくださいませ。」
「アレックスさんもありがとう。秋ごろまた葡萄踏みに来てちょうだいね?」
それは最高だ。一見肉体労働を頼んでいるようだがアレクが踏んだ葡萄だぜ? 超プレミアもんだからな。去年踏んだやつも楽しみなんだよなぁ。早く飲みたいなぁ。
私が名付けたワイン、ベゼル・アレクサンドライトをさ。
さて、それでは王都に向けて出発だ。前回はゆっくり歩いたけど、今回は飛んでいこう。またまたアレクの操作でね。魔力制御のいい修行になるんだよね。がーんば。




