304、聖木アルベルティーヌの望み
到着。みんなでミスリルボードに乗ってやって来た。
さて、聖木の様子は……マジかよ!?
「お、おおお、こ、これは!」
叔父さんも驚いている。私もだよ。だって去年見た時は枝がことごとく切り払われてさ、デコボコのめちゃくちゃ太っとい丸太って感じだったのに。それがどうよ。
枝が全方位にめっちゃ広がってる。前後左右だけじゃなく上にも。枝だけが。
「幸いなことに春は目の前であろう? ならばここから葉が生まれ花が咲くのはそう遠くない。特に、今日はカース殿がおるからの。容易いことだと思うぞえ?」
ん? 私?
「ピュイピュイ」
えー? コーちゃんまで? マジか。そんなことしていいの?
「ねぇフェリクスさぁ。今コーちゃんから魔力をめちゃくちゃ込めてあげてって言われたんだけど、大丈夫なの?」
「くくく、さすが精霊様よの。よく分かっておいでではないか。見ての通りこの木はもう老い先短い。ゆえに後先など考えずにその命を心置きなく燃やせるよう……我らが力を尽くそうではないか。」
そうなのか。前回は少しずつ魔力を注いだものだが。
「どうしましょうか? やってみますか?」
叔父さんにお伺いを立てる。なんせ当主だしね。
「ぜひぜひ。願ってもないことだよ。お願いできるかい?」
「分かりました。それでは……」
「ピュイピュイ」
あっ、そうなんだね。前回みたいに根っこに染み込ませる感じじゃなくて、もう幹に直接ぶち込むのがいいんだね。
ならば本気でやってやろう。
我が心すでに空なり……空なるが故に……無!
「きゃっ!」
「ほぅ……」
「なっ……!」
ふふふ。なんせさっきまで私の魔力は満タンだったからな。あ、ちょっと頭痛い……思いっきり空っぽになっちゃったからな。
でも三人の驚いた顔は気持ちいいね。
アレクは吃驚。村長は感嘆。叔父さんは驚愕って感じだね。
「フェリクス、ちょっと魔力ちょうだい。」
「おお、ほれ。」
おっ、意外とたくさんくれるじゃん。五分ほど回復したぞ。
「ありがとね。後はもう待つだけかな?」
「うむ。最早できることは何もあるまい。むしろ何もせぬ方がよかろう。当主殿よ、この木は普段いつ頃身を結ぶのかの?」
「だいたい八月頃です、が……何もしなくとも良いのですか?」
「フェリクス様、叔父様は葉とりや芽かき、それから摘房などを心配しておられますわ。しない方が良いのですか?」
「うむ。普段ならするべきなのだろうがの。聖木が言うには咲き乱れて舞い上がりたいとのことだ。好きにさせてやろうではないか。」
何だそれ? 木がそんなこと思ってんの? えらく詩的だねぇ。面白い木だわー。
「ピュイピュイ」
あ、そうなんだね。
「それから、実を収穫した後はちゃんと切り倒して樽を作るといいそうです。で、切り株はそのまま置いておいて時々魔力を流してやるといいみたいです。運が良ければまた生えてくるかも知れないと、コーちゃんが言ってます。」
「そ、そうか……切り倒すのか……だが、それが姉上の、いや聖木の望みなら……」
あー、叔父さんから見ればこの木は姉、つまりアレクママも同然だったりするのかな? さすがにそこまでじゃないだろうけど。
「それから本当に何もしない方が良いのでしょうか? その、鳥とか虫とかおりますので……」
「ピュイピュイ」
叔父さんは村長に質問したのだが、コーちゃんが返事をした。
「精霊様は何と?」
「やはりそのままで良いって。この木は鳥にも虫にも実を食わせてやりたいんだってさ。というわけでジャンポールさん、後は本当に見守るだけにした方がいいようです。」
「そ、そうだね。確かに我ら人間だけが独占するわけにもいかないよね。分かったよ。フェリクスさん、魔王さん。コーちゃんにアレックスちゃんも、ありがとう。木の望みなんて僕らだけじゃ絶対分からなかったと思う。本当にありがとう。」
「なに、構わぬて。」
「どういたしまして。」
「ピュイピュイ」
「私は特に何もしてないですし……」
あはは。アレクだって助け船出したじゃない?
まっ、何にしてもこれにて一件落着かな。いいことをした後は気持ちがいいねぇ。
さて、まだ昼飯には早いから山頂でのんびりするのもいいなぁ。いや、先に叔父さんを送ってからかな?




