159、ダークエルフの村長ギーゼルベルトヒルデブラント
自称私の舎弟三人組が集まるまでの間にカムイを手洗いし、指先からのドライヤー魔法で乾かしてからオイルマッサージして最後にブラッシングしてやった。カムイったらさぁ、うとうとと気持ち良さそうな顔しちゃって。野生のかけらもないじゃないか。エンコウ猿のボス、カカザンに負けても知らないぞ? 近いうちに蟠桃をゲットしに行くんだからな? お前にかかってるってのに。
「兄貴! おはよーっす! 昨日の今日でもうダークエルフの村っすか!」
「動き早ぇーっすよ!」
「帰りに幻惑草原寄りますぅ!?」
「おはよ。帰りのことはまた後で考えるわ。じゃ、行くぞ。」
『浮身』
『風操』
今日の風壁はサンドラちゃん。隠形はアレクが担当している。むしろエルフ三人組に丸投げでもよかったような。
ここフェアウェル村からダークエルフのソンブレア村まではひたすら真北に進めばいいだけだからな。気楽でいいや。今のところ危険な魔物に遭遇したこともないし。
着いた。体感で一時間ってとこか。目印がないからエルフ三人組に魔力探査してもらったんだよね。
すごいな。前回から一年も経ってないのにめちゃくちゃ発展してない? イグドラシルの苗木を中心にして半径五百メイルぐらいが切り拓かれてる。その中に丈夫そうな建物がざっと三十。
降りてみよう。おっ、ちょうど誰か上がってきた。
「おおっ! 何事かと思えば魔王さんじゃないですか! ようこそソンブレア村へ! それにフェアウェル村のお三方まで! よく来てくれたね!」
あれ? ダークエルフって私のことをニンちゃんって呼んでなかった? いつから魔王だなんて人間っぽい呼び方をするようになったんだ? 別にどうでもいいけど。
「やあ久しぶりぃ! オスバルトラニサップジャコモルトさん元気そうじゃん!」
「ビョエルンエドゥアルトゼルヘル君も元気そうで。今日は魔王さんのお付きかい?」
すげえな……ちゃんとお互いのフルネーム覚えてるのか。しかも顔もちゃんと識別できてるし。うーん無理だ……
「そんなところ。うちの村長からはソンブレア村の役に立ってこいって言われてさぁ。とりあえず何しようかぁ?」
「おお、それはありがたい。しかしながらそれは後回しにしよう。まずは皆を歓迎させてくれよ。村長もきっと喜ぶに違いないさ」
「そうだよなぁ。さっ兄貴! 行こうぜ行こう」
「よし。じゃあお邪魔するよ。」
とりあえずイグドラシルの近くに降りるとしよう。
ほぉーお。ちょっと見ない間にめっちゃ大きくなってる。高さは十メイルちょい、幹の太さは直径一メイルぐらいか? これもう苗木とは言えないなぁ。
「順調に育ってるみたいじゃん。よかったね。」
「ありがたいことです。それもこれも魔王さんのおかげですぞ」
イグドラシルに関しては私はノータッチだが……
「おお! カース殿! よく来てくれた! これはもう宴を開くしかないな! よし全員を集めようとも!」
村長だ。こんなにテンション高いタイプだったっけ?
「やあ村長。元気そうだね。特に用があるってわけじゃないけど来ちゃった。僕の友達が色々と話を聞きたいみたいでさ。あと宴会は夜にしようよ。」
昼から酒も悪くないんだけどね。さすがにまだ昼にもなってないし連日飲んでるし。せめて夕方になってからにしようじゃないか。
「うむうむ、さすがカース殿、それもそうだな。ならば昼に軽く歓迎の食事をしようではないか。本格的な宴は夜ということで!」
「それがいいね。じゃあそれまでお喋りしようよ。村長の手が空いてるなら。友達を紹介するよ。」
「おお! 私などで良いのならばいくらでも。カース殿のご友人か! ならば賓客だな。私はここソンブレア村の村長をやっておるギーゼルベルトヒルデブラントと申す。未だ至らぬ身だがよしなに頼む。」
やけに丁寧だなぁ。いつもの歓迎の儀式はやらないのか? 元々はダークエルフの儀式だったろうに。
さて、サンドラちゃん達の紹介も済んだしここからはお喋りタイムだな。サンドラちゃんが話したくて仕方ないって顔してるし。
「そういえばそちらの三人は助けに来てくれたのだったな。エーデルトラウトヤンフェリックス様のお心遣い、ありがたく受け取らせていただく。」
「何でも言ってください。村長からは同胞の力になるよう言われてますんで」
エーデル何とかって化け物ハイエルフ村長のことだよな?
「うむ。かたじけない。ではオルトヴィーンジャコモルトに付いてもらえるか? あちらの大木の近くにいるからな。」
「分かりました。お任せください。じゃあ兄貴、また後でな!」
「おう。がんばってこい。」
私だってお喋りの後は何か手伝いぐらいするつもりだからね。
さあサンドラちゃん、何から聞くんだい?




