155、村長の依頼
スティード君とセルジュ君、そしてサンドラちゃんを村長宅の客室へと運んできた。明日には超元気になって起きてくることだろう。
さて、大事な確認をしておこう。出来たばかりのこのネクタール。果たして私の魔力庫に収納できるのだろうか?
くっ……やはりだめか。
魔力特盛でごり押しすればムラサキメタリックでも収納できるのに。ネクタールに対してそれをすると後で絶対祟りそうだしなぁ。どうやら予定通り楽園の魔蔵庫行きだな。私の魔力庫ほど性能が良くないから劣化が心配ではあるが。
「ふむ、やはり無理か。これほど濃密な魔力の塊を魔力庫に入れようなど、考えるだけでも恐ろしいからの。まったく、カース殿はいつも楽しませてくれるではないか。」
「村長はどう? 入る?」
「無理に決まっておろう。寿命が縮むわい。では、こちらは貰っておくぞ?」
魔王ポーションの方だね。死ぬほど臭いけど魔力ポーションとしての性能は凄いことだし、邪魔にはならないよね。
「もともと村長の酒なんだしね。こっちこそありがたく貰っておくよ。さっ、もっと飲もうよ。続きといこう。」
「そうだの。まだ夜は始まったばかりだて。ん? やれやれ、邪魔が入ったようだの。せっかくだ、カース殿、行ってみるか?」
「ん? 邪魔ってもしかして大型の魔物?」
時々来るらしいじゃん。歴戦のエルフの村を襲うなんて無謀なことするよなぁ。
「うむ。今夜の肴にちょうどよかろう?」
「んー、まあいいけど……どっちから来てる?」
「北だの。そこそこ厄介かも知れぬが、カース殿なれば関係あるまい?」
厄介な魔物なんて嫌だぞ……
「距離と大きさ、数と名前は分かる?」
「距離はざっと五キロル、体長十五メイル。一匹だの。あれは……ワーム系だのう。」
遠すぎんだろ……
「普段から五キロルでも迎撃してんの?」
しかもワーム系なら村までたどり着くのに何時間かかんだよ。むしろ朝になっても来ないんじゃない?
「いや、もちろんせぬ。だが今回はちと気になるのよ。道中で蛹にでもなられたら堪らぬしの。きっちりと仕留めておいておくれでの?」
あぁ、ワーム系って砂漠によくいるタイプじゃなくて芋虫系の方か。シルキーブラックモスの幼虫とかもそうだよな。
蛹になったら何がまずいんだろうね? まあ可哀想だが後数分の命なんだけどさ。
「分かったよ。じゃあ行ってくる。アレク、行こう。」
「ええ、面白そうね。」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
コーちゃんは来ないけどカムイは来るのね。コーちゃんたら村長のクセ強酒が気に入ったみたいね。
『浮身』
『風操』
『暗視』
ミスリルボードに乗ってゴーゴー。いやー、我ながらこんな夜に山岳地帯を動くなんて正気とは思えないね。
『魔力探査』
五キロルなんて飛んだらあっという間だからな。こまめに魔力探査をしないとね。体長十五メイルの芋虫かぁ……
芋虫の速度で五キロルって一体何時間かかることやら。そもそも途中に山も谷もあるってのに。村長的には村が危険ってよりは近くの山林資源を荒らされたくないって感じなんだろうなぁ。
『魔力探査』
おっ、いたいた。
カムイやるか?
「ガウガウ」
芋虫はあんまり好きじゃないって? 私もだよ……あれはあれで美味いとは聞くけどさぁ。
さて、ここら辺だな。降りよう。
ここらはノワールフォレストの森ほど木々が密集してないからね。まあまあ降りやすいんだよな。
おっ、いたいた……げっ、芋虫っつーか毛虫じゃん……
カムイお前分かってたんだろ……だから嫌がったんじゃねーの?
「ガウガウ」
そんなことないって? 本当かぁー? まあ信じてやるけどさぁ。
それにしてもでかいな……確かに全長は十五メイルぐらいだけど縦も横も三メイルぐらいないか? 太すぎだろ……
しかも毛虫のくせに葉っぱじゃなくて木の幹を囓るのかよ。こいつが通り過ぎた後ってめっちゃ木が倒れてるし。もしかして、幹の美味しいとこだけ囓ってそこ以外は無視ってこと? こりゃあだめだろ。村長でなくとも駆除したくなるわな。
さて、どうしよう?
丸焼きにするか、頭を切断するか……
うおっと、生意気に遠隔攻撃もできるのか。毛虫らしく毛針を伸ばしてきやがった。二十メイルは離れてるのに一瞬かよ。タチ悪いわぁ。
『火球』
丸焼きにしよう。ほどよく焼けてたら村のみんなが食べるかも知れないし。
『浮身』
ほー。しぶといね。今度は突進してきやがった。頭が半分失くなりかけてるのに、やるねぇ。
『火球』
終わりだ。残る半分も燃え尽きた。
魔石については帰ってからでいいだろ。先に収納しようかな。
よしオッケー。
「うふ、やっぱりカースね。こんな見たこともない魔物でも一瞬で仕留めるなんて。」
「大きくても所詮は毛虫だからね。防御力なんてほぼゼロみたいだし。」
剣や棍で戦うなら苦戦しそうだけど。
「そんなことよりぃ? ここなら誰もいないわよ? 私もう我慢できないんだけど?」
ふふ、アレクもちゃんと酔ってたのね。昼からずっと飲んでるだから当然だよね。こんな危険な山の中で、何と悪い子だ。
カムイ、待っとくか? それとも先に帰っててもいいぞ。
「ガウガウ」
適当に散歩ね。それもいいだろう。
アレクがシャツのボタンを一つずつ外している。本当に悪い子だ……
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