156、アーダルプレヒトシリルールの決意
ふぅ。
夜の山岳地帯で二人で痴態。悪くないね。水のベッドで夜の波乗りってか。
アレクったら寝ちゃってるよ。やっぱ飲み過ぎだったんだろうね。私はまだ飲めるぜ?
では帰ろう。
『氷壁解除』
『浮身』
『風操』
見たところ魔物は来てないようだ。それでも虫やダニが来そうだったからしっかり囲っておいたんだよね。おかげで快適だった。
到着。カムイは帰ってるかな?
「ガウガウ」
おっ、いたいた。遅いって? お前が早いんだろ。
「戻ってきたか。えらく遅かったではないか。待ちかねたぞ?」
村長までそんなこと言うの?
「そう? ところであの毛虫なんだけど一応持って帰ってはきたけど食べられる?」
「おお、ご苦労だったの。食えぬことはないか好んで食いたくはないのぉ。わざわざ持ち帰ってくれるとは、すまなんだの。あちらに出してくれるか?」
「いいよ。」
珍味扱いなのかな? 確かに私もわざわざ食いたくはないなぁ。
村の中央広場、その隅っこに大毛虫を出す。
「うむ。やはりこやつか。早めに対処して正解だったの。」
「木の幹をめちゃくちゃ食ってたよ。こいつが蛹になるとどうまずいの?」
「こやつはの、蛹になると周囲の養分や魔力を吸い尽くしおるのよ。しかもそこからわずか一日で成虫になってしまうしの。」
うわぁ……そんなのイグドラシルの近くに来たら最悪じゃん。もっとも、一日あれば余裕で対処できるだろうに。
「それで、こいつの素材って何か使えるの? 魔石は貰うけどね。」
「うむ。まずは毛針だの。これは我らの服を縫う糸の原料となる。肉や内臓は良き肥料になるしの。歯などは刃物に加工するとよいのだが残っておらぬか。」
ほー、色々と使い道があるのね。確かに木の幹をさくさく嚙ってるわけだし、さぞかし硬い歯なんだろうねぇ。
「へー、意外と役に立ちそうなんだね。じゃあ魔石が出たらちょうだいね。」
自分で解体する気はないからね。だって毛虫だもん……
「ほほ、よかろうとも。よっ、ほれ。」
「おっ、ありがとね。」
やるねぇ。さすが村長。私がよくやる魔石のぶっこ抜きか。私のは魔石が見えないとできないが、村長ったら見えてないのにさらりとやってくれるじゃないの。
それにしてもでかいね。直径五十センチってとこか。誰かが魔石の標準的なサイズは体長の1%とかって言ってたよなぁ。それを考えるとやっぱでかいわ。
「さて、カース殿を待ちかねたと言ったのはの、あれが聞きたいからよ。」
「あれ?」
「ほれ、この間やってくれたであろう? 空に魔法を打ち上げながら音を出しつつ演奏し、なおかつ歌ってくれたではないか。急に聞きたくなってのぉ。」
「あー、あれね。喜んでやるとも。でも魔物が来たらお願いね?」
この前ってどうだったっけ? みんなラリラリしてなかったっけ? アーさんだけ元気だったか。三日目とか村長が一人で見張りしてたような気がする。
あれ? そういえば今日まだ……
「うむ。任せておくがよい。」
「ところで今日アーさんは? 姿を見てない気がするけど。」
「あーさん? おお、アーダルプレヒトか。あやつならおらんぞ。先日イグドラシルに登りおったからの。」
「ええ!? マジで!? そりゃまたいきなりどうしたこと?」
イグドラシル登頂がブームになってたり? 村長ですら二十年かかったって話だしアーさんもそれぐらいかかるんじゃない? 当分会えないじゃん……
「なに、大したことではない。あやつに次期村長はお前だと伝えただけよ。それでどうも奮起しおったようでな。」
「へ、へー……すごいね。次期村長なんだ。ちなみにアーさんに決めた理由とかってあるの?」
「若さと魔力かの。別にハイエルフになど成らずともよかろうに。変わり者よのぉ。」
ふーん……
言われてみればアーさんは長老衆の中で一番若いんだったか。しかも魔力でも一番だったりするんだろうか?
まあいいや。再会を楽しみにしておくとしよう。うちの両親も早く降りてこいよな……
さて、それではリクエストにお応えして一曲派手にいきましょうかね。




