153、魔王ポーション再び
村長が戻ってきた。しかも樽が二つ……
「まずはこれから入れてもらおうかの。」
「分かった。じゃあいくよ。」
ゆっくりと錬魔循環して……
我が心すでに空なり……空なるがゆえに……無!
ふぅ。全魔力の四割もぶち込んでやったぜ。さあ、どうかな?
村長が樽の蓋を開け、うげぇ……おえっ……ぐおっ……マジかこれ……
「ぐぐぅ……これは予想以上、いや予想外に強烈な匂いだのぉ……うぷっ……」
さすがの村長も鼻をつまんでる……
アレクとサンドラちゃんはいち早く避難してるし。逃げ遅れたセルジュ君とスティード君は吐いてるし……
フレッグは動きなしか。やるねぇ。
飲んでみないと効果が分からないが……飲みたくねぇ……
これもう下水を煮込んだどころじゃないだろ……世界一臭い缶詰とかあったけど、あれ並みなんじゃないの!? あれをミキサーにかけて布で濾したらこうなるのかも。
もしかしてテロに使えるレベルなのでは……
「村長、先手は譲るよ。飲んでみてよ。」
「はっはっは。無茶を言うでない。ここはカース殿の出番であろう?」
「いやぁ、やっぱり村長ほどの方より前には出れませんわ。ささ、飲んで飲んで。」
「はっはっは。儂などただの年寄りだて。老いては子に譲れと言うではないか。ささ、カース殿の、ちょっといいとこ見てみたいぞ?」
老いては子に従え、だと飲まされるもんだから改変しやがったな?
仕方ないなぁ。どうせ貰って帰るつもりだし飲むしかないか……
『水操』
一口どころかビー玉サイズだ。効果よりまずは味見を……ぐええ臭いよぉぉ……
鼻摘もう……
見た目は半透明の、エメラルドグリーンか? きれいな色しやがって……
では、覚悟を決めて……
おっ? 意外と不味くな……ぐええええええええ…………
確かに味はほぼ無い。だから飲み込むのに抵抗はなかったが……問題はその後だ。喉の奥、胃の中から下水の腐臭が上がってくるかのようじゃん……気持ち悪すぎる。ゲップでもしようもんなら自分の臭いで気を失うレベルじゃない? 超最低だよ……
『浄化』
口の中にかけ続けてやる。臭いがしなくなるまで……はぁ、我ながら酷い魔力ポーションを作ってしまったもんだ。
でも、あんなわずかで私の魔力が二割も回復したんだから超高性能なのは間違いないな。一口飲めば全回復する計算だしね。
市販されてない最高級魔力ポーションよりも上だ。不味さもぶっちぎりだけど……
「……ふぅ。魔力ポーションとしての効果はすごいよ。不味さもすごいけど……」
「ほほぅ、やはりそれほどの逸品か。ならば儂が飲むまでもなかろう。では次だ。こちらにも魔力を込めてもらおうか。そうすればどちらか一樽進呈するでの。」
もちろん分かってるとも。だから一つ目は四割に抑えたのさ。
「いいよ。じゃあやるね。」
じっくり錬魔循環して……
我が心すでに空なり……空なるがゆえに……無!
七割ちょいぶち込んでやったぜ。残り全部でもよかったけど少しは残しておかないとね。
ふぅー、それにしても短時間で盛大に魔力放出したもんだな。これ意外と難しいんだからな? もちろん魔力量に比例してね。
「ほほう。さすがカース殿だわい。一瞬でそこまでの魔力を込めるとは。変質の秘密は量だけではなく案外そこら辺にあるのかものぉ。」
「あー、言われてみれば。あり得るよね。じゃ、今度こそ村長お先にどうぞ。」
村長の酒造りって毎日魔力を少しずつ込めてるんだったよな。かなり繊細にさ。たぶんスペチアーレ男爵も同じようにやってるんだろう。
それを一気に大量の魔力を込めるもんだから臭いポーションになってしまうとか?
「くっ、仕方あるまい……」
すっごく嫌そうな顔してる……
そして嫌そうに蓋を開けて……




