152、カースの思いつき
廃人を量産しそうな酒を作っておきながら村長ったらどこ吹く風って顔してやがる。そりゃあこれで廃人になるエルフなんていないだろうからね!
うーん、率直に言ってまずいな。まずいけどせっかく注いでもらったんだし、この一杯ぐらいは飲み干すとしようじゃないか。
「どうなのカース君? それ美味しい?」
サンドラちゃんたら村長の目の前で言いにくいことを聞いてくれるじゃないか。私の顔を見れば分かるだろ……強烈だって言ったんだしさぁ。
「んー、まあ不味くはないかな。ちょっとクセが強くて飲みにくいぐらいでさ。」
「はい嘘ーー。カース君はだめねぇ。嘘が下手なんだから。」
いやいやそれ違うだろ。単にサンドラちゃんが個人魔法を持ってるだけじゃん。悪意のない嘘を見抜けるんだったかな。
「そう? まるっきり嘘ってわけでもないよ? 確かにまずいけど、光るものがないわけじゃないしね。」
「あら、それは本音みたいね? さすが村長様のお酒ってところかしら。」
サンドラちゃんたらどんだけ私の心を読んでんだよ。まったくもう。
でも個人魔法のことには触れない私って優しいだろう? 他人に報酬について聞かないのと同様に、個人魔法に触れないのはマナーだからね。ふふ。
「くくくっ、やはりまずいか。儂もそう思うぞ。だが気分はどうかの?」
当然ながら村長にも聞かれてるわな。気分? いいに決まってんだろ。アルコール度数の高い酒に悪ぅーい草の成分が入りまくってんだからさ。もう半分ちょい飲んでしまったぞ。
「いい気分だよ。今なら空も飛べそうかな。村長はどう?」
「くははは! 嬉しいことを言うてくれるではないか。儂はもちろんいい気分だとも。ほれ、嬢ちゃんも飲んでみるかの?」
「ありがたくいただきますわ。」
「じゃあ私も!」
二人とも好奇心旺盛だなぁ。私はまずいって言ってんのに。
「よし。ならば少しだけだの。普通の人間にはきついかも知れぬからの。」
村長から見ればアレクもサンドラちゃんも平民扱いかよ。虫扱いじゃないだけましなんだろうなぁ。賓客扱いなのは間違いないんだし。
「うぐっ……カース、これよく飲めたわね……」
「ねっ、まずいでしょ?」
だから言ったじゃないか。でもまずい酒を我慢して飲んでるアレクの顔ときたら。やはりかわいいなぁ。
「うふふぅカース君の言う通りまずいのはまずいけど、なんだか楽しくなってきちゃうわぁ? 空も飛べそうって本当なのね!」
おやおやサンドラちゃんはもう効いてきたのか。楽しそうでよかったねぇ。お薬によってはバッド入ることもあるって聞くけどカンナビ草も芥子毒牙虫も、あと音速天国もか、悪い効果が出たことないんだよね。その後の常習性や依存性はともかくさ。
「そうね。私も楽しくなってきたわ。カース! スティード君とばかりいいことしてないで私ともするわよ!」
「もちろんだよ。じゃあ早速村長んちの客室に行こうか。」
夜はこれからだが、そんなのは知ったことではない。アレクが求めているのだから私はいつでも応えるのさ。
「あーカース君! もうお酒がないよー! おかわり注いでよぉー!」
いかんいかん。セルジュ君を放っておいてしまったか。ならば、これを注いであげようではないか。
「はいセルジュ君。これ珍しいお酒だよ。サンドラちゃんも気に入ったみたいだね。」
村長の酒だ。セルジュ君ならコップ一杯分でも大丈夫だろ。ついでにスティード君にも。
「うっ!? 何だかすごい匂いがするね!? 青草って感じ?」
「色も青いね。せっかくだから飲んでみようか。」
フレッグにも注いでやろうかと思ったらもう飲んでるのか。平然とした顔してんなぁ。
私も飲も。残り三割ってとこだし。まずいけどクセになりそうだなぁ。ほんと悪い酒だぜ……
あ! いいこと思いついた!
「ねえ村長ぁ。この酒ってもう一樽ぐらいあったりしない?」
「もちろんあるとも。欲しくなったかの?」
「それもあるんだけど、魔力をたっぷり込めたらどうなるか気になってさ。」
予想としてはゲロマズ魔王ポーションが出来そうなんだよね。願望としては無味無臭のネクタールが出来てくれるとすごく嬉しいんだけどなぁ。
「おお、それはよいの。面白そうだて。ぜひやってみるがよい。ちと待っておれ。」
地下の酒蔵へ取りに行ったのかな。ふふ、楽しみだな。魔王ポーションもネクタールも魔力庫へ収納できないのが弱点だけど、楽園の魔蔵庫なら入るだろうし。あそこに置いておけばかなり今後の治安維持や防衛体制がぐっと有利になるよな。わくわく。




