505、厳誡山
どうした長老……何をそんなに嘆いてるんだ……
「長老、どうしたの? 何でも言ってよ。今なら協力できるからさ。」
いくら私でも、ドワーフ達を届けて「はい、さよなら」なんて真似はしないぞ。ちゃんと暮らしの目処が立つことを確認してから帰るさ。
「ごほ、お、おお、カース殿……あれほど雄大だった我らの故郷が……これほどまでに砂に埋もれておるとは……これでは中に入ることすらできぬ……」
あらま。これが普段通りってわけじゃないのね。
ならばどうしよう……砂を掘ることは容易い。でも、ただ掘っただけじゃあまたすぐ埋まってしまう。だから、かなり広範囲にわたって掘る必要があるってことだよな。砂を大量にぶっ飛ばす勢いで。
うーん……よし、やるだけやってみよう。
「アレク、全員を連れてなるべく離れておいてくれる? 高くね。少し考えがあるからさ。」
「分かったわ。でも無茶しないでね?」
「うん。無理そうならやめるよ。」
『氷壁』
「全員集まって。上空に避難しててもらうからね。」
後はアレクに任せておけばいいだろう。では私は……魔力ポーションを飲んで……あぁくそまずい……
よし。アレク達はかなり遠くまで離れたな。ここ、岩山の頂上には私とコーちゃんとノミーデスしかいない。では、やってみるか……
『旋風』
岩山を中心に風を回す。ここに……
『高波』
大量の水を含ませる。すると……
よし。岩山の周囲がえぐれてきたな。これを……さらに拡大して……
『竜巻』
『高波』
全方位に水をぶちまける。さあ、砂を削れ。遠くまで運べ。
『竜巻』
範囲拡大。周囲の砂をことごとく吹っ飛ばしてやるよ。
では、仕上げといこうか。
『水槍』
水のレーザー。威力はドラゴンブレス並みじゃないだろうか。こうして一本でも太い水路を作って……
『水操』
擬似的に川を作り出す。さあ、流れろ。流れていけ。長年にわたって積もり積もった砂の城壁よ。
ふぅ……あー疲れた。砂漠みたいな場所で水の魔法を使うと魔力消費がすごいんだよなぁ……
でも、魔力ポーションを飲んでまでやった甲斐はあったようだな。
「カース! 大丈夫なの!? 魔力は、体調は!?」
「見ててくれた? 大丈夫だよ。これで中に入れるんじゃないかな。」
先ほどまで高さ十五メイルぐらいしかなかった岩山が、百メイルはあるだろ。どんだけ埋もれてたんだ……二百年以上経ってんだもんなぁ……そりゃ地形も変わるか。
「ごほ、おっ、おおぁ、おおおおぁぁ! か、カース殿! なんと、なんてことを! これだ! これこそが! 我らドワーフの故郷! 厳誡山だぁああ!」
ドゥナシーハ? 言いにくいなぁ。でも長老だけじゃなく、みんな感動してるみたいだし、やってよかったな。
長老がよたよたと走る。その先にあるのは……岩山の入り口か! しかし……
「ごほ、ふふ、長年放置した報いか……ここから先は我らドワーフ族の仕事だろうの。これ以上カース殿のお力を借りるわけにはいかぬて」
いや、余裕で手伝うよ? まだ夕方まで時間あるし。砂に埋もれた入り口をどうにかするんだろ? 私は土木作業も得意だからね。でも、とりあえず様子見。まだ帰らないし。ノミーデスも私から離れないし……
おっと、そうだ。ドワーフが商王から退職金として貰った物品は私の魔力庫に入ってるんだよな。まずは食糧以外を出そうか。でかい箱に色々と詰め込んでたよな。出しておこう。
「おっとそうだった。ありがとなあカースぅ!」
「これさえありゃあ! このぐれえの砂なんてよぉ!」
「どいてなぁ長老! 我らに任せときなあ!」
ドワーフの若者が張り切ってる。若者、だよな? 見た目ではとても若者には見えないけど……
先の尖ったスコップ、いわゆる剣スコってやつか? そいつを手に取って、砂を、激しく掻き出している。
とりあえず見物だな。ドワーフの宝玉ってのもここにあるんだろうしね。待つしかないよね。赤く輝く宝玉って言ってたし、アレクに似合うかも知れないじゃん? だとするなら絶対欲しいよね。
おおー、すごい勢いでスコップしてるね。彼らにスコッパーの称号をあげたくなるね。うーんグレートスコッパー。
「よぉし長老! 砂は奥まで入り込んでないぞぉ!」
「もう少しだ! 全員で帰ろうぜ!」
「ここが、ここが我らの本当の故郷……」
「ごほ、おお、ついに、ついに還る刻が来たか……ついに……」
よし。これで本当の意味で帰郷できたな。ここから少しずつ日常に戻れるといいね。がんばれドワーフ。




