504、故郷は何処
商都を飛び立ち、まっすぐ西へ。長老が言うには近くまで行けば分かるって話だが……
セティアン砂漠に突入した。周囲に見えるのは砂だけだ。まだまだ西へ。
「ごほ、か、カース殿、とんでもないな……」
飛んでいるのにとんでもない? ぷぷっ。
「あら、そう?」
「ごほ、まったく理解が追いつかぬぞ……これだけの人数を宙に浮かせたことも、これほどの速さで空を進むことも……空から大地はこのように見えるものなのだな……」
長老に限らずドワーフ達は全員が全員とも景色に釘付けになっている。
「気分いいよね。晴れててよかったよ。」
「ごほ、そうよな。あの太陽、この風、眩しいのお……ぬくいのお……」
「我、外に出てよかった……」
「我もだ……出られて本当によかった……」
「我も……外ってこんなにきれいだったのか……」
そう言ってくれると助けた甲斐があったってもんだ。砂だらけの風景でもそんな風に思えるとは……商都を出発した時は海も見えてたんだけどな。景色を見る余裕がなかったんだろうね。
『遠見』
一応周囲をチェックしておこう。行き過ぎたら面倒だからな。岩山があるんだったか。
『友よ いつか一緒に行かないか
セティアン砂漠の真ん中に
懐かしい家 懐かしい風 懐かしい故郷の砂の上に』
おっ、ドワーフの歌か。自然と口から出てしまったんだろうなぁ。
『友よ いつの日か戻りたいな
セティアン砂漠の真ん中に
懐かしい家 懐かしい砂 懐かしい故郷の風の中へ
さあ ハンマーを持て 岩を砕き 鉄を叩け
さあ ハンマーを持て 鉄を叩き 鋼を練りあげろ』
全員で足踏みするもんだからそれは止めた。高速で飛んでる最中なんだからさ。私でなかったら落ちてるかも知れないぞ?
『友よ いつか一緒に戻ろうよ
セティアン砂漠の真ん中に
懐かしい家 懐かしい風 懐かしい故郷の砂の上に
友よ いつの日か見せてやる
セティアン砂漠の真ん中を
懐かしい空 懐かしい砂 懐かしい故郷の岩の「カース殿! あれだ! あそこに!」
歌の途中で長老が叫んだ。
『遠見』
見えた。あれは分からんだろ……全然岩々しくないじゃん。砂漠の砂と同じ色だし……
「見えた。行くよ。」
『さあ ハンマーを掲げろ 岩を砕き 鉄を叩け
さあ ハンマーを掲げろ 鉄を叩き 鋼を練りあげろ
さあ 火を起こせ 風を呼び 灼熱を飼え
さあ 火を起こせ 鉄を燃やし 心まで燃やせ』
ドワーフ達の歌は止まらない。むしろますますボリュームが上がっていく。
「ミーミー」
ノミーデスも喜んでいるのかな。表情からは分からないけど。私の肩の上で妙な動きをしてる。ダンスかな?
「ごほ、まさか……こんなに早く帰り着けるとは……おお、カース殿……」
「よかったね。せっかくだから少し高度を上げるわ。」
『さあ友よ ハンマーを持て お前が叩けば 鍛冶場が踊る
さあ友よ 合槌を打て お前が叩けば 鍛冶場が燃える』
真上からだとますます分からないな。でも、岩山は間違いなくある。風化したり砂に埋もれたりしなくてよかったよなぁ。あの内部に住居があるんだろうか。
「ごほ、おおお、なんという高さだ……歌おうではないか……四方八方に響きわたるまで……」
『我らは叩く 懐かしい故郷 セティアン砂漠の真ん中で』
歌が終わると皆一斉に黙り込んだ。そして、ただ下を見つめている。では下りようか。ゆっくりと……
着地。岩山の正面。
『氷壁解除』
「お、おお、おおおお……」
「長老……ここが我らの故郷なんだな……」
「かすかに見覚えがある……」
「我は初めて見る……なのに何故だ……何故こんなにも心揺さぶられるのだ……」
「ここが、我らの、ふるさと……」
岩山、どう見ても岩山だ。峻険ではなく、のっぺりとしてる。高さは十五メイルってとこだろうか。さて、どこから内部に入るんだろう。
「な、なんということだ……」
どうした? 長老が砂に膝、だけでなく両手までついている……




