500、ドワーフ職業安定室
王城内を歩く。別に我が物顔ってわけではないがこそこそ歩く必要もない。ドワーフおよそ二十人を引き連れているからかなり目立つしね。メイドらしき使用人は私達を見て悲鳴をあげる。騎士の奴らは悔しそうに睨む奴と汚い物を見る目を向ける奴が半々ぐらいか。それ以外に役人風の奴がいたから商王の居場所を訊ねてみる。ちゃんと約束だってしたからね。案内しないと困るのは商王の方なんだよね。
よしよし。素直に案内してくれたね。半ば諦め顔みたいだったけど。宮仕えは辛いね。
おっ、いたいた商王。なんかこいつもやつれてない?
「やあ商王様。約束通りドワーフを連れてきたよ。俺は口を挟まないから存分に交渉するといいよ。」
「そ、そうか……では別室で……座って、落ち着いて話そうではないか……いや、待てマオウ。えらく少ないのではないか……」
おっ、意外と冷静じゃん。
「ここのドワーフ以外はもう行き先を決めたからな。彼らだけがまだ決めてないってわけだ。ついでに言うと条件次第では残ってもいいってさ。」
口を挟まないって言ったばかりなのになぁ。つーか一人でも残ったら奇跡だろ。
「くっ、そ、そうか……まあよい。こちらだ……」
必要ないとは思うけど私も行こう。まさかいきなり隷属の首輪的なやつを使うとも思えないけどさ。
それにしても奇特なドワーフもいたもんだわ。あれだけ長い間閉じ込められて奴隷生活をしてたのに、条件次第では残ってもいいとは。変わり者もいるもんだね。
おっ、広いな。椅子まで用意してやがる。明らかに椅子の方が多いけど。へぇ、仕切られたカウンターに文官的な奴が十人ぐらいいるし。さすがに商王が一人で対応するのは無理だもんな。
どこかで見たような光景だな……あ、分かった。ハロワだ。前世で行った覚えはないけど画像で見たような気がする。ふふ、確かにこれはドワーフにとってはハロワみたいなもんだよな。実際はどうにかドワーフを雇いたい逆ハロワというか逆面接って感じ? どんな待遇ならドワーフって喜んで働いてくれるんだろ? やっぱ酒なんだろうか? 果たしてそんな情報持ってるかぁ? 今まで酒を支給したことなんかないだろうしね。
さて、その間に私は商王と話してみようかな。
「なあ商王様、城の周りを取り囲んでる奴らがいるよな。あいつらの目的って何だい?」
「ふん、知らんな」
へー、意外だな。こいつが仕組んだわけじゃないのか。
「じゃあ蹴散らさない理由は?」
「くっ、そのような余裕があるはずなかろうが!」
そりゃそうだ。哀れだねぇ。
「じゃあ奴らの目的は何だと思う? 唯我神会の奴らだよな。宗主は何を考えてあんなことやってんだろうな?」
「知るものか! おおかたこちらが落ち目になったのを感じ取ったのであろう! 示威行為としては充分だからな!」
つまり勢力争い的な? そういや教会の宗主って商王になれなかった奴って話だったか。でもそれって妙なんだよな。
「ちょっと気になったんだけどさ。教会の宗主って商王になれなかった奴なんだろ? そんな奴に権力持たせて大丈夫なのか? カーサみたいに飼い殺しにするのが普通じゃないの?」
いや普通って話をするなら殺すのが普通なんだろうけどさ。
「あやつは先々代の商王になれなかった者の末裔だ。今までは大人しく面従腹背を決め込んでいたゆえな……命令すれば靴でも舐める道化と侮っておったわ……」
面従腹背って分かってんのね。自分とこの権力財力が絶大すぎるもんだからどうせ逆らえないって調子に乗ってたわけね。民を支配するのに便利とかって言ってたし。うーん自業自得か。
「一応言っておくけど、ローランド王国と交易するんなら国内で揉めてる場合じゃないと思うぞ。上手くやればお前らだって儲かるだろうしさ。真っ当な生き方した方がいいんじゃない?」
生き方というか国家運営か? 国家間の付き合いに真っ当も何もあったもんじゃないけどさ。うちの国王がその気になったらドラゴンで焼き払うこともできるんだしね。ヒイズルもそうだけどセティアニアも滅亡させるには惜しい国だもんな。主に香辛料的な理由で。
「キサマが口を挟むことではない……」
おっ、それ本音だね。そして正論だと思うよ。
「そりゃそうだ。せいぜい残ってくれるドワーフを大事にしろよ?」
「ふん……」
何人残るか知らないけどさ。




