496、精霊とアレクサンドリーネ
仕方がないからノミーデスも連れてシェルターに入った。だってコーちゃんが言うんだもん。今だけだから優しくしてあげて、と。さすがにずっと私に付いてくる気はないよね。安心したような少し残念なような。思えば解放された精霊もここにはほぼ残ってない。コーちゃんとノミーデスだけなんだよなぁ。今から解放される奴らもコーちゃんに挨拶に来てからどこかに消えてしまうのかな。まいっか。
「アレク、お風呂入ろうよ。なんだか疲れたよね。」
「カースは働きすぎなのよ。お風呂から上がったらマッサージしてあげる。そして今日はもう寝ましょ?」
おお……なんという心遣い。自分のこと より私を優先してくれるなんて。ここのところ夜のお務めが少なかったからあれこれと溜まっているだろうに。アレクったら何ていい子なんだろう。私の方こそ我慢できなくなってしまうぞ。むふふっ。
…………朝、かな……よく寝た気がする……
「あっ、カース。起きたわね。気分はどう?」
「……おはよ……すっきりしてるかな。もかしてもう朝?」
昨日は風呂に入る前まで記憶があるんだけど……それからどうしたっけ? アレクとハッスルする気満々だったんだけど……
「おはよう。もうお昼すぎよ。精霊も半数以上解放されたみたいだわ。」
「えっ、もうそんな時間!? ごめん、寝過ぎたね。」
マジかよ……
「何言ってるのよ。カースは働きすぎなんだからもっとずっと休んでてもいいぐらいだわ。」
「あはは、ちなみにいつ寝たのかな?」
「お風呂に入ったあたりで意識が朦朧としてたみたいよ? その後ベッドでオイルマッサージをしてたんだけど、その頃にはぐっすりね。多少は疲れがとれてるみたいでよかったわ。」
「アレクのおかげだね。ありがと。」
早々と寝てしまったのか……それにしてもオイルマッサージか。ありがたいなぁ。
「じゃあ何か食べ、あっ、また精霊が来たわ!」
「えっ! おお、本当だ!」
へぇー、これは一体何の精霊なんだ? 握り拳サイズの綿あめ?
おお、私の首筋をなぞるように動いて……どこかに消えていった。挨拶はコーちゃんにするんじゃなかったのか?
「ピュイピュイ」
へぇ、そうなの? 精霊たちは誰に助けられたか理解してるんだ。すごいな……だから私に挨拶に来てるの? 首筋を撫でられた感触はあるけど血は吸われてないんだよね。魔力をほんの少し吸われてるだけかな。まあ、それって一般的な魔法使いからすると満タンぐらいなんだろうけどさ。
そうなると今日はもうのんびりしよう。外のこととか商王とか第一騎士団の団長のこととか気になるけど気にしない。あ、シュガーバも気になるなぁ。あいつどこで遊んでんだろ。まあいいや。放っておいても死にはしないだろ。
「今日はのんびりしよっか。アレクはちゃんと寝たの?」
「もちろんよ。ところでお腹すいてない? 何か作るわよ?」
「おっ、ありがとね。何か軽いものがいいな。スープ系のさ。」
「分かったわ。待ってて。」
でもスープを飲んだら食欲が湧いてきそうだな。それはそれでいいよね。
あ、そういえばアレクはなぜ今が昼過ぎだと分かってるんだろ?
ほぁあ……美味しかった……昨夜のドワーフ料理がスープ仕立てになるとは。確かに食欲が湧いてきちゃったよ。言うなればスープカレーのドワーフ風ってとこだろうか。どことなく和風の香りもしたんだよなぁ。コクがあるって言うかさ。
「美味しかったよ。ご馳走様。ありがとね。」
「もういいの? お代わりは?」
「あはは、お腹いっぱいになっちゃったよ。具がいっぱい入ってたからさ。じゃ、少し寝るね。」
「ええ、じゃあ起きたらまた何か作るわね。」
「ありがとね。おやすみ……」
アレクの気遣いが嬉しいなぁ。ぐぅ……
カースったらよく眠ってるわ。相当疲れてたのね。一国を敵にまわして、それでも勝ってしまうなんて……やっぱりカースはすごいわ。相手にしてみればいい迷惑だけど、そんなの知ったことじゃないわ。せいぜいカースに睨まれた我が身を嘆くのね。
たとえ今回の件で国が分裂、滅亡しようとも。どうせ神々に愛想を尽かされてるんだし遅かれ早かれ似たような道を辿るはずだったのよ。
気になるのは商王の能力ね。精霊を閉じ込めることができるって只事じゃないわ。おそらく個人魔法でしょうけど、それが先祖代々受け継がれるなんて聞いたことがない。きっと尋常な手段じゃないんでしょうね……
商王があの歳なのにまだ王太子が決まってないことと関係あるのかしら? ジョーさんが夕方再び商王と面会するらしいし、少し探りを入れてもらうのもいいわね。
カースが目を覚ます頃には全て終わっているのが理想なんだけど。あ、また精霊が来たわね。




