493、長老の想い
ノミーデスがもうじき目覚めることを長老に伝える、と同時に目が開いた。
「お、おお、おおおおおお! ノミーデス様! ノミーデス様ぁ! お、おかげんは、大丈夫ですか!」
「ピュイピュイ」
ノミーデスの目は開いたが起きあがってはこない。コーちゃんは大丈夫そうだと言ってくれたけど。
「ミー」
おお! 喋った! お人形さんみたいな見た目だけどコーちゃん達みたいな喋り方なのか。むしろ鳴き声か。子猫みたいな声、かわいいじゃん。
「おおっ、おおおお! ノミーデス様! ついにお声を!」
長老が興奮してる。気持ちは分からんでもないね。
「ミー」
おっ、ようやく起き上がった。コーちゃんも尻尾を解いた。
「ピュイピュイ」
「ミー」
何やら話しかけるコーちゃん。返事をするノミーデス。頷いているように見える。
「ピュイピュイ」
んー、コーちゃんの頼みなら仕方ないね。いいよ。まったく、コーちゃんは面倒見がいいんだから。私だって魔力に余裕があるわけじゃないんだからね。
「ピュイピュイ」
「ミー」
ノミーデスがふわりと浮き上がり、私に飛び込んできた。首筋めがけて。痛っ。
首から血を吸ってやがる。ここの精霊達は血が好きだよな。まあ実際には私の濃密な魔力を効率よく吸収するためなんだろうけどさ。魔力譲渡や魔力吸引以上に効率がいいんだろうね。魔力と栄養の両方ゲット的なさ。母上だって姉上の命を繋ぎとめる時にかなり血を使ってたもんなぁ。
「ミーミー」
おっ、吸い終わった? さすがに満タンになるほどは吸ってないよね? 首にポーション塗っとこ……ふぅ……先日からだいぶ吸われた気がするな。血も魔力も。でも頭痛はだいぶ落ち着いてきた。この分ならもうしばらく魔力ポーションを飲まずにいれば治るかな。
「ミーミー」
おや? 私の肩に座ったぞ? 首に抱きついてきた。どうした?
「ピュイピュイ」
「ミーミー」
コーちゃん通訳をお願い。何て言ってるんだい?
「ピュイピュイ」
ああ、助けてくれてありがとうって? お安いご用さ。いや、結構大変だったな。感謝してるんならそれでいいさ。いやぁよかったよかった。
「よかったね長老。ちなみに長老は故郷に帰る?」
「お、おおカース殿……何もかもカース殿のおかげだ! ありがとうありがとう! アレックス殿から聞いたぞ! カース殿は別名魔王とも呼ばれるほどの豪の者だと! 国に並ぶ者なき英傑だと! それほどの方が我らドワーフに合力してくれたのだな! 本当にありがとう!」
なんか長老が元気になってる。いいことだね。でもアレク、国に並ぶ者なき英傑ってのは言い過ぎだぜ。
「大したことじゃないよ。まあ今日のところは腹いっぱい食べてさ。身の振り方はまた決めたらいいよ。もちろん故郷でもどこでも送るからさ。」
「我は故郷へ帰るつもりだ。死ぬ前に故郷の景色が見たいからの。しかしだ、カース殿よ……」
故郷の景色って砂漠だよな? 岩山とかあるらしいけど……
「ん? 何?」
「我らが故郷はセティアン砂漠ゆえの。かなり過酷な道のりとなるだろう……それでも送り届けてくれると言うのか?」
あれ? 飛んで行くって話はしてなかったっけ?
「いや、大したことないよ。飛んで行くからさ。たぶんすぐ着くよ?」
「なっ!?」
「だから言ったでしょ? カースに任せておけばいいって。余計な気回しは必要ないわよ?」
「アレックス殿……ありがとう……我らは何も返す物がないというのに」
その気持ちだけで充分さ。いくら何でも二百年以上も奴隷生活してた相手にお礼を寄越せだなんて言う気ないしね。
「いいのよ。カースの偉業を子々孫々語り継いでいくだけで。」
アレク……
「いや、ある! あるぞ! 故郷が今も砂に埋もれてなければ!」
おっ? 何だ何だ? 語り継いでいってくんないの?
「ミーミー」
「おお、ノミーデス様も覚えておいでですか! 『血醸之星』を!」
ちじょうのほし?
「聞いてくれカース殿! 我らドワーフ族には代々伝わる宝玉がある! 長年に渡り族長の血を吸い込み赤く輝く宝玉だ! それを受け取って欲しい!」
「うーん、見てからね? なかったらないでいいからね?」
先祖代々伝わる宝玉だと? そんなもん受け取れるわけないだろ……むしろいらん! まあ二百年以上放置されてたわけだし現存するかどうか怪しいよね。
「うむ! カース殿の恩に報いるにはそれしかないからの! ぜひ受け取ってくれ!」
「はは、あったらね。まずは無事に帰ることを考えようよ。」
あ、いいこと思いついた。これならドワーフも恩を返せて私もハッピーなアイデアを。ダークエルフのクライフトさんに頼むつもりだったけど、ドワーフにも可能なら頼んでみよう。




