486、読心者の活用法
リキームさんがジャンを連れて部屋を出た。
「さてカースよ、そなたはドワーフどもの価値を分かっておるか?」
分かるわけないだろ。
「いえ、あまり分かってないですよ。領主様はお分かりなんですか?」
「ふははは! 分かるわけがなかろう! 昨日今日初めて存在を知ったのじゃぞ? だがの、二百余年も監禁し続けて。あまつさえ一国の王が約束を無視してまで拘束しておるからの。さぞかし価値があるのじゃろうて。そうは思わぬか?」
そりゃあね……
「その通りとは思います。商都はミスリルだらけでしたしね。おそらくドワーフはミスリルの扱いに長けてると思います。あと魔道具作りの腕もかなりのものかと。ローランドの魔法技術と融合したらすごいことになる気がします。」
「そこまで分かっておるのに、よいのか?」
よいのかってのは手放していいのかってことか。もちろん構わんよ。
「いいも悪いも僕では彼らの腕を活かせませんしね。楽園に連れていっても設備の整備ぐらいしかやることないと思うんです。まあ、あっちは人手不足ですからやることはいくらでもあるとは思いますけど。」
「ふっ、そなたは変わり者じゃの。どこまで欲がないのか。金にも女にも執着を示さぬ。ならば今最も欲しい物は何じゃ? 妾が叶えられるとも思えぬが言うだけ言うてみよ。」
欲しいものかぁ……アレクとの怠惰で淫らなひと時。美食に美酒、それ以外だと……
「ケイダスコットンが欲しいですね。しかも南の方にケイダスコットンを上回る上物、スピーマコットンてのがあるそうなんです。それが欲しいですね。」
だいぶ南の方、ツァヌカ山脈とかって言ったかな。かなり気になってんだよね。あとビクーグナって言ったっけ? 超高級毛皮。アレクのコートに相応しい素材じゃないだろうか。どこかの高原に住んでるんだよな。商王に聞いたら知ってそうだな。
「ほう? スピーマコットンとな? 初耳じゃ。えらく気になるではないか。ああそうじゃ、ケイダスコットンならばある程度目処が立ったぞ? コーヒーもの。」
え!? マジで!?
「それはよかったですね。どこか有望な生産地でもあったんですか?」
チャラい宮廷魔導士が偵察に行ってたのはシュガーバのとこだったか。あそこってどっちかと言えば香辛料がメインだったような……
「忘れたか? ヤリマダ半島の中央から東部にかけてじゃ。蛮族がおることを。」
あー、そういやそうだったか。意思疎通がしにくい上に一人殺したら部族総出で復讐に来るとかってやつ。セティアニア商国とも関係ないんだよな? すっかり忘れてたわ。
「言葉が通じないんでしたっけ。そこと交易するようになったんですか?」
今までも交易するにはしてたんだろうけどさ。
「いいや、ようやく支配下に置くことができての。何度も族滅してやろうかと思ったことか。これまで我慢した甲斐があったわえ。」
へー、すごいじゃん。皆殺しにするより難しかっただろうに。しかしどうやったんだ? 言葉が通じなければ契約魔法も効かないだろうに。
「おめでとうございます。てことはバルバロッサの版図が一気に広がったわけですね。ヤリマダ半島全域ですか?」
「うむ。それもこれもそなたのおかげじゃがの?」
へ? 私の?
「身に覚えがありませんが。何かしましたっけ?」
また何かやっちゃいました?
「ふふ、それも忘れてしもうたか。そなたらしいの。読心者よ、覚えておらぬか?」
「あ、読心者。そんな奴らもいましたね。で、そいつらがどうかしたんですか?」
心を読む奴らだよな。確かにいたな。そいつらが役に立ったってことか?
「何を考えておるのか分からぬ蛮族どもとの通訳に使ってやったのじゃ。もっとも、こちらの意思を伝えることはできぬから読心者どもに奴らの言語を学ばせたのよ。唸り声にしか聞こえぬ奴らの声がようやく分かってきたというわけよの。」
「おお、それはすごいですね。よくできたもんですね。お見事だと思います。」
なるほどなぁ。心が読めれば言葉が通じなくても何とかなるわな。その流れで言葉も勉強させたってわけか。まさかあいつらにそんな使い道があるとは……このおばさんやるなぁ。
「そんな奴らを捕らえたのはそなたではないか。つくづくそなたは得難い人材よの? カース、そなたがバルバロッサに来てからじゃ、諸々が上手く回りだしたのはの。兄上が放っておかぬわけじゃて。そこでどうじゃ? 昼下がりの火遊びと洒落込まぬか?」
何が『そこで』なのか分からないぞ……アレクがいないからチャンスとか思ってんだろうか。
「もちろんしませんよ。僕の心にはアレクしかいませんので。」
アレクオンリーラブだからな。そもそも超強力な契約魔法がかかってるしね。無駄無駄。
「ふっ、妾に恥をかかせおって。憎い男よの? じゃが、それが許されるのも強者の証というものよ。カース、天晴れであるぞ。」
「あはは、ありがとうございます。じゃ、眠くなったので失礼しますね。ドワーフ達のこと、ありがとうございました。」
「なに、大したことではないわ。何なら添い寝してやってもよいぞ?」
「あはは、遠慮しておきます。では、ご馳走様でした。」
まったく、このおばさんは……私を取り込みたいのか自分の性欲を満たしたいのか……両方なんだろうけどさぁ。旦那とか子供とかいるんだろうにさぁ。




