480、追い詰められる商王
全ての精霊を解放する見込みが立った時点でもう聞くことはないんだけど、一応気になることもあるしね。もう少しあれこれ聞いてみようか。
「そもそも事の起こりはお前んとこの祖先がノミーデスを捕まえたことだよな? 一体どうやったらそんなことできるんだ?」
「……セティアン砂漠の中心部を縄張りとしていたドワーフ族の所へ行商人として出入りしていたのが祖先だと聞いている……その時に……」
「その時に?」
「土の精霊が助けを求めたため保護したと、聞いている……」
そんなわけあるかい!
「お前がそう聞いているのは事実としても、どう考えても違うってことぐらい知ってんだろ? 捕らえた精霊を逃がさないようにとか、新たに精霊を捕まえる方法とか、あれこれ伝わってんだろ?」
「そ、そうだ……精霊を捕獲し、資源として使うことでセティアニアは発展していったのだ!」
ほれ見ろ。捏造してやがる。
「セティアニア商国じゃなくてセティアン家が、だろ。まあいいや。今後はもうやめときな。お前らとっくに神に見放されてるみたいだからさ。少しは反省した方がいいぜ?」
「何が神だ! いもしないくせに! 神が助けてくれるとでも言うのか! 神が一体何をしてくれたと言うのだ!」
「バンツーって神がいるんだろ? 助けてくれないのか? ちなみに神はいるぞ。」
助けてくれるかっていうと微妙だけどさ。魔力が回復するだけでも充分すぎるけどね。
「バンツーなどと! あんなものでっちあげの紛い物にすぎん! 愚民どもを操るのにちょうど良いと何代か前の商王が作り上げたものよ!」
知ってるよ……どうせそんなこったろうと思ったもん。
「まあいいや。どこからそんな話になったかは知らんがドワーフとの約束は二百年なんだろ? もうとっくに過ぎてるって話じゃん。あいつらも解放するからな。」
「そ、そんな……我らの産業が……」
強制労働させておいて産業って……ツラの皮が厚すぎるだろ……
「お前の命はとらない約束だからな。ドワーフ達と話してみろよ。真っ当な条件で雇い入れることができるかどうかをな。もっとも、全ての精霊を解放し終わった後だがな?」
「ほ、本当にワタシを助けると言うのか?」
「まあな。俺は約束は守るぞ? というわけで追加の約束だ。お前がドワーフと面談する時間を作ってやる。運が良ければ引き止めることもできるだろうぜ? だからお前は残る全精霊を解放しろ。いいな?」
「だ……だめだ……」
あらら、しぶといなこいつ。
「別にいいけど、その場合俺が一つずつぶっ壊すだけだぞ? そもそも鍵の在り処だってお前に聞けば分かることだしな。」
それが面倒だからこいつにやらせようとしてるわけなんだけどさ。
「精霊がいなければ……光銀塔が有名無実と化してしまう……商都が、光銀城が、動かなくなってしまう……」
知るかよ……
「別にどっちでもいいんだぞ? 今すぐお前を殺したってさ。言っとくが今お前を殺さないのはただの気まぐれだからな? お前の兄であるカーサに免じて助けてやってもいいって程度だぞ? うちの白蛇ちゃんを捕まえた時点で両手足ぶち切ってから放置してやろうかと思ったぐらいだからな。」
「そ、それは……だ、だがしかし……」
そもそもこいつの返事なんか必要ないんだけどね。
「というわけで時間切れだ。お前もう死ね。後は適当にやるわ。カーサに商王をやってもらってもいいしな。ああそうだ。最後に選ばせてやる。俺達四人のうち誰に殺されたいかをな?」
「ま、待て! 待ってく『風斬』っれがぁ!?」
大袈裟なんだよ。頬を少し斬っただけだってのに。
「俺なら苦しむ間もなくあっさり殺してやるよ。痛みを感じる事もないぜ?」
なんせ麻痺が効いてるしね。
「私なら足元からゆっくりと凍らせてあげるわ。最初は冷たいかも知れないけど眠るように静かに逝かせてあげるわよ?」
「ガウガウ」
「うちの狼ちゃんはあっさり首を斬ってやるってさ。ちなみにこっちの白蛇ちゃんに噛まれると悲惨だぜ? 簡単に言うと狂い死ぬことになる。ただし苦しむことはないだろうな。大笑いしながら最高の気分のまま死ねるだろうよ。さあ、誰にする? 遠慮せず答えてみな?」
「や、やめろ……やめてくれ……わ、分かった、や、約束するかっらあああああががががががぁぁぁ……」
よし。これで面倒な作業もしなくていいな。全精霊を解放するのは先に助けた五人の精霊との約束だからな。必ず実行しなければならない。
「全ての精霊を解放するのにどれぐらいかかる?」
「……分からぬ……一つの霊縛檻を解き放つだけでもかなり時間がかかるだろう……」
あー、そりゃそうだよな。分かるよ。やたら階段登ったり梯子登ったりだったもんなぁ。道中にもやたら鍵がかかってたし。
「三日でやれ。騎士どもに鍵を渡して分担すればできるだろ。ドワーフと面談させてやる約束だが、その前にドワーフが旅立つってこともあり得るからな。その場合は知らんからな。せいぜい急げよ?」
「なっ、くっ……分かった……」
三日もあれば余裕だろ。さて、これで他に気になる点は……




