478、アレクサンドリーネの計略
瞬く間に料理を完成させたアレク。どこが一品だよ……フルコースじゃないか。
「こ、これは……」
「あまりにも使いやすい厨房だったものでな。つい興が乗ってしまった。お前達の分も用意したゆえ食べるがいい。そして判定してもらおうか。商王様にお出しする価値があるかないかをな。」
こんなの見てたら腹がへってくるじゃないか。匂いもたまらんし。ローランド風の料理だがセティアニアの人間に合うよう香辛料を効かせてるんだよな。手伝えと言われたがほぼ食材を魔力庫から出しただけだし。
「どうした? 遠慮せず食べるがよいぞ。」
「お、恐れながら申し上げます……あなた様は貴族でしかも女の身、でありながら……どうやってここまでの腕前を身につけられたのですか……」
おっ? 差別発言か? この国って女性の身分が超低いもんなぁ……
「簡単なことだ。我が国、ローランド王国では女の地位は料理の腕で決まるからよ。高位貴族ほど料理の腕が立つ。それが何を意味するか分かるか?」
アレクったら絶好調だな。料理の腕で地位が決まるって大嘘じゃん。高位貴族女性ほど料理の腕が立つけど、料理の腕が良ければ高位貴族になれるわけじゃないんだからさ。
「い、いえ……」
「分からなくても特に問題はない。それで、どうだ? 合格か?」
旦那が浮気した時に殺すためってのが理由の一つだったかな。だから高位貴族の令嬢を妻に迎える場合は男側に覚悟が問われるんだよな。君になら殺されてもいいって感じでさ。
実際には料理の腕がステータスって面もあるけどね。
「う、美味い……お、お見事です……これならば商王様もご満足いただけるかと。後ほど食材や作り方を詳しくおうかがいしたいのですが……」
「時間があればな。では案内せよ。昨夜の件もある、直接商王様にお届けしお礼言上申し上げるゆえな。」
「は、はい!」
厨房の人間が台車に料理を乗せていく。その台車を押すのは、侍女さん? いや、奴隷ちゃんか? 首輪がなかったら侍女にしか見えないよな。
「では、こちらの者に案内させますので」
「うむ、よろしく頼む。」
「こちらでございます」
台車を押して歩き出す奴隷ちゃん。
「商王様は本日どちらにおられるのだ?」
「執務室でございます」
あっさりと分かってしまった……めっちゃ仕事中か? それを騎士が知らないとはねぇ……いや、聞かされてないんだろうな。
「そうか。このような時間までご公務とは。さすがは商王様だな。」
そりゃあ大忙しだろうさ。だが、もうすぐ暇になるぜ?
「そろそろです。まずはあちらの部屋でお毒見をしていただきます」
「商王様もお可哀想に。できたての熱い料理をお召し上がりになれないとはの。特にこれ、ワイバーンのヒレ肉だ。その中心部だけを取り出して弱火で焼き上げたステーキゆえ絶品中の絶品よ。焼きたてをお召し上がりいただきたいものだがな。」
ヒレ肉の中心部ってことは、シャトーブリアンか? めっちゃ美味そうじゃん。
「失礼いたします。商王様のお夕食を運んで参りました」
「入れ!」
部屋の中から声がする。もしかして親衛騎士とかいる? だとしたらまずいな……
『麻痺』
『麻痺』
やっぱ騎士がいた。こいつらが毒見役か。奴隷ちゃんもろとも麻痺させておいた。
「さすがカースね。もうここまで来れば案内の必要はないもの。さっさと商王を捕まえてしまいましょ。」
「たぶんこの奥が執務室っぽいしね。さあ、行こうか。」
台車は私が押す。商王を取り押さえたら食べたいからね。なんせアレクの本気手料理なんだからさ。
ノックしてもしもし。
「商王様、夕食をお持ちしました!」
「入れ」
この声、間違いない。やっと見つけたぜぇ商王様よぉ。さあ、チェックメイトだ。




