476、ダストシュート
怪しい男に案内されて備品室を進む。狭いな。
「さあこの中だ。入ってくれ。いいもの見せてやるからさ」
「お前が先に入れよ。」
ドアを開けて甲斐甲斐しいふりしてるんじゃないぞ? お前みたいな怪しい奴が開けた部屋なんか入れるかよ。
「いやいや、オレなんかがマオウの旦那より先に入れるわけねぇって。ささ旦那、入ってくれよ」
こいつは黒だな。
『麻痺』
まったく。魔法を無駄遣いさせんなってんだ。
「あっ、えっ、えっ!?」
「動けないだろ。下半身だけ麻痺させたのさ。お前に聞きたいことがあってな。正直に話すと約束してくれたら無傷で帰してやるし、場合によってはさっき見せた宝貨もくれてやるぜ?」
「えっ、正直って、そんなの当たり前だろ!」
その割に契約魔法が反応してないじゃないか。つまり約束する気はないわけね。残念だねぇ。
「約束してくれないのならお前に用はない。そこで明日まで転がってるか今すぐトドメを刺されるか、好きな方を選びな?」
「そ、そんなあ! 待ってくれよ旦那あ! 約束するって!正直に言うから助けてくれよお!」
この期に及んでもまだ契約魔法が効いてない。とんだデタラメ野郎だわ。意思が強いとも言えるけどさ。
「とりあえず先に部屋入れよ。話はその後でしようじゃないか。」
襟首を掴んで部屋に放り投げる。特に何も起こらないな。てっきり何かの罠かと思ったが。
「お前はここについて何か知ってるか?」
「いや……普段こんな所に来ないから……」
だろうなぁ。騎士が来るような場所じゃないもんな。仕方ない。入ってみるか。
「アレクは待っててね。何か怪しいからさ。」
「ええ、分かったわ。」
「お前は来いよ?」
「あ、ああ……」
さて、どんな仕掛けがあるのやら。まったくもう……私は商王を見つけたいだけなのに。
室内はあまり広くないな。四畳半ぐらいか? 臭いな。汚れ具合からしてゴミ置き場か? 今は何もないけど。
「で、こんな臭い部屋に商王がいるってのか?」
「くく、いるわけないだろう……かかったなぁ! この愚者が!」
『浮身』
バカかこいつ? いきなり床が開いたけど私には無意味だ。部屋ごとダストシュートってわけね。
結局何者だったのが分からないが騎士とともに落ちていきやがった。自分ごと私を仕留めたかったんだろうか。本来なら私達全員を落としたかったんだろうけどさ。残念だったな?
それにしても……ったく、頭が痛いのに魔法を使わせるなってんだ……
「という感じだったよ。また一から探しなおしだよ。」
やれやれだぜ。
「カース相手に身の程知らずね。でも、ただの下っ端じゃあなかったみたいね。見上げた心意気だわ。」
確かに。
「それもそうだね。じゃ、次行ってみようか。」
どこに行くかが問題だけど……道案内がいなくなったしなぁ。
「一つ考えが浮かんだわ。こっちに来てくれる?」
「おっ、さすがアレク。頼りにしてるよ。」
来た道を戻る。必然的に厨房も。
さあ、どんなアイデアなんだい?




