474、時間の浪費
「ガウガウ」
お帰りカムイ。さすがに仕事が早いな。五分足らずで制圧が終わりとか。じゃ一番偉そうな奴の尋問を始めるとしよう。どこにいる?
「ガウガウ」
下っ端ばかりだったって? お前よく区別がつくな……じゃあ牢の中は?
「ガウガウ」
そっちは放置したのね。そりゃそうか。
「アレク、残念ながらここの上役は逃げたみたいだね。僕の演技がまずかったかな。」
魔道具越しならバレないと思ったんだけどなぁ。
「そのようね。もしくは張本人が上役の隣にいたから、って場合もあると思うわ。」
「あはは、そりゃバレバレだね。向こうも笑いを堪えるのが大変だったかもね。」
だとすると逃げたってのも納得がいく。半分だけな。
「こうなったら奴らの形跡だけでも調べた方が良さそうね。何もなかったら囚人を解放して次行きましょ。」
「そうもそうだね。」
本当なら囚人に自らの罪を吐かせてから解放、または断罪したいところだけどね。今は時間がないことだし無差別解放でいいよね。商王へのかすかな嫌がらせってことで。
あ、鍵がない。こりゃ無理だな。やーめた。放置でいいや。わざわざ魔力を消費してまで解放なんてやってらんないや。カムイの魔力刃でもいいけどやっぱ無駄遣いはよくないな。
そもそもよく考えたら罪人を解き放つなんて良くないことだとね。うん、良くない。まあせめて話を聞くだけはしてやろうかな。時間もないことだし手短に。
うん。やっぱ解放なんてとんでもないね。やめやめ。ろくな奴がいないじゃん。犯罪者だから当然か。結局ヒントらしき物もないしさぁ。牢越しにクズどもと話しただけじゃん。
次で最後か。
「お前は何をやってここに入ってんだ?」
「何もしてねー」
「じゃあどんな言いがかりで?」
「ご政道を批判したんだってよ! ちょっと仕事の愚痴言っただけなのにだぞ!? そんなのありかよ!」
知らねーよ……
「邪魔したな。もう少ししたら出られるようになるだろうよ」
「待ってくれよ! あんたかなり『やる』んだよな? ここの看守も隊長もあんたが来ると知ってすーぐ逃げちまったぞ!? マオウってあんたのことなんだろ?」
何だ、やっばバレてたのか。いくら演技派の私でも話術オンリーでは難しいよなぁ。
「ああ。まあその通り。じゃ、元気でな。」
「いやいやいや! 待ってくれって! 助けてくれよ! なっ! なっ! いいこと教えてやるからさ!」
「一応聞くだけ聞いてやるよ。もしそれが俺の知りたいことだったら出してやるさ。」
今知りたいことなんて商王の居場所ぐらいのものだ。商王の財産の隠し場所でもいいけどさ。さぞかしたんまり持ってんだろうねぇ。
「言うわけねえだろ……出してくれたら言うからよ……」
「ならいいわ。じゃあな。」
「いやいやいや待て待て待てって! 頼むよ出してくれよ! あんた看守どもが逃げるようなやつなんだろ!? そんな相手を騙したりなんかしねーって!」
「なら先に言え。こっちはお前の情報なんか期待してないんだからさ。」
もったいぶるんじゃないっての。
「分かったって! 言うから出してくれよ! あのな、ここのボスがちらっと言ってたんだよ! マオウを誘き寄せてからまとめて始末するって! なっ! 役に立っただろ! これでもう安心だろ! だから出してくれよお!」
役に立つわけねぇだろ……ここのボスってのは憲兵隊の隊長だろ? 問題はどこに誘き寄せるってんだよ……それが分からないと意味ないだろ。そもそも誘き寄せられてる感すらないし。
普通にカムイの鼻を頼りに隊長どもの後を追った方が早そうだな。
カムイ、開けてやってくれよ。
「ガウガウ」
カムイの口から魔力刃が伸び、首を二回振ると……
「お、おお! すまねえすまねえ! ありがとよ! そんじゃオレはここで! またなあマオウ!」
もう会うことなんかないだろ。どうでもいいけどこいつ逃げ切れるんだろうか? 自分だけ逃げないで他の奴らも出してやればいいのに。
それにしても怪しい奴だったわー。何か目的でもあったんだろうか? 私達の足止めとかさ。違うだろうな。




