470、ドワーフの歌
『氷塊弾』
アレクの魔法だ。騎士が二人ほど突破してきたもんだから。はいはいご苦労さん。
「アレクありがとね。ついでで悪いんだけど、そいつら拘束しておいてくれる? 後で尋問するからさ。」
「ええ、それなら尋問も任せておいて。カースは気にせずゆっくりしててくれたらいいから。」
「そう? 悪いね、ありがと。」
思えば尋問とかっていつも私がしてた気がする。アレクだって苛烈なクタナツ女性なんだから任せておいてもいいよね。ならば私は次々と焼こうではないか。
「い、いいのかカース殿……あれはたまに見る人間だが……少しでも奴らに逆らうと水や食糧を減らされるんだ……」
「気にしなくていいさ。どうせもう外に出るんだろ?」
まだ返事は聞いてないけど、まあ決まりだろう。
「あ、ああ……我はそのつもりだが……お前たちはどうだ?」
「わ、我は、出たい……」
「我もだ……」
「我は……分からん……」
「我は、まだ、恐ろしい……」
「まあ待てよ。結論を急がなくてもいいだろ? まだ肉も酒もたっぷりあるんだからさ。ここに何もなくなってからでいいだろ?」
「そ、そうだな……お前たちも食べろ。そして飲め。これはまさしく長老の言われる通り命の水ではないか」
「お、おお」
「確かにうまい」
「体の奥底まで沁み渡るかのようだ」
「うまいな……」
「だろ? 難しいことはこれ飲んでから考えな。」
「すまぬカース殿……何から何まで……ありがとう」
「人間……お前ってやつは……」
「我らを救っても何の得もないだろうに……」
「信じてもいいのか……」
「我は、飲む」
確かに私に得はないなぁ。楽園に来て欲しい気もするけど、そんなの私が決めることじゃないしね。とりあえず今はひたすら焼いてやるさ。食いねぇ食いねぇ肉食いねぇ酒飲みねぇ。
「カース殿、歌ってもいいだろうか?」
お? ドワーフの歌? ジャンったら酔ったのか? 興味深いぞ。マックレスも興味津々じゃん。
「頼む。ぜひ聞いてみたい。」
「お前たち足踏みを頼む」
「おう! ジャンの歌は久々だな!」
「聞きたいぞ!」
「人間にも聞かせてやれ!」
「やれやれー!」
おお、ドワーフ達の足踏みが始まった。これすごいな……めっちゃ響く。しかも単純な四拍子ではない、少しハネてる。ゆったりとしたシャッフル系?
『友よ いつか一緒に行かないか
セティアン砂漠の真ん中に
懐かしい家 懐かしい風 懐かしい故郷の砂の上に
友よ いつの日か戻りたいな
セティアン砂漠の真ん中に
懐かしい家 懐かしい砂 懐かしい故郷の風の中へ
さあ ハンマーを持て 岩を砕き 鉄を叩け
さあ ハンマーを持て 鉄を叩き 鋼を練りあげろ
友よ いつか一緒に戻ろうよ
セティアン砂漠の真ん中に
懐かしい家 懐かしい風 懐かしい故郷の砂の上に
友よ いつの日か見せてやる
セティアン砂漠の真ん中を
懐かしい空 懐かしい砂 懐かしい故郷の岩の山を
さあ ハンマーを掲げろ 岩を砕き 鉄を叩け
さあ ハンマーを掲げろ 鉄を叩き 鋼を練りあげろ
さあ 火を起こせ 風を呼び 灼熱を飼え
さあ 火を起こせ 鉄を燃やし 心まで燃やせ
さあ友よ ハンマーを持て お前が叩けば 鍛冶場が踊る
さあ友よ 合槌を打て お前が叩けば 鍛冶場が燃える
我らは叩く 懐かしい故郷 セティアン砂漠の真ん中で』
いい曲だな。ドワーフは作詞作曲までできるのか。どこか荒削りだけど魂がこもってる気がするな。古いブルースを彷彿とさせるメロディもいい。何より……
「ジャン、いい曲だったよ。みんなで帰ろうぜ。セティアン砂漠にさ。もちろん送ってやるさ。」
「素晴らしい歌声でした。ぜひ私と一緒に舞台に立ちたいものです」
おお、マックレスも満足か。声だってよかったよな。低くてずっしりとしててさ。バリトンボイスってやつだろうか。
「ありがとうカース殿、マックレス殿も。ここを出るならば全員で出たいと思ってな……この曲を歌いたくなったのだ……」
「こっちにまで聞こえてきたわよ。いい歌声じゃない。あなたなら舞台でも成功するわね。それよりカース、だいたいの状況が分かったわよ。」
さすがアレク。きっちりとやってくれたんだね。では聞かせてもらおうかな。




