468、殺し屋と魔王
……頭が痛い……
……ここは……
あ、思い出した。ドワーフの所だ。あまりに眠すぎるもんでシェルター出して寝てたんだったな。
外が騒がしいなんてこともない。よく眠れたかな。まだ眠いけど……
それにしても……外が静かとは妙だな。商王の奴は私達に追手を出してないのか?ここにいることぐらい気づいてるだろうに。
まあいいや。寝起きの一風呂浴びてから外に出るとしよう。アレクもまだ寝てることだし。
いい気分で外に出てみれば、じいちゃんもマックレスもそこらで雑魚寝してるじゃないか。しまったな、何か寝具出してやればよかった。シュガーバ用のがいくつか入ってるのに。
「……起きたのか魔王……」
「おおトーア、お前こそ起きてたのか。」
あれ? こいつ……いつから魔王だなんて呼ぶようになったんだ?
「……そいつの護衛だからな……」
それはそうだが、あれから一睡もしてないのか?
「眠いんなら寝ていいぞ? 布団も用意するし。」
「……いや、問題ない。お前は意外にひ弱いところもあるものだな……」
そりゃあ私は魔力は多いけどそれ以外は普通のセブンティーンだからな。いや、もう十八歳になってるのか? ローランドに帰ったら分かるんだけどな。
「ばかやろ。土の精霊を救ってきたんだぞ? そりゃあ疲れるさ。そういえばコーちゃん見た?」
寝る前は隣にいたと思ったんだけどな。
「……狼とどこかに行ったぞ。土の精霊とやらも連れてな……」
「あぁ、散歩かな。そういやおじさんとドワーフ達の話し合いってどうなった?」
「……さあな、あいつらが起きてから聞くといい……」
それは自分の仕事じゃないってか。それよりお腹すいたな。何時間ぐらい寝てたんだろう。
「そっか。トーア、腹具合は? 何か食うか?」
「……ほう? 何があるんだ? お前は領主らしいが……これぞ自領の料理だってものが食べたいものだな……」
「無茶言うなよ……歴史も伝統もない領地なんだからさ。でもまあいいや。俺の好物を食わせてやるよ。」
「……ほう? それは楽しみだ。お前、料理できるのか……?」
「焼くだけならな……」
確か魔力庫に入ってたはずなんだよな。おっ、あったあった。
「……何だそれは……?」
「ふふふ、内緒だ。食べてからのお楽しみさ。」
見て分からないのか? こいつらって駱駝肉をよく食べてるみたいだけど、同じ部位もありそうなものだが。
薄切りとぶつ切りでいこう。
まずは薄切りの方から。ミスリルボードで焼くぜ。かけるのはローランド産岩塩とシュガーバのところ、カラバ領でゲットしたペプレの実だ。ペプレの実は細かく砕いて……
よし完成。超いい匂いなんだけど。
「ほれ、好きに食べな。」
「……いただこう……うまいな……」
マジで美味いじゃん。普段との違いは……ペプレの実か? カラバ領でわざわざゲットしてよかったなぁ。
「……で、これは何だ……?」
「分からないか? 駱駝にも同じ部位があるはずだぜ?」
「……食べても分からないから聞いている……」
素直なことで。それにしてもこいつ、殺し屋のくせに他人が料理したものでも食うんだな。
「タン、舌だよ。正確に言えば牛の魔物、ブラックブラッドブルのタン元だな。次はタン先を焼くぜ。」
こっちはぶつ切りにしてある。たぶん硬そうだけどね。
「……タン? 舌……だと!?」
「ああ。駱駝のタンは食べないのか?」
「……食べるわけがない……どこぞの部族では食べると聞いたことがあるぐらいだ……」
「じゃあ今度から食べてみな。美味いかどうかは知らんけどさ。」
「……そうだな……」
ふふふ、手が止まらないみたいだな。私もだけど。マジで美味いや。
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
おっ、帰ってきたね。こんな地下で焼肉なんかしたらすぐ気づくと思ってたよ。二人とも食べるよね? 土の精霊はまだ目覚めてないけど。
こうなったらアレクも起こして酒盛りだな。私は飲まないけど。代わりにドワーフを呼んでこよう。ブラックブラッドブルの全部位を焼いてやるぜ!




