430、ドワーフの事情
ふむふむ。だいたい分かったぞ。
今から二百二十年ぐらい前、長老の父親世代が発端なのか。寿命どうなってんだよ……
特殊な魔道具でドワーフ族の守り神的な精霊を人質に取られたわけか。やばすぎだろ……精霊を閉じ込めることができる魔道具ってどんだけぶっ壊れ性能なんだって話だよ。それもう魔道具どころか神器だろ。つまりコーちゃんもそれに囚われたってことだよな? 絶対ぶっ壊してやる。
その時に出された条件が『ドワーフ一族が二百年間言いなりになること』ってわけか。それって奴隷になるのと何が違うのやら。それ以来働かされ続けてるわけか。自殺も、人数が減ることも許されず生殖まで支配されて。一週間から数ヶ月単位でノルマを課され、達成しなければ食糧を減らされるか誰かが拷問をくらう。しかも精霊への魔力供給を止めるという脅し付き。なんとえげつない真似を……つーかあいつらそんな大昔から魔力を扱えてたのかよ。魔法使いでもないだろうに……
ちなみに、今でもコーちゃんやカムイの食事には私やアレクが魔力を込めている。込めなくても喜んで飲み食いするが、やはりあるとないとでは違うらしい。魔力供給か……
長老が最後に外に出たのはおよそ百年前。長老ったら食材の変化でカウントしているらしい。季節の野菜とか肉の味とかで。すげえな……
百年前までは数年に一度ぐらいは外に出ることもあったらしい。もちろん全員ではなく腕のいいドワーフが十数人だけ。
話を聞いて分かったのが、シュガーバのいたカラバ領で見た巨大な炉。あれを作ったのもドワーフらしい。溶鉱炉は溶鉱炉だけどミスリルを溶かしたり精錬したりするための炉らしい。ミスリルを溶かすような超高熱はどこからどうやって発生させてんだよ……
しかも百年前にそんなもん作ったって……ドワーフの技術すごすぎだろ。
なおドワーフは魔力のことを魔と呼ぶらしい。マナを使えば加工や精錬もやりやすいらしいが百年ぐらい前から回復速度がかなり下がったとか。そのため一時は仕事の能率がかなり落ち、ただでさえ厳しい待遇が最悪になったとか。だから技術でカバーするようになり結果的には腕が上がったというのは皮肉だろうか。
なお、全回復するのに一ヶ月どころか数ヶ月かかることもあるらしい。原因は長老にも正確には分からないが予想はつくらしい。
「ごほ、神々の怒りに触れたからだろうて……」
「え? でもこっちの大陸って神いなくない?」
「だからいなくなってしまわれたのだ。ごほ、おそらくだがの……」
はぁー、そんなこともあるのか。
「魔が回復しなくなり、鍛治と武器の神ケルニャータ様のお声も聞けなくなった。我らドワーフをお見捨てになられたとは思いたくはないが……この地に愛想を尽かされたのだろうて……奴らは精霊を閉じ込めるなどという大罪を犯したのだから……」
ケルニャータだと!? それって同じじゃん。やっぱ神は実在するだけあって民族問わず世界共通か。ヒイズルにも土と豊穣の神デメテーラがいたもんな。
てことはローランドやヒイズルの大気中に普通に存在する魔力って神の恩恵だったのか……それは知らなかったぞ。もっと空気みたいに自然に存在するもんだと思ってたわ……だからこっちの大陸では魔力が回復しないってことか。それでもほんの少しだけ回復する理由は他の大陸や海からわずかに漏れた神のおこぼれって感じ?
「大罪って割にはあいつらに天罰なんかは下ってないんだよね? なぜだと思う?」
まあローランドでも天罰くらったなんて話は聞いたことないが。
「おそらく神々は人間に干渉することをあまり好まれないのであろう。大気に魔が満ちることも神々からすれば漏れた吐息程度のものだろうて。神々の息吹が届かないなら大気に魔が満ちぬことも道理となるの」
うーん、そういうものなのか。ヒイズルでは年に一回絡んでるようだが……
それにしても大気中の魔力かぁ……あ、それならあれはどうなんだ?
「地下に超長いトンネルがあるの知ってる? 砂が洪水みたいに流れるやつ。あそこの砂って魔力を多く含んでるじゃん?」
じゃん? とは言ったけど知ってんだろうか。
「ごほ、大動道脈のことか、よく知っておったな。そうか、あそこは今でも魔が満ちておるか……」
あれ? 商王は違う名前で呼んでなかったっけ? たしか深魔大隧道とかってさ。
「まさか、あれを作ったのもドワーフだったりするの?」
「ごほほ、そのように聞いておる。我らの遠い祖先が精霊様のお力を借りて作ったとの」
マジかよ、ドワーフとんでもないぞ……
「ちなみに何のために? 砂が勝手に動いて危なかったんだからな?」
「魔を循環させるためだ。ごほ、あれは確か数ヶ所の砂漠を繋いでいたはずだ。我らの故郷セティアン砂漠もその一つだの」
あそこか。よくあんな所に住めるな……紅蓮獅子だって出るのに。
「あれって勝手に動いてるみたいだけど、もしかして魔力が切れたら止まるってこと?」
しかも私があちこち壊したしね。そこんとこは黙っておくけど。
「おそらくの。だがあれは大気ではなく地中から魔を集めるものでもあるからの。今でも動いておるところを見ると地中深くには今少し魔が残っておるようだの。ありがたいことだのぉ……」
ほえぇ……よく分からないがすごいことになってんな……
「あと聞いておきたいのは、精霊はどこに囚われてそうかってことかな。目星ってついてる?」
他にも聞くことはいくらでもありそうだけど、やっぱ本命はこれだよな。コーちゃんも同じ所にいそうだし。
「ごほ、まったく分からぬ。分からぬがこの地底にはおそらくおられぬだろう……」
「それはまたどうして?」
「分からぬからよ。もし我らと同じく地中のどこかにおられたのならば、わずかなりとも感じ取れてもおかしくない。ごほ、それがこの二百年間で一度も存在を感じ取れたことがない……つまりどこか遠くに連れ去られたか、よほど強固な何かに囚われてるか、またはその両方だろうの……」
その二択ならたぶん……
「たぶん強固な何かだろうね。うちの精霊が捕まったのがついさっきだから。遠くに連れ去る時間はないと思うんだよね。」
「な、なんと……そちらも精霊様を……だから我らを助けてくれるというわけか……」
「まあね。とってもかわいい大地の精霊さ。」
発端は違うけどね。こう言った方が信じやすいだろ? 助けるのは確定なんだからゴタゴタすると面倒なだけだもんな。
さあ、ここからはもう少し具体的な話をしようか。のんびりお喋りできる時間があとどれだけ残ってるか分からないが……




