428、ドワーフの者共
あ、そういえばさっきのおじさんの質問はどういう意図だったんだろ? お前は人間だろう? ってさ。ただの確認とは思えないが……まあいいや。後で聞こう。もう着いたし。
「みんな! 聞いてくれ! 人間が来たぞ!」
おじさんことバルダが大声で呼びかける。そこにいるのは大勢のドワーフ。建物なんてない。地べたに座り込み、虚ろな目で何かを食べている。バルダの声に反応はしているのに。
「ビルギル! ブラン! ベルク! しっかりしろ! 人間が来てるんだぞ!」
あ、めっちゃ叩いてる。やっぱ刺激が必要なのか。普段の会話ってどうしてんだろ……
「あぁん? ……バルダ? んだそいつらは……」
「……バルダっていなくなったんじゃなかったか?」
「……にん……げん?」
「おお! 人間だ! 我らを助けたいんだとよ! 本当に人間なのか怪しいけどな!」
「人間が我らを助ける……だと?」
「ほんとにバルダかよ……」
「……にん……げん……」
それからバルダは他のドワーフ達を片っ端から叩いていった。その場にいる者を分け隔てなく。
こんな地の底で働かされてさ……そりゃあ心も壊れるよな。いや、完全に壊れたわけじゃないのか。叩けば治るみたいだし。お互いそうやって刺激を与えることが大事なのかねぇ。
「ふぅー、目は覚めたか!? こっち見ろ! 人間が来てるぞ!」
「にんげん? それって何だっけ?」
「細いな。あれじゃあ何も作れねえだろ」
「ありゃあ雌か? 人間にしちゃあいい肉付きしてるな」
「ちっ、クソ人間が何しに来やがった!?」
「殺してやろうぜ! 許せねえな!」
「そうだろバルダ! こんな奴ら連れてきてどうするってんだ!」
「助けるとか言ってなかった?」
「無理だろ。人間ごときに」
「人間の考えることなんか分かるものか」
急にわいわいと騒がしくなった。よく聞こえないが目つき的に……歓迎二割、無視三割、残り五割は敵視って感じだろうか。文句があるなら帰るぞ? お前らを助ける義理なんて本当はないんだからな?
「なあバルダ、とりあえずリーダー、というか代表と話したいんだけど。誰?」
見た目だとみんな同じに見えるからな。
「ああ、長老だ。あっちにいる。付いてこい」
「待てやバルダ! お前人間を長老の前に連れてく気かよ!?」
「いきなり出ていくし何考えてやがんだよ!」
「お前人間に媚び売って何か見返りでもあんのか!?」
ドワーフにもチンピラっているんだなぁ。
「どうするんだ? こっちは無理してお前らを助ける気はないからな。帰れってんなら帰るぞ?」
コーちゃんは私達だけでも助けられるさ。
「すまんなカース。さすがに突然すぎるな。長老には我から話してみる。少しだけ待っていてもらえんか?」
「いいよ。少しだけな。」
まったくもう。大人しく助けられてればいいのに。そもそもそれ以前に情報交換とかしたかったのに。そりゃあ二百年に渡って先祖代々奴隷にされてきたわけだから人間を恨むのも当然とは思うよ? だからって必死にお願いしてまで助ける気はないからね。助けて欲しいならそう言えって話だよ。
バルダがこの場を離れるとチンピラドワーフが近寄ってきた。
「よおクソ人間んん? よくもまあ我らの前に顔ぉ出せたもんだなぁ?」
「ひょっろい腕しやがってなぁ。簡単に折れちまうぞぉ?」
「今なら見逃してやらからよ。さっさと消えちまいな。上の奴らが送り込んできた間者ではなさそうだしな」
ふーん、ドワーフにも色んなタイプがいるってことかな。物語のドワーフだと単純で豪快って気がするけど、長年奴隷暮らしをしてんだし歪むのも当たり前だよなぁ……
「とりあえずさ、長老の判断を待ったらどうだ? お前ら一族の未来がかかってんだぞ? 運が良ければここから出れるかも知れないんだしさ。」
「そんな言葉に騙されるわけねえだろぉ!」
「ひょろい人間は言葉まで薄っぺらいからなあ?」
「お前に何の得がある?」
待てって言ってんのに……
「すまぬ……ドワーフの皆よ。悪いのはわし、わしらの一族なのだ……カース殿は本当に皆を救おうとしている……わしはどうなってもいい。だからカース殿の話を聞いてはくれまいか……」
じいちゃん……地べたに片膝突いて頭を下げてる……じいちゃんには何の責任もないのに。むしろじいちゃんこそがドワーフを救おうとしてる張本人なのに。
どうしたもんかなぁ……気になる点はいくつもあるが、とりあえずは長老待ちか。




