427、ドワーフ
むさ苦しい小柄のムキムキおっさんが私のウエストコートやトラウザーズに触れまくっている。防汚の効果が付いてるから問題ないんだけどさ。なんか鼻息まで荒くなってない? ふしゅーふしゅーってさぁ……
「……人間よ、お前は人間なんだろう?」
こいつ何言ってんの? 私もアレクも人間に決まってんだろ。見れば分かるだろ。さっきから全然会話にならないし……
「当たり前だろ。それともおじさんは人間じゃないとでも言うのかい?」
「それこそ当たり前だ。我らはドワーフ、土とともに生きる存在だからな」
はああああ!? ドワーフ!?
「えっ!? ドワーフ……って何!? マジで!?」
「ドワーフ?」
「ひょっ!?」
「なんですと……」
「ガウガウ」
言われて思い出した。そういやヒイズルでドロガーか誰かが南の大陸にはドワーフってのがいるって言ってたわ。あいつら何でそんなこと知ってたんだろ。
「見れば分かるだろう。何かと言われても知らん。我らは我らだからな」
「そ、そうなんだ……じゃ、じゃあさ、なぜ奴隷なんかやってんの? 反抗とか脱出とかしないの?」
大まかな事情は分かるけど一応聞いておこう。
「……できるはずがなかろう……」
またトーンダウンしちゃったよ……
「精霊が捕まってるんだよね? 助けに行ったりしないの?」
「……知っておったか……できるものならとっくにやっておるさ……」
まあ、そりゃそうだよね。
「とりあえず詳しく話を聞かせてよ。二百年以上も奴隷をやらされてるなんてちょっと酷すぎるよね。」
「……そうだな。皆に紹介しよう……こっちだ」
のそのそと歩きだした。さっきまで元気だったのになぁ……やっぱ精霊って大事な存在なんだろうな。分かるよ。私やアレクにもコーちゃんがいるんだからさ。もちろんカムイもね。
「それにしても驚いたわ。ドワーフって存在は噂にしか聞いたことがなかったもの。でも、確かに噂通りの容貌なのね。」
「そうだね。まさかこんな所で出会うなんてさ。びっくりだよね。」
「なんだお前たち、我らのことを知っておったのか。我ら以外のドワーフ族とどこぞで会ったのか?」
あぁ、ここの一族以外にもドワーフっているんだろうなぁ。
「いや、噂で聞いたことがある程度だよ。南の大陸にはドワーフってのがいる。鍛冶が得意で大酒飲みだってさ。あ、南の大陸ってここのことね。」
「ふ……大酒飲みか。我は生まれてこの方飲んだことすらないがな……」
あ……こんな地底だと飲みようがないわな。原料もなければ密造酒ってわけにもいかないだろうし。ん? 生まれてこの方?
「そういえばおじさんって何歳なの?」
「……さあな……ここには自分の歳を知ってる者などほぼおらん。日々の食糧から大まかに年月の移り変わりを推測するのみだからな……」
マジかよ……酷すぎるだろ……マジで日の目を見れない生活じゃん。
「それより我の名はバルダーボールドビンだ。バルダと呼ばれている。オジサンではない」
「ああごめんごめん。バルダだね。ならこっちも改めて、俺はカース・マーティン。カースって呼んでよ。」
意外と若いんだろうか? でも歳は分からないって言うしなぁ。
「アレクサンドリーネよ。好きに呼んでいいわ。」
「おっと、彼女のことはお嬢様と呼んでくれよ。」
「もうっ、カースったら……」
ここは譲れないね。
「うむ、カースにオジョーサマだな。お前の番か? 人間の雌は細いのばかりと聞いたがオジョーサマは豊かな胸をしているではないか」
「でも腰回りは細いからな?」
こいつの言い方って家畜の肉付きを褒めてる感じなんだよね。エルフは人間を虫程度にしか思ってないようだが、ドワーフ的には家畜や獣とでも思ってるんだろうか。
「そろそろだ。きっとみんな驚くだろう」
着いたか。魔力反応的には百人ぐらいいるんだったな。まさかドワーフとはね……




