426、第一地底人発見
向こうも私達に気づいたようだ。が、特に反応がない。こちらを一瞥しただけで作業を続けている。何してんだ? もしかして岩盤を掘ってるのか? 子供まで働かされてるのかよ……もう少し近づいてみよう。どうせルート上なんだし。
んん? あいつ本当に子供か? 背が低いだけで筋骨隆々じゃん。しかも髪も髭もボーボーだし。切るか剃るかすればいいのに……いや、無理なのか。上半身だって裸なぐらいだし、よほど抑圧されてるんだろうな……
「やあこんにちは。突然ごめんね。俺はカースって者だけど、今それ何やってんの?」
やはりこちらを一瞥するが返事はない。黙々とノミにハンマーを打ち下ろしている。うーん、無視しないで欲しいなぁ。助ける気がなくなったらどうするんだよ。
「ねえカース、もしかしたら喋れないんじゃないかしら?」
「あ、そっか。」
そりゃそうかも。もっとも、本当に喋れないんだとしたら、何かジェスチャーで挨拶してくるはずだ。アレクったら見ず知らずの奴隷をフォローしてあげるなんて優しいね。
だから一応確認しておこう。
『解呪』
うん、何も反応なし。首輪こそ着けているものの何の反応もない。ただの首輪みたいだし契約魔法の類もかけられてない。じゃあなぜ喋らないんだ?
ならば別アプローチ。岩盤砕きを手伝って好感度を上げようプロジェクトなんてどうだろう?
虎徹を取り出して、構える。ホームランを狙うつもりで。そしてフルスイング。あらら、破片が酷いことになってしまった。あー、ごめんごめん。少しばかり怪我させてしまったね。避けようともしないんだもん。ちょっと待ってね。ポーション飲ませてあげるから。
「な……本物……?」
おお、やっと喋った。刺激が大事ってことだったのか?
「本物ってどういうこと? 本物の魔王かと言われたら違うけど。」
魔王ジョーク。笑ってくれるのはアレクだけ……
「とりあえずこれ飲んでよ。いきなり悪かったね。」
「……なぜだ?」
「なぜって? 怪我させちゃったじゃん。これ飲んだら治るよ。まずいけど我慢して飲んでね。」
「……お前、お前らは人間か?」
会話しようぜ……
「当たり前じゃん。もちろんこっちの狼ちゃんは違うけどさ。」
きっと長いこと地下で暮らしてるから自分ら以外の人間が珍しいんだろうなぁ。それともここ幽霊でも出るのか?
「そうか……人間か。何しに……来た?」
「助けに来たんだけど。おじさんも奴隷なの?」
実はお兄さんなのかも知れないがね。おばさんってことはないだろ。
「助けに……? 誰をだ?」
会話して欲しいなぁ……
「誰って、おじさん達だけど。自由になりたくないの? 外に出たくないなら別にいいけど。」
ここに来たのは私の勝手だからさぁ。そりゃあ無理に連れ出すなんてことはできないよ? できないけど、何だかなぁ……
「……だめだ、分からん……お前たちは幻でも何でもない、生きた人間で、それなのに我らを助けに来た、とでも言うのか……?」
分かってんじゃん。もしかして幻覚だと思ってたの? だから最初無視されてたってこと? 地下みたいに暗くて酸素濃度が低いところでは幻覚が見えやすいって聞いたことがあるような……だからか? でもここは明るいし空気も別段変わった感じはないんだよなぁ。
「そうだよ。生きた人間だよ。足もあるし。外に出たいんなら助けるよ。もちろん全員ね。」
「……分かった。幻ではないんだな。それよりそっちの木を見せてくれ……岩を砕いただろう」
木って……木刀だよ。こんな時に興味を示すようなもんじゃないと思うが……
「これ? ただの木刀だよ?」
ただの、ではないか。山岳地帯で出会ったエルダーエボニーエンツォ材を化け物ハイエルフが加工してくれた逸品だからね。
「これは素晴らしい。なんと濃密な魔の香り、みっちりと詰まった大地の恵み、それを削り出す技量も素晴らしい。人間もやるものだな」
いきなり流暢になった。面白いおじさんだな。なお、削ってくれたのは人間じゃないけどね。
「それよりどうする? 助けたいんだけど。大勢いるんだよね? とりあえず場所を変えない?」
「いや待て! お前なんだその服は! 一体何でできている!? 見せてもらうぞ!」
「別にいいけど……」
汗や汚れで臭いおっさんが私の装備をガン見している。至近距離で。それどころかあちこち触ったりつついたり、押したり叩いたり。あ、くんくんと匂いまで嗅いでるし。
ある意味見る目があるってことなんだろうか……うーん……




