422、焦るカース
意外と分厚い床板の下は立坑って感じだった。広さは一辺が一メイル程度の正方形か。全員で降りるには狭いな。それにしてもエレベーターですらないとは……どんな仕組みで商王は降りていったんだ?
「僕が先に降りるからアレクは最後で頼むね。」
「ええ。大丈夫よ。」
なんせ一人ずつ飛び降りることになるからね。じいちゃんとマックレスに『浮身』を使ってやらねばならない。あれ? 何か忘れてるような……
まあいいや。まずは私から……
『光源』
明るくしてから……飛び降りる。
『浮身』
たいして高くないな。浮身なしでも足の骨折ぐらいで済むかな? いや、たまたま商王が座ってたソファーがあったし無傷で済むだろうな。それよりあの野郎どこに逃げやがった? 動きが早すぎないか?
マックレスがゆっくりと降りてきた。
「お前マブで正気じゃねえだろ……商王様に睨まれてよぉ……オレはどうすりゃいいんだよ……」
おっ、いつものマックレスだ。
「落ち着いたら稼げる所に連れてってやるよ。」
「絶対だからな? 安全に稼がせろよ?」
「腕次第に決まってんだろ。おっと、おじさんだ。」
「歌えるのならばどこへなりとも行こうではありませんか」
無理に吟遊詩人モードにならなくてもいいだろうに……
「ひょっ、おおっ……ふぅー……寿命が縮まったでの……」
「おじさんは長生きするから大丈夫だって。あ、そうだ。二人ともここをよく見て。ここだよ。」
「はて? 床にしか見えませんが?」
「ひょお……わしもそう思う。まさかここからも下に降りる何かがあるのかの?」
よし、もういい。大した意味はない。ただ……
「お待たせ。さ、商王を追いかけるわよ。」
ドレス姿で上から降ってくるアレクから目を逸らさせるためなのさ。ゆっくりだからスカートがめくれ上がるなんてこともないけど。ちょっと生の足首やふくらはぎが見える程度だ。それでも一応、ね?
さて、問題はどこから探すかなんだよなぁ……とりあえず一つしかない扉から出てみよう。
『魔力探査』
だめか。理由は分からないが何の反応もない。となりにいるアレクの反応がせいぜい、カムイの反応すら分からないじゃないか。内装がやたらメタリックなせいか? ミスリルに魔力を遮断するような性質はなかったはずだが……あっ!
いきなり反応あり! たぶんカムイだ! いきなり魔力が膨れ上がったところを見ると『魔声』を使いやがったな? わずかに声も聞こえたし。きっと私が困ってることに気づいたんだろう。よくできた召喚獣、いや友達だわ。
「行くよ! こっち!」
「ええ!」
「さあカーサ様、私が手をお引きします」
「ひょおぉ……かたじけないのマックレス殿……」
おっと、そうだそうだ。じいちゃんを走らせるわけにはいかないな。
「これに乗って。」
ミスリルボードを駆るには狭いからな。適当な板を出した。
『風壁』
『浮身』
『風操』
さあ、かっ飛ぶぜ!
いた! カムイだ!
「ガウガウ」
おっ、こっちか。私達が来た道じゃん。どうやら二手に分かれた意味はなかったか……いや、カムイがこっちから追い込んだおかげかも知れないしね。
「いたぞ! 捕まえろ!」
「商王様に仇なす不逞の輩だ!」
「殺すなよ! 女は無傷で捕えよ!」
普通の騎士どもか。
『高波』
室内で使う魔法じゃないけど知ったことか。騎士以外を巻き込みたくはないがコーちゃんを閉じ込めた罪は連帯責任だ。
「か、カース殿……それはさすがに……地下におるらしい奴隷の一族に影響があるやも知れんから、の……」
「あ……そうだったね。ごめんごめん。」
『高波解除』
半分も解除できなかったけど、まあ堪えてもらおう。
「ガウガウ」
商王の匂いが消えた? ぎゃああああーー! 私のバカバカバカ! コーちゃんが心配なあまりつい後先考えずに……
すまんカムイ、分かる限りでいいから頼む……
「ガウガウ」
世話が焼けるって? はは、面目ない。




