420、囚われの精霊
奴隷の一族の弱みと帰ってこないコーちゃんに共通点があるだと? 分かるわけないだろ……だいたいこいつらコーちゃんの正体すら分かってないだろ。ただの白くて愛らしい蛇ちゃんじゃないんだぞ? ちょっとお酒とお薬が大好きで際限なく嗜むことはあるけどさ。
「難しいことを言われても分かりませんな。まさか大酒飲みってところが共通点なわけないでしょうしね。」
だいたい奴隷の身分じゃあ酒なんか飲めないだろ。ローランド王国と違って虐げられてそうなイメージだし。
「くくく、そうか。あの白蛇は大酒飲みか。面白い偶然もあるものよ。あやつらも大酒飲みだと聞いたことがあるぞ? 実際に飲んでいるかどうかは知らんがの?」
奴隷の一族は大酒飲み? なら週に一度ぐらい飲ませてやれよ。
「で、正解は何なんですか?」
「あの白蛇の正体だが、精霊であろう? ワタシの目をごまかせると思うなよ?」
なっ……
「くくく、沈黙は肯定と見なすぞ。そんな精霊が帰ってこない、帰ってこれない理由だが単純なことよ。まだ分からぬか?」
「この国には神がいないだろ……それなのに精霊の存在は知ってるのかよ……」
もう敬語はやめだ。こいつの挑発に乗ってやるよ……
「神はいるぞ? バンツーという便利な神がの。そして精霊だったな。もちろん知っているとも。奇しくもキサマが言った通りだな。幸運をもたらすとの?」
「コーちゃん以外にも精霊がいるってのか?」
「まだ気づかんのか? 察しが悪い男だの。キサマは砂頭野郎か? よおく考えてみるがいい。あやつらの弱みと白蛇が帰ってこない理由は同じなのだぞ? 共通点どころではないがの?」
ま、まさか……この外道……
「奴隷の一族には……大事な精霊がいる……俺らから見たコーちゃんのように……そして商王、お前らは精霊を閉じ込める方法を持っている……ってことか! そうやって精霊を人質にとり、奴隷の一族を支配してるってことか!?」
嘘だろ? 精霊を閉じ込めるだと? そんなの私でも不可能だぞ……たぶんエルフでも無理じゃないか? 化け物ハイエルフ村長ならできそうな気もするが……
「くくく、やっと分かったか。ならばわざわざここまで説明した理由も分かっておろう? んー、頭が高いのではないか?」
『狙撃』
こいつは殺す……
「よぉく分かった。仮にコーちゃんを捕らえて閉じ込めることができたとしよう。だが、それで人質にできたと思うなよ? お前らごときにコーちゃんは殺せない。閉じ込めるだけで精一杯だろうさ? 今のは警告だ。今から一時間以内にコーちゃんを返さなければ、この城を更地にしてやるからな……」
商王の前に置かれたコーヒーカップを撃ち抜いた。カップを割らずに穴を空けただけ。漏れ出たコーヒーの香りがいい感じなのが気に触る……
「ほう? 威勢がいいの。あの蛇、いや精霊の命などいらんとほざくか。だが心配するな。殺す気など微塵もないぞ? あの精霊には今後とも末永く働いてもらうからの。さて、それはそうと我が光銀城を更地にするとかぬかしおったな? ならば王家反逆罪で一族郎党全員火炙りだの。美しいご令嬢まで火炙りとは心が痛むがの?」
『狙撃』
「ぎゃびぉっ!?」
「くくく、無駄だ。何をしたか知らぬがワタシに攻撃など当たるはずがなかろう。可哀想に親衛騎士は怪我をしたようだがの。さて、大逆罪まで重ねおったな? こうなると引き回しの上で石打ちからの火炙り、ただし弱火でじっくりとの。護衛のせいで命を散らすとは哀れな令嬢もいたものよの?」
自在反射……って感じではなかったな。自動防御の魔道具がやけに丈夫ってことか。
「あら、商王様? なにか勘違いされておられませんか?」
おっ、アレクどうした?
「どうしたアレクサンドリーネ嬢よ。ワタシは本当はソナタと話したかったのだがの?」
ダウト。アレクの挨拶を無視したくせに。
「カースがやることに間違いなどございませんわよ? 例えその結果が火炙りだろうとも。もっとも、カースが護衛にいる限り私が命を散らすことなどあり得ないわけですが。」
「くくく、大した信頼ではないか。それで、どうしてくれると言うのだ?」
「どうかするのはそちらですわ? カースは『一時間以内』と言ったはずですもの。よろしいのですか? あまり時間がないと思いますが。」
「ほう? 護衛が護衛なら主も主か。どちらも現実が見えておらぬようだな。精霊の命はいらぬということだの? それならば仕方ない。会談はここまで、これからは説教の時間とするか。お前たち! こやつらを拘束せよ! 大逆罪だ!」
「はっ!」
「かしこまりました!」
「度重なる暴言! 覚悟せよ!」
騎士どもが全員剣を抜いた。ふぅん……




