403、親衛騎士団のグリーマ
挑発に乗ってやってもいいが……
「怪しげな術と言ったな。じゃあお前は魔道具を持たずに戦えるのか?」
どうせ自動防御みたいな魔道具を持ってんだろ? じいちゃんですら持ってたんだからさ。
「ほう? 知っていたか。いかにも我ら王族は王族に相応しい魔道具を持っている。それも生まれ持った我らの力だからな。キサマらの下賤なまやかしと一緒にするなよ?」
何言ってんだこいつ……自分はよくて人はだめってか。ダブスタってやつか。だめな王族だねぇ。
「分かった。じゃあお前は魔道具ありでいい。俺は木刀しか使わないから。あぁ、もちろんお前は剣でも槍でも好きに使っていいからな。」
たまには棍じゃなくて木刀も使わないとね。エルダーエボニーエンツォ製の『虎徹』をさ。
「ほう? 大きく出たものよ。そんなに女の前でいい格好をしたいのか。護衛がそれでは女の方もお里が知れるというものよな。では相手をしてやろう。ついて参れ」
「お嬢様はこちらでお待ちくださいね。まだ食事も途中ですし。」
「ええ、分かったわ。さっさと片付けて戻ってくるのよ?」
「お任せください。」
ふふ、なんて自然な演技なんだ。さすがはアレク。カムイ、アレクを頼むぞ?
「ガウガウ」
本当なバラけない方がいい気もするんだけどなぁ。カムイがいることだし大丈夫だよな。
歩くこと十分。とある一室に入った。訓練場と言うにはきれいすぎるな。内部にはトレーニング器具など一切置いてない。それどころか家具も何もない。窓もない上に埃一つも落ちてないだろう。
「跪いて慈悲を乞うなら今のうちだぞ?」
「ん? ただの腕試しじゃないのか? もしかして決闘のつもりだったりするのか?」
決闘だと言うなら本気でやってやるがね。
「ふっ、下民を相手に決闘などするはずがないだろう? 高貴な者にのみ許された名誉ある決闘を何だと思っている。これはキサマの腕を試してやるだけのことだ。大口を叩くだけの実力があるかどうかをな?」
どんだけ上から目線なんだよ。めんどくさい奴だなぁ。ここでは決闘ってそんな扱いなのな。
「分かった分かった。相手してやるからかかってこい。」
「ん? キサマ何を勘違いしている? キサマごとき下民をオレが相手などするはずがないだろう? キサマの相手は、あやつだ」
勘違いも何もこいつの口ぶりは自分がやる感じ出しまくってただろ。まあ、別にいいけどね。同じ部屋にいる以上流れ弾が当たるってのはよくあることだしね。
で、あいつか。部屋の奥の扉が開いたと思えば出てきたのは二メイルはあろうかという大柄の騎士。こんな室内でフルプレートかよ。暑苦しいだろうに大変だねぇ。
「あいつをぶっ倒したら次はお前か?」
「ふっ、倒せたらな? よいかグリーマ! こやつは王族への礼儀も知らぬ蛮族だ! 徹底的に打ちのめしてやれい!」
「御意」
言ってくれるねぇ。お前こそ他国の貴族への礼儀を知らんじゃないか。
「おい下民、忠告しておいてやる。あやつはグリーマと言ってな。オレの親衛騎士団の中でも随一の使い手だ。死にたくなければ早めに降参するんだな」
何の参考にもならねぇ……
「いいからさっさとかかってこい。大きい体をガチガチに固めれば勝てるってもんじゃないって教えてやるよ。」
むしろ室内で戦うのにフルプレートは不利だと思うがね。どう考えても動きにくいだろ。
「やれいグリーマ! この礼儀知らずを叩きのめしてやれい!」
「御意」
ほぉ、ハルバードか。切れ味も破壊力もありそうじゃん。まともに受けたら斬られることはなくても骨が折れそうだなぁ。まっ、問題ないだろう。
「参る」
律儀な奴なのね。
「来い。」
来ない……
ハルバードを構えてはいるがかかってくる気配さえない。やる気あんのかこいつさぁ。
むっ!? 速い……
「ぐへっ。」
一瞬で間合いを詰めてきやがった。そこからの横薙ぎ、虎徹で迎え打ったものの吹っ飛ばされてしまった……さすがに体重差は歴然だもんな。
だが……
「なっ……!?」
ふふ。刃こぼれしてるね。
そのハルバード、おそらくそれなりの業物だろうが、相手が悪かったな。この木刀はノワールフォレストの森で最強クラスの魔物、エルダーエボニーエンツォ製だぜ? イグドラシルには及ばないにしてもかなり無敵なんだぜ?
さあ、次いってみようか。




