402、若き王族
マックレスが三曲目を歌おうとした時に、ドアをノックする音がやけに響いた。ついにお呼びか? もう夕方だってのにさ。
「失礼いたします。夕食の準備ができました。どうぞ皆様こちらにお願いいたします」
あぁ、そりゃそうか。飯ぐらい出すわな。性懲りもなくまた毒入りか?
案内された部屋のテーブルにはすでに料理が並べられていた。旅館システムかよ。ここ王宮だろ? 普通着席してから配膳するもんじゃないの? しかも四人分だと? カムイの分がないじゃないか。家族だと伝えたはずなんだけどなぁ。
「すまないな。一人前追加してもらえるかい? うちの狼ちゃんは俺達と同じものを食べるもんでな。」
本当はコーちゃんの分も欲しいところだが、いつ戻ってきてくれるか分からないからな。
「申し訳ありませんができかねます。ただしペット用ということであるなら用意はしてございます」
なんだかなぁ。そりゃあ先に言っておかなかった私が悪いんだけどさぁ? どうも対応がマニュアル通りなんだよなぁ。それってこの王宮の仕事がシステマチックに運営できてるとも言えるよな。ただ単に私達に嫌がらせしてるだけかも知れないけどさ。
とりあえずツーアウト。
「分かったよ。それなら何もなくていい。いきなり悪かったね。」
「承知いたしました。それでは失礼いたします」
カムイには魔力庫から何か肉を出してやろう。生でいいよね?
「ガウガウ」
海の魔物がいいって? すまんな。それはだめだ。なんせ大きいからさ。ここに出すわけにはいかないだろ? 今さらな気もするが手の内は隠すに限るからね。
というわけでこれにしようか。クタナツギルド名物何かの干し肉。
「ガウガウ」
仕方ないから我慢しておいてやるって? おやつ程度にはなるだろ。海の魔物はまた後でな。
では、こっちも食べるとしよう。
『解毒』
味気ない夕食になりそうだな。スリーアウトか?
ん? 外が騒がしいぞ? サプライズで商王でも来やがったか?
「ここか。」
激しく扉が開いたかと思えば、現れたのは若い男だった。私より少し歳上かな? 服装は上等そうな生地でできているところを見ると……王族か? 商王の縁者かな?
「ひょお? もしやそなた……キーロかの? なんと大きくなったものだの」
おっ、知ってる相手か?
「王族の恥晒しが誰の名を呼び捨てにしておるか。このようなよそ者どもにいいように取り込まれおって。だが、餌としての役目は存分に果たしたようだな。そこの女、尊き血筋らしいな。光銀城へよくぞ参った。近う寄れ」
何だこいつ? なんかムカつくなぁ。じいちゃんを舐めくさってるし。しかも顔を出したのはアレクが目的かよ。スケベ野郎が。
「悪いな。うちのお嬢様は名乗りもしない礼儀知らずと交わす言葉を持っていない。会話したかったら自分から近づいて自己紹介から始めるべきだな。」
「何だキサマ? このお方をどなたと思っておるか!」
「下民めが! その口を引き裂かれぬうちにさっさと消え失せろ!」
両サイドのごっつい護衛が口を開いた。おいおい。私達は客だぞ? まあ、無理やり押しかけたわけだけどさ。
「主人が偉いと護衛まで偉いのか? だったら俺も偉いってことになるな。こちらのお嬢様の護衛頭なんだからさ。」
いや、護衛隊長だったっけ? 適当に名乗ったせいで忘れてしまったよ。シュガーバは下僕頭だったよな?
「ほう? キサマこそたかだか護衛の分際で大きな口を叩くものよ。それほどまでに腕に覚えがあると言うのだな? ならば、その根拠を示してもらおうか。よもや嫌とは言うまいな?」
「その前にお前は誰なんだよ。お嬢様に懸想したのか知らないが礼儀知らずはモテないぜ?」
「このっ! なんという無礼な口を! もう許せん!」
「この場で成敗してくれる!」
細い剣を抜いたかと思えば斬りかかってきた。スリーアウト確定だな。
『金操』
「ぐぎゃおっ、おま、なにを……」
「ぐぐがっ、おまえ、こそ、なにを……」
お互いの大腿部を刺させてやった。胸じゃないだけ優しいだろ。
「ふっ、何やら怪しい術を使うとはこのことか。それが自信の源というわけだな。よおく分かったぞ。だがそれは所詮は術でしかない。己の肉体をもって戦えぬ弱さの裏返しとも言える。違うか?」
いちいち話が長い野郎だな。それで挑発してるつもりか?
別に乗ってやってもいいが……さあ、どうしようか……




