112、喉元の村マゴグワロ
ふう。いい目覚めだ。今日からはしばらく海岸沿いを歩くんだったな。アレクと腕を組んでるんるんとさ。
こうして右に海を見ながら歩き続けること数日。進行方向の右前方に海を隔てて陸地が見えてきた。あれは島なのか半島なのか、地形がいまいちどうなってるのか分からない……
「お前らここで少し待ってろ。」
「んお? お、おお」
『浮身』
旅のお楽しみが減るから積極的にはやらないんだけど、気になるものは気になるからね。
アレクと一緒にボードで上空へ。この辺りの地形が把握できるまで高く。
なるほど……だいたい分かったぞ。ヤリマダ半島は左を向いた鳥だと思っていたが、実際は左を向いた犬って感じかな? 鼻が長くて顎が突き出たさ。いや、むしろ鼻と顎の長いスフィンクスって感じもするなぁ。私達がさっきまで歩いてた場所は顎の下辺りか。コナクライを喉元だと思っていたが、実際には今から行く場所の方が喉に相応しいかな。てことはさっき右前方に見えた対岸は首にあたるわけか。
「ここまで来ておいて今思い出したよ。」
「何をかしら?」
「この辺ってこの前通った気がする。あの時はもっと低いところを飛んでたしボードに一人で座ってたもんだから下をあまり見てなかったんだよね。」
「カースらしいわね。カースはそんな細かいことなんか気にしなくていいもの。それなのにガスパールさん達のために地形を把握しておこうとするなんて素敵よ。それが上に立つ者の務めだものね。」
そんなわけあるかよ……アレクったらもう。
「偶然だよ。ちょっと気になっただけ。ちなみにシュガーバのカラバはあっちだよ。」
ここから南東ってとこだね。
「そこも楽しみね。さしあたってはアッシリの村ね。山登りが大変そうだけど、それも楽しみだわ。」
「だよね。僕らにとっては山登りなんて慣れたものだしね。」
山岳地帯でも歩きまくったもんなぁ。実はもうスティード君に匹敵するほど強靭な足腰を手に入れてたりしないだろうか? 私もアレクも。
地上に降りて出発進行。右に海、左に森や山しか見えない街道をひたすら歩く。
思えば、初等学校の頃の鍛錬遠足は地獄だったよなぁ……でも、明らかにあの時よりたくさん歩いているのに……るんるん気分だなんて、私達も成長したもんだよなぁ。感慨深いね。
「ここら辺って地名あるのか?」
「あー、マゴグワロだっけな。この先に村があるぞ。だいたいコナクライと同じぐらいの規模だな」
マゴグワロ……言いにくいなぁ。コナクライもそうだけどさぁ。
「その村はお前んとこの配下だったりするのか?」
「おうよ。一応カラバ領だな。ヤシの奴らもちょっかい出してくるけどな」
つくづくまとまりのない国だよなぁ。
「宿や食堂とかあるのか?」
「おお、あるな。でもあんま期待するなよ?」
するわけないだろ。コナクライと同じレベルの村なんだろ? それでも旅の醍醐味ってことで現地の食事にも興味あるわけよ。私達って持ち込みの食材が多いからさ。だから長旅をしても飢えることがないってのは最高だけどね。その分道中で食べる物は手の込んでない料理になりがちだからさ。なもんで現地の料理もたまには食べないとね。
「おう。まあ食えればいいさ。」
まずかったら残すけどね。
そして次の日の昼前。マゴグワロに到着した。シュガーバとアッシリは顔を見られるとまずいらしく村に入らないと言う。よって明日、村の南辺りで合流することにして私達だけで入ることにした。野良犬もそっちに同行させた。
カラバの感じからするとよそ者に当たりが強い気もするが何事も経験だからね。シュガーバからのアドバイスもあったし何とでもなるだろう。
正面から普通に入村。とくに門があるわけでもないしね。街道がそのまま村に続いてる感じかな。街道と言ってもやはり馬車が通れるほどの幅はないけど。これじゃあ他の地域を攻めようにも遅々として進まないよなぁ。精鋭を少人数で送り出すしかないってわけね。仲良くすればいいのに……
さて、見た感じこの村は盆地だろうか。ただし山に囲まれてるわけではなく、ほんの少しだけ高い台地に囲まれてるって感じかな。大雨が降ったら水没しない?
まずは、何か食べよう。メインストリート沿いにも数件あると聞いたが……
あった。看板は出てないが何やら食べ物の匂いがする。入ってみよう。




