113、マサウキ亭
ふぅ。思ったほどまずくはなかった。味の薄い穀物粥って感じ? あとは塊肉を丸ごと焼いて切り出したようなやつ。これまた味付けがない上にやたら固くて食いにくかったぞ。この辺には香辛料ないのか? カムイはそこそこ満足したらしいけど。
店内ではじろじろと見られたが特に絡まれることもなかった。さて、少し早いが今夜の宿を探しておくか。もっとも、三つしかないらしいけどさ。そのうち比較的いい宿ってのがマサウキ亭と言うらしい。
メインストリートを歩いていればすぐ分かるって聞いたが……
ここか? 他の建物より大きいと言うか丈夫そうと言うか。看板が出てるおかげで発見できたな。カラバでも思ったが、この国の文字ってローランド文字と似てるよな。漢字にあたる神代文字は見かけないけどさ。ひらがなにあたるローランド文字っぽい字で書いてあるので私にも読めるんだよな。
「なんだい?」
客が来たらいらっしゃいませだろうが。因業そうな顔したババアだなぁ。
「一泊頼む。二人と二匹だ。」
「人間も動物もおんなじだよ。一泊なら八十ルピだよ。晩飯が食いたけりゃあ一人五ルピだよ」
貨幣単位はルピだったか。シュガーバによると安宿で一人一泊五ルピぐらいだっけな。ここだと十ルピぐらいって話だが、ぼったくるにしては微妙な値段だな。
「一番いい部屋は空いてないのか?」
「あぁん? 二百ルピだよ。払えんのかい?」
一ルピが何イェンか分からないから高いか安いかイメージ湧かないんだよな。
「ほらよ。」
銅貨を二枚。たくさんゲットしたからね。普通の銅貨は一枚百ルピ。大銅貨だと千ルピ。それから小銅貨が十ルピに半銅貨が五十ルピ。大鉄貨が五ルピで鉄貨が一ルピだったな。大銅貨から宝貨までが飛びすぎな気もするが……間はないそうなんだよな。宝貨の小さいやつもあるにはあるらしいが、シュガーバは見たこともないそうだ。
「んまあ兄さんたら驚いたね! そんじゃ部屋に案内するさね。さあさこっちだよ」
いきなり愛想がよくなりやがった。これもあるあるか。
「さあここさね。湯が必要なら十ルピだからね。言っておくれね」
「風呂はないのか?」
「フロ? あるわけないさね。見ない服装だけど一体どこから来たってんだい。あたしゃ見たこともないさね」
見たことなくても風呂の存在は知ってるのね。
「ないならいいさ。夕食が必要ならまた声かけるわ。」
「言っとくけどここらで一番まともな料理出すのはうちだからね? 外で食べてもろくなもんありゃしないさね」
「はいよ。じゃ、後でな。」
このババアの言うことほど信じられんこともないよな。確かに外の食事はまずいかも知れないけどさ。だからってこの宿の料理が美味いかどうかなんて分かったもんじゃない。散歩でもしてコーちゃんやカムイの嗅覚に頼るとするかねぇ。
しかしなんだな……落ち着いて部屋を見てみると……四畳半ぐらいしかないんじゃない? そこにベッドが一つ置いてあるだけ。他に部屋も家具もなし。トイレは外かよ……これで一番いい部屋って、他はどんだけなんだよ……
ベッドも……固い。木にシーツをかけただけか? 布団も薄っぺらいシーツが一枚。これもう外で寝るのと変わらなくない? 虫や砂埃がないだけマシかも知れないけどさ……
『浄化』
部屋ごときれいにしてやった。ダニやノミがどれだけいるのか分かったもんじゃないからな。
『水壁』
ウォーターベッドだ。少し寝転がりたかったんだよね。食後だし。
私が横になるとアレクも横にピトリとくっついてくる。何かを期待する顔してるけど、横になったら少し眠くなってきたんだよなぁ……
あー、寝てた……
どのくらい寝たんだろ……まだ外は明るいな。せいぜい一、二時間ぐらいか? いつの間にやらシーツがかけられている。服は着たままか。
「起きたのね。何か飲む?」
「いやぁよく寝たよ。冷たいのをお願いできるかな。アレクはいつ起きたの?」
「三十分ぐらい前かしら。のんびりさせてもらったわ。ちょっと待っててね。」
飲んだら散歩に行こうかな。
アレクが魔力庫から茶葉やポットなんかを出してあれこれやってる。普段は私の目の届かないところでやるんだけど、この部屋は狭いからね。手際がいいなぁ。
最後にカップを外から冷やして……終わりだね。
「はいカース、お待たせ。」
「ありがとね。うん、美味しい。目が覚めるような爽やかな味だね。」
「ベゼルの葡萄葉茶よ。冷たく飲むにはこれかなって。ああ、そうね。爽やかで美味しいわね。」
コーちゃんもカムイも一口ずつ。満足そうだ。
「じゃあアレク。散歩に行こうか。夕食をどこで食べるか探すのと、何か面白そうなものでもない見物にさ。」
「いいわね。こういった街の中を歩くのって久しぶりな気がするものね。」
一週間ぶりぐらいかな?
街ってよりは村だけど、少しだけワクワクだね。




