110、星空の下の語らい
アレクと星空を見ながらまったりとベゼルワインを飲む。贅沢なひと時だね。
「ねえアレク。ここってこんな海の目の前なのに魔物が出てこなくていいね。」
ビーチだしね。しかも夜。こんな時間にこんな場所、いつ海から魔物が現れてもおかしくないはずなのにさ。
「そうね。山の頂上にワイバーンはいるし、海にだって潜ってみればたくさん魔物はいる。なのに平地にはあまり現れないわよね。不思議だわ。」
「それとさ、この大陸だと僕らの魔力はほとんど回復しないじゃない? そしてここの民は魔法を使えない。魔力がないわけじゃないのにさ。無関係じゃない気がするんだよね。」
ワイバーンが山頂に住むのは分かる。あいつらどうもてっぺんが好きみたいだからさ。
海の中に魔物が多いのもまあ納得できる。海中ってある種の魔力が豊富なせいか魔物が大型化しやすかったりやたら手強くなりがちなんだよね。そのくせ私達人間にとっては魔力を廻しにくく出しにくいハードな環境なんだよな。そこんとこって理解はできないがまあ納得できる。
「言われてみればそうね。何か関係がありそうな気がするわ。ちなみに私が気になってるのはミスリルね。ローランド王国でも産出されないわけじゃないけれど、ここで採れた物の方が圧倒的に多いらしいもの。まさかスライムの排出物だなんて知らなかったわ。」
「だよね。金や銀みたいに鉱山で採れるものだと思ってたよ。でさ、だからこそジジイの部族領に行って試してみたいことがあるんだよね。」
「分かってるわ。当てて見せるわね。」
何? バレてんの!?
「おっ、分かる?」
「当たり前じゃない。カースのことだもの。『鉄塊』の魔法を使うつもりなのよね?」
おお……本当にバレてる。アレクすごいな。
「正解。その通りだよ。よく分かったね?」
「当然だわ。カースほどの魔法使いが『試す』ことなんて結果が未知か不安定な魔法ってことになるじゃない。その点『鉄塊』の魔法って使う場所によっては鉄以外の金属も出てくるじゃない?」
ヘルデザ砂漠で使うと他よりもいい鉄が多めに作れたんだよなぁ。砂漠って鉱物と相性がいいんだろうか……
「そう聞くよね。僕はまだ鉄以外が出てきたことはないんだけどさ。だからこそ試してみたくなったんだよね。」
そもそもメタリックサンドスライムが砂を食って排出した物がミスリルだとしたら、それって砂にミスリルが含有されてるってことだよな? で、スライムがミスリルは消化できないもんだから排出してるとか? 一般的なスライムが水を排出するみたいに、とは少し違うか。
どちらにしても、今の時点ではただの仮説だけど、意外といいせん行ってるんじゃないの?
ならば別にジジイの部族領まで行かなくても、今この場で使ってみればいい話なんだけどさ。そこはまだやる気はないのよ。理由としては急いでないことと、魔力を満タン近くまで回復させてから使いたいってことなんだよね。『鉄塊』や『金操』などの金属系の魔法って魔力の消費が激しいからさ。運悪く全魔力が空っぽになってしまうケースがあってもおかしくない。だから今は我慢ってわけさ。
それからもアレクとはたくさん話をした。
シュガーバやアッシリが調教した魔物と視覚や聴覚を共有するのって『同調』の魔法みたいなものだとか、だったら読心者が心を読むのはどの魔法に似てるかとか。つまり南の大陸の人間は通常の魔法は使えなくてもそれぞれの個人魔法を無意識に使ってるんじゃないか、とかね。
私にしては難しい話をしてしまったが魔法学校首席卒業のアレクがいるからね。上手く話を誘導してくれた。何より楽しかったしね。
そろそろシュガーバ達も戻ってくる頃かな。どんな情報を吐かせてんだろうね。




