109、重鎮の苦悩
ジジイがうるさい。悔しそうな顔で悔しそうな声出しちゃってまあ。現金は貰ったけど武器類には手をつけてないだろう。これは破格の対応だと思うよ?
「ジジイうるせぇよ。腹へってんなら何か食うか? 酒もあるぞ。」
「小僧……貴様あれだけのことをしておいて……ワシから聞き出す情報はあの程度か……?」
あ?
「何だジジイ? 話し足りないことがあるなら言えよ。」
「……お主の質問はシュガーバでも知っておる程度だろうが! それがワシの配下を皆殺しにしてまで知りたかったことなのか!? 何を考えておるかあ!」
何言ってんだこのジジイ?
「意味が分からん。俺は最初から『正直に答えてくれるか?』としか聞いてないだろ。それをお前が勝手に主導権握ろうとして攻撃してきたんだぞ?」
「ぐぬぬ……小僧……貴様マオウとか言ったな……あの程度のことも知らんとは……どこの田舎者だ……」
何だとジジイ……
「知りたいなら教えてあげるわ。魔王とは二つ名。彼の名はカース。海を隔てた大国ローランド王国にその名を轟かす『魔王』カースその人よ。それゆえにお前ごとき田舎老爺が知らなくても恥ではない。生涯お目通りが叶わぬ大人物に直答する栄誉を噛み締めるがいいわ。」
「なん……だと……」
あ、アレク……?
「なのに……勇者の末裔が統治するローランド王国にあって『王』の名を冠することを国王陛下から許されたカースを何度も小僧呼ばわりしたわね……許せないわぁ……ねえカース? この老爺、殺していいかしら? いいわよね?」
「お、王……?」
おお……アレクの魔力が迸ってる……
「うん、いいよ。」
アレクの願いを私が拒否するわけないだろ。現金はいただいたし、もう用はないしね。
「うおおぉーーーい待て待て魔王! こんな機会ねえぞ! いいのかよ!? このジジイはヤシのそこそこ重鎮だぞ!? 殺すには早えぇって! 待て待て待て!」
「なんだよシュガーバ。お前は聞きたいことでもあるのか?」
「あるに決まってんだろおが! このジジイはマジでヤシの重鎮なんだぞ!? もっと聞くこととかないのかよ!?」
そう言われてもな。ジジイにもヤシ領にも興味なんかないが……あ、そうだ。
「お前のところって宝石も採れるんだったか。何が採れる?」
「くっ……満礬柘榴石や……金剛光翠石、それから重鉛遮石だ……」
全然分からん……でも宝石って言うからにはきれいなんだろうな。んー、タングステンって聞き覚えがあるな。宝石なのか?
まあいいや。見てから判断すればいい。アレクの細く美しい指を飾るに相応しいかどうをさ。
「その石ってシュガーバのところでも採れるのか?」
「いいや、オレの所はメタリックサンドスライムメタルと翡翠玉石が少しぐらいだな。ヤシは鉱石系が多いんだ」
ほほー、エメラルドか。そういやさっきガーネットって言ったか? 少し期待できるかもね。
「ふーん、じゃあシュガーバさぁ。このジジイに質問があったらしていいぞ。お前には今後も働いてもらうからな。」
「いいのかよ。それはありがてえな。そんじゃあっち行こうかツオファーイ。じっくり聞かせてもらうぜ。アッシリも来い」
「くっ……」
問題はシュガーバ相手にジジイが正直に話すのか分からないけどね。ジジイがそこを勘違いしてたらすらすら喋るだろうけどさ。気付かなかったら面白いな。
さて、こんなもんでいいかな。私が聞きたいことなんて名産品ぐらいのものだからな。ヤシ領の機密情報なんて興味ないに決まってんのに。何を勘違いしてんだかね。
すっかり暗くなってしまったな。吸い込まれそうな海と宝石を砕いたかのような星空。アレクと一緒に心ゆくまで堪能しよう。
「ワイバーンがいた山ではあまり見れなかったけど、こうしてゆっくり見るのもいいもんだよね。」
「そうね。こういうのを降ってきそうな星空って言うのかしら。楽園やクタナツと違って海が目の前にあると視界の広がりが違うわね。こっちも素敵ね。」
やはりアレクは言うことが違うね。星空とアレクを見ながら杯を傾けるとしよう。アレクの瞳に乾杯。




