108、メタリックサンドスライムメタルの真価
はて、どこかで見たような金属だな。サイズは銅貨と同じだが、緑がかった金色……まさか?
「これは何だ? かなり価値があるんだろ?」
「くっ……メタリックサンドスライムメタルの硬貨だ……ワシらは宝貨と呼んでおる……」
メタスラの貨幣ってことか。だが、これで少し繋がったな。
「アレク、これ何だと思う? この色あい、見覚えあるよね。」
「ミスリルに見えるわね。それもローランド王国に出回ってるものより気品がある気がするわ。」
「だよね。アレクもそう思うよね。これミスリルだよね。こっちの大陸ってミスリルが採れるんだっけ? それなら納得だよね。」
宝石にさほど興味はないが、ミスリルが採れるなら欲しくなってきたぞ。なんせ手持ちのミスリルがもうないから魔弾や徹甲魔弾が撃てないんだよな。切り札なのに。
いや、そりゃあ宝石も良いものがあったら欲しいよ? 旅の目的の一つに、アレクに相応しい指輪を作るってこともあるんだからさ。今のところ石は金剛石、リングはオリハルコンがメイン候補だけどさ。それより素敵かつアレクに似合うものがあれば変更もやぶさかではないぜ。
「そう言えばそうだったわね。しかもかなり希少みたいだし。気になるわ。」
「なあジジイ。これ一枚だとどれぐらいの価値があるんだ?」
「一家八人が数年は贅沢できるぐらいはある……」
うーん微妙だな。クタナツでの金貨十〜二十枚程度か。いや、贅沢ってことは百枚ぐらいか? それより一家八人って何だよ。子だくさんか? あ、でもうちだってマリーを合わせれば八人だし。ウリエン兄上のところも子供が二人なら一家で八人……むしろ奥さん一人につき子供が一人生まれたら……十一人。別におかしい話じゃなかったのか。
「この宝貨とお前のストリングエッジは同じ金属だよな? どうやって手に入れた?」
「ストリングエッジは先代族長様から褒美として賜った……宝貨は財をこつこつと貯めて手に入れた……」
ふぅむ……また少し興味が湧いてきたな。
「ストリングエッジってのは普通に手に入れるには難しいのか?」
「うむ……どの部族も族長ぐらいしか所有しておらぬはずだ……シュガーバめも似たような方法で入手したはずだろうて……」
シュガーバの弦の方が上物って言ってたな。伸縮するやつがさ。
それはそうとなぜ族長だけ?
「お前のところはメタスラが採れるんだろ? それなのになぜ族長しか持ってないんだ?」
「簡単なことよ……加工ができぬからよ。おそらくは族長様とてできまい。中央にメタリックサンドスライムメタルを納める代わりに見返りとして武具や宝貨を与えられると聞いておる……」
なーるほどね。つまりこいつら、ジジイやシュガーバのところの族長は領主だけど下っ端でもあるのか。それなのに下っ端同士で争うとは……同情を禁じ得ないねぇ。
「お前らの領内で採れるメタスラと下賜されるメタスラ製品はほぼ別物ってことだな?」
鉄鉱石と鋼鉄ぐらい違いそうだね。
「そうとも……メタリックサンドスライムメタルも宝石の原石もワシらでは加工も何もできぬ……産出した物を売るなり上納するのみよ……」
まあ分からんでもない。ミスリルの加工ってめちゃ大変だもん。分かるとも。ましてやメタリックサンドスライムメタル、つまりメタスラを原料としてミスリルに加工する必要があるんだよな? そんなの私にだってできないぞ。私ができるのはあくまでもミスリルを変形させるだけだからな。
しかも伸縮するミスリルだなんて絶対無理だろ。金属がどうやったらゴムみたいに伸縮するんだよ……あ、でもベルトにいいかも。
「中央ってとこに職人でもいるのか?」
「知らぬ……そうとしか考えられぬがの……」
むしろ中央とやらが職人を囲い込んでる? もしくは技術の秘匿? まあそんなところだろうな。
ふぅむ……どうしよっかなぁ。アッシリの村に行くか、先にジジイの部族領に行くか……場所次第かな。ここから近い方に立ち寄るとしよう。だってジジイの所、ヤシ部族って言ったかな。行きたくなってきたんだもん。
いいこと思いついたもんだから実験したくなったのさ。
おっ、あいつらが帰ってきた。
「おーうご苦労。後で酒飲ませてやるよ。じゃ、有り金出しな。きっちり回収しただろ?」
「ちっ、お見通しかよ。ほらよ……」
「どうぞ……」
当然だろ。こいつらが回収してないはずがないもんな。
「現金以外はお前の好きにすればいいさ。ところでアッシリの村とジジイの部族領はどっちが近い?」
「なんだぁ魔王? ヤシに行くってのかぁ? 勘弁しろよ……アッシリの村の方が近いけどな」
なーんだ。それなら当面の予定に変更なしか。
後は……このジジイどうしよっかなぁ……めちゃくちゃ悔しそうな顔してやがるなぁ。当初の余裕はどこへ行ったのやら。




