103、お見合い大作戦
待つこと三分。羽音が聞こえてきて、一匹のワイバーンが姿を現した。へー、こいつ最初に暴れた奴じゃん。尻尾が長いもんな。
「バオオオ」
何やら話しかけてる。プロポーズ的な?
「ブオオ」
大きい方、メスのワイバーンが尻尾を振ってる。犬ならかわいいんだろうけどワイバーンじゃあねぇ……
「バオオオ」
おっ、メスの背中に降りた? プロポーズ成功なのかな? そうなるとあまり野暮な真似をするわけにもいかないな。さっさとシェルターに引っ込むとしよう。本当は絶景を眺めながら風呂に入ろうと思ってたんだけどな。また他の山頂に登った時のお楽しみにしておこう。どうせそろそろ真っ暗だし。いや、それならそれで星空が美しそうだが……まあいいか。
では、シェルターを出して、と。
シュガーバ達の寝床はシェルターの陰でいいだろ。寝ぼけて崖から落ちないように風壁ぐらい張っておいてやるし。
「ガウガウ」
「バオオ……」
カムイが軽く吠えたらオスが身を小さくした。何て言ったんだ?
「ガウガウ」
あー、お前偉いな。シュガーバ達を食べないよう忠告したのか。通じてよかったな。
メスは分かってるだろうけどオスはついうっかり食べてしまうかも知れないもんな。よく気がついたもんだわ。カムイにしては珍しい。
「ガウガウ」
へー、野良犬がシュガーバのことを気にしてるから? シュガーバから見れば同僚の飼い犬みたいなもんだしなぁ。面識はあるんだろうね。
じゃ、おやすみワイバーンたち。仲良くするんだぜ。
「ブオオ」
おっ、私に言ったのかな? 気が向いたら明日も海の幸をあげようかな。
「……ピュイ……ピュイピュイ」
ん……コーちゃん……朝かな……お腹すいたんだね。私を起こしても肉を焼くかクタナツギルドのまずい干し肉ぐらいしかないんだよな。ぐっすり寝てるところを申し訳ないがアレクにも起きてもらおう。
アレクと一緒にシェルターから出る。おお、まだ朝早いじゃん。そしていい天気。今日も暑くなりそうだね。今は七時ぐらいかな? それならもう少し早く起きて日の出を見てもよかったなぁ。昨日の夕日もきれいだったし、朝日も絶対きれいだよな。あっちの山から出てくるわけか。アッシリの村に行った時にでも狙ってみようかな。思えば夕日はよく見るけど朝日ってあまり見た覚えがないんだよな。早起き苦手だし。
うん、やっぱアレクが作ってくれた朝食はおいしいね。さて、これで今日も一日がんばれる。では出発しようかな。
あれ? よく見るとオスのワイバーンがいない。まさか交尾が終わったらもう用済みってことでどこか行ったとか? メスに食われたってことはなさそうだけど。カムイ分かる?
「ガウガウ」
餌でも獲りに行ってるんじゃないかって? あー、そりゃそうか。でも、それなら海の幸は別にいらないな。オスの帰りを待つがいい。
じゃあなワイバーン。次に来る時は子ワイバーンがいるといいな。
「ブオオ」
やっぱこいつ魔物のくせに知能が高いよな。私らを襲ったら一瞬で死ぬこともよく分かってるみたいだし。ワイバーンは旨いから少し惜しい気もするけど、まあいいや。魔物は他にもいるだろうし。
では下山開始といこうか。
……うーん、これは無理かな……
途中までは降りやすかったんだけど……ここからはきついなぁ……ほぼ垂直に切り立ってんだもん。しかもロッククライミングだと普通は登ったルートで降りるもんじゃないかな? 私らは登った方と反対側に降りようとしてるんだもん。北側から登って南側に降りるイメージかな。
まあいいや。やるだけやってみよう。どうしても無理なら飛べばいいや。では、今度は私が先に降りよう。
だめだこりゃ。さっそくアッシリが落ちやがった。やっぱ岩壁を降りるのって難しいよなぁ。私だって登る時より三倍ぐらい時間がかかってるのに。おまけにどこを掴めとか足の置き場とか見せられないし口頭でアドバイスもできない。そもそも自分の足元だってろくに見えないんだからそりゃあ落ちるよな。岩登りなんて昨日が初めてだろうし。
この分だとシュガーバが落ちるのも時間の問題だな。落ちても下には私がいるから問題はないけど、ここまでにしておこうかな。
『浮身』
ミスリルボードを取り出して、そっちに乗り込む。そしてゆっくりと下へ。はい到着。岩場エリアだ。ここから少し歩けば森かな。で、その森を抜けたら海に出るはずだ。シュガーバによるとそこまで行けば少しだけましな道があるって話だったな。今日中に森を抜けられるかは分からないけど……
でも、今日も張り切って歩くぜ!




