102、三匹ワイバーン
「ブオオ」
「ガウガウ」
「ブオブオオ」
「ガウガウ」
「ブオオブオオ」
さっきからカムイとワイバーンが何やら会話をしている。野良犬はそれを羨ましそうにちらちら見つつ肉を食べている。
で、ワイバーンは何と言ってるんだ?
「ガウガウ」
はぁ? よく分からないだと? 分からないから適当に相槌打ってたって? つーかお前よく相槌なんて言葉知ってんな……
「な、なあ魔王……オレら今夜はここで寝るんだよな……?」
「当たり前だろ。心配しなくてもカムイがいるうちは暴れたりなんかしないさ。」
「ほ、本当だろうな……大丈夫なんだろうな!?」
シュガーバびびりすぎだろ。たかだか十メイルちょいしかないワイバーンなのにさ。
「何をそんなに怖がってんだ? 理由があるなら聞くぞ?」
「だ、だってよ……岩飛翼竜って言えば今の時期は出産やら番探しでピリピリしてるって言うぞ? こいつがオスかメスか分かんねえけど絶対やべえって……」
それを早く言えよ……それより出産と相手探しって時期がかなり違うと思うが。
どうかなコーちゃんにカムイ、こいつって妊娠してたりするの?
「ピュイピュイ」
魔力的には妊娠してない? さすがコーちゃん。つーかいくら魔物でも妊娠してたら酒を欲しがったりしないかな?
ん? じゃあこいつメスなの?
「ピュイピュイ」
あー、それは分からないのね。でも妊娠してないってことはまだ番が見つかってないのか? つーかワイバーンの番探しってどんなシステムになってるんだ?
「なあシュガーバ。お前ドラゴンなんてほとんど見たことないって言ってたくせにこいつのことは詳しいじゃん。他に何か知ってんのか?」
「どこかの岩山の上には岩飛翼竜が棲んでるって噂で聞いたからな。ここに来るまですっかり忘れてたんだよ……山なんか普通登らないからな。強い奴ほど高い所に棲んでるって聞いたことがある……」
ふーん。ここから見ると西と南は海だが、北東から東にかけていくつか山が連なってる。中にはここより高いところも見えるな。ワイバーンってそんな長距離を飛ぶイメージはないが、あの山からこっちまで飛んでこれるものだろうか? 山頂から山頂って見た目は近いけど実際は意外と遠いからなぁ。
「ピュイピュイ」
あらら。噂をすれば……ってやつか。五メイルクラスのワイバーンが三匹、別々の方向から集まってきやがった。もうすぐ夜だってのに。
「うおっ、おお、おい! まま魔王どうすんだよ魔王! 増えたじゃねえか! ど、どど、どうすんだよお!」
「あのぐらいの大きさならお前でも勝てるだろ。まあ落ち着けよ。」
「勝てねえよ! ここには弓にできるもんがねえだろーが!」
あらら。やっぱそうなのか。だからそんなにびびってんのな。
ん? 三匹のワイバーンが……戦い始めたじゃん。てことはやっぱこっちの大きいのがメスであいつらはオスってことか? メスを巡って争ってるんだろうか。
「ブオオ」
「ガウガウ」
「ブオブオオ」
「ガウガウ」
「ブオオブオオ」
またカムイと雑談してる。自分のために争ってるオスは無視か?
おっと、『風壁』
まったくもう……血が飛んでくるじゃん。もっと離れた場所でやれよ……
『暗視』
せっかくだから空中戦を見ながらバーベキューの続きといこうか。
『バオオオ』
『グオオ』
『グガァオ』
ワイバーンはドラゴンのようにブレスを吐けない。だからだろうか、少し距離が空くと魔声を撃ちあってやがる。大した威力じゃないけどうるさいなぁ。
でもこれ三竦みじゃない? 三匹ってのがよくないよなぁ。いかに自分は無傷のままで他の二匹を戦わせるかが重要なんだよな。三匹ともそんなことを考えてたら戦いが膠着するはずだが……そうでもないな。一匹ほど暴れてる奴がいるじゃん。こいつは尻尾が長いな。
口を大きく開けて噛みつく気満々。狙われた一匹も同じく口を開けて迎撃。何もしてない一匹は高みの見物か。
ワイバーンの武器といえば牙と爪、そして尻尾。ドラゴンの場合だと尻尾は薙ぎ払い攻撃オンリーって感じだけどワイバーンの尻尾は少し厄介な点があるんだよな。
それは毒。どのワイバーンもそうなのかは知らないが、けっこう嫌な毒を持ってるってよく聞くよな。どうやらこいつらもそうらしい。同じワイバーン同士でも効くものなんだろうか?
あっ、お互いがお互いの腕に噛みついて……すかさず尻尾の先端を打ち込んでる。一匹は腹に、もう一匹は背中に。これ相打ちか?
おおっ? 膠着したと見たのか、残った一匹が突っ込みやがった。一気に決める算段か。上からぶち当たって二匹とも叩き落とす気だな?
「見えなくなっちゃったね。」
落ちていったもんなぁ。
「ええ、驚いたわ。ワイバーンもメスを巡って争うものなのね。」
男は辛いよね。
「見世物としては悪くなかったね。どうせなら昼に見たかったよね。」
「そうね。それもここらのワイバーンの習性なのかしら? 魔物の生態ってよく分からないわ。」
「だよね。謎だらけだよね。」
さて、決着はついたのか?




