99、レッツロッククライミング
先頭はアッシリ、次にシュガーバ。間を開けてアレク、最後に私だ。誰が落ちてきても助けてやるぜ。ちなみにコーちゃんは私の首に巻きついているし、カムイは好き勝手に登っている。断崖を登るカモシカみたいじゃん。全然ロッククライミングらしくないなぁ。
うふふ、下から見えるのはドラゴントラウザーズ越しのアレクのお尻。ぱんぱんと張りがあって触ると滑らかで目にも麗しいんだよなぁ。絶景だぜ……
それにしても……これはダルいなぁ……アッシリのやつ全然登れないじゃん……せっかく間を開けて登ってんのにすぐ追いついてしまう。そりゃあ初めての岩登りなんだから無理もないけどさぁ。仕方ない、ならばこうしよう。
「アレク、僕が先頭を登るからさ。あいつらが落ちたら助けてやってくれる?」
「ええ、いいわよ。」
まったくもう。せっかくいい景色を見ながら登ってたのに。
『浮身』
アッシリの少し上に移動。
「俺がどこに手足をかけるかよく見ておけよ。」
「は、はい……」
アッシリもシュガーバも私より体格がいいんだから私の手が届く場所なら問題なく届くだろう。特にストレッチが必要な動きもしてないし。ただ普通に登れるよう動いてるだけだもんな。
「よく見とけよ。ここを右手で掴んだまま左足を引き寄せて……ここん所に乗せるんだ。やってみろ。」
目の前でやって見せたんだぜ? これなら簡単に真似できるだろ。
「わ、分かりました……」
アッシリが私の言う通りに動けているかは分からない。見えないんだからさ。全力でその通りにしていることは間違いないのだが。がーんば。
「もし遅れそうなら言えよ。」
「は、はい……」
こういう時って報告が遅れて気付いた時には大惨事ってパターンがあるが、こいつが落ちてもあまり問題はない。懸念点はアレクを巻き込むことぐらいだろう。実際にはアレクの反応が遅れるはずがない。つまりアッシリが怪我をするとするなら、落ちる最中に岩壁に打ちつけるぐらいのものだろう。墜落死はしなくて済むだろうよ。
「おっ、おい魔王! あれやばくないか!?」
どうしたシュガーバ。背後? おっ、魔物じゃん。岩登りの最中に空中から来られるとさぁ、見えないんだよ。まったくもう。
『浮身』
なるべく魔法は使いたくないんだよ。せっかく体一つで岩登りしてんのにさぁ。ダイエットは明日から、みたいな気分になるじゃん?
へぇ、知らない魔物だ。空飛ぶ駝鳥って感じ? どこかで見た覚えもあるけど。
『風斬』
鳥のくせに首が長いから狙いやすいんだよな。
終わりだ。とても全部は回収しきれないから、手前の一匹だけゲットしておこう。旨いのかな?
よし、岩登りに戻ろう。まったく、岩登りに集中させてくれよな。楽しんでるのにさぁ。
くそぉ……魔物が断続的に襲ってきやがる……歩いてる時は全然来なかったくせに。これって岩壁を登ってると目立つからか? それとも岩壁を登る存在はほぼ抵抗できないことを知ってるからか?
「ま、魔王様……て、手が……もう限界です……」
マジかよ……あーもういいや。頂上まで飛んでいこう。
『浮身』
全員をミスリルボードに乗せた。
『風操』
岩壁に沿って上昇。登りきったら少しだけ平段があった。しかしまだ頂上ではなかった。傾斜がなだらかになっているものの岩壁が続いている。
「今度こそ自力で登ろうぜ。この傾き具合ならアッシリでも登れるだろ?」
「は、はい……」
だいたい傾斜は五、六十度ってところだろうか。これなら岩登りってほどではないな。気楽にじっくり登れるんじゃない? よし、今度こそ魔法なしで登ろう。ここを登って……頂上に着くといいなぁ。そろそろ夕方だし。
「今度はシュガーバが先に行け。次がアッシリな。お前らなら普通に歩いても登れるだろ。」
「おお」
「分かりました……」
で、私は最後尾。再びアレクのお尻を見ながら登るのさ。むふっ。
おっ、あいつらの姿が見えなくなった。ついに頂上に着いたか?
ん? シュガーバが崖から顔を出して何やら手を振ってる。早く登ってこいと言いたいのか? 別に百メイルも離れてないんだから口で言えばいいのに。どうせもう二分ぐらいで私達も着くし。
それでも焦ったかのように手招きをするシュガーバ。アッシリも一緒になってやってる。急いで欲しいならそう言えばいいのに。あらら、とうとう降りてきやがった。そんなに待ちきれないのかよ。何事だ?




