92、カラバの治安
まあこれで実際やつらの家族が助かるかどうかなんて分からないよね。あれ系の組織って人間の命なんて虫ほどにも思ってないのが定番だし。あ、それってエルフも同じか……まあいいや。
さて、用は済んだ。長居は無用、さっさと帰ろう。ちなみに出された酒はコーちゃんが飲んだ。酸っぱくて旨くはないけどクセになるかも、だそうだ。ホルモッグとか言ったなぁ。
うーむ、アレクに何かお土産を買っていきたいなぁ。カムイもうるさいだろうし。とりあえずもう少し歩いてみるか。さっきの今だしいきなり姿を消したら怪しまれるかも知れないしね。もっとも、怪しまれても私には何の問題もないのだが。
ある程度回ってみたが、目ぼしいものがない。鳥肉を煮込んだシチューや豆と炒めた肉豆炒めなんかは美味そうに見えたが、いざ食べてみると肉が腐りかけらしく食えたもんじゃなかった。うまけりゃお土産にしようと思ったのに。ヌミディア鳥と言うらしいが。
だが発見もあった。意外にも米があったんだよな。パサパサしてる上に変な塩気があり美味しくはなかったが、これって料理次第で化けないだろうか? 容器に一杯分ほど買ってみた。だいたい三合ぐらいか? ヒイズルでどっさり買った米がなくなったら出番かな。
他にもアクセサリーなんかも売ってあったがアレクに相応しいとは思えないので買ってない。
もういいだろう。城門から出てる街道を歩いて適当に街を離れよう。で、岩陰あたりで隠形を使ったら飛んで帰ろう。
なんてことを考えてたら囲まれた。
「待て。お前が支払いに使った木の実のことで話がある」
「大人しく来てもらおうか。抵抗するならこちらも容赦しない」
また衛兵かよ。さっきとは別件かな?
「何だ?」
「あの木の実は違法薬物の可能性がある。来てもらおうか」
「どこで、誰から、どのぐらい入手したか話してもらうぞ」
あらまぁ。そんなことあるの? そりゃあ言われてみればナイストリップできる木の実なんだから常識的に考えれば違法なのかも知れないけどさ。
でもお前らどう見ても、違法は許さん取り締まりますってタイプじゃないじゃん。旨そうな汁見つけたから吸いに来ましたってタイプじゃん。どいつもこいつもニヤニヤしやがって。真面目なのは口調だけか?
「これのことか?」
「うむ、それだ。証拠保全のために全て渡してもらおうか」
「怪しい動きをするなよ? 手元が狂うかも知れないからな?」
そんな細身のなまくらで私が斬れるかよ。それに全てと言われてもな。私って見た目は手ぶらなんだぞ? どんだけ持ってると思ってんだよ。
「これしかないぞ?」
トラウザーズのポケットから取り出したように見せかける。麻零余子をほんの十粒ほど。
「よこせ!」
「待てっ! 独り占めするな!」
「オレにもよこせっ!」
あーあー、衛兵的な態度が一瞬にして崩れちゃったね。地面に落ちた金を拾う亡者のように仲間内で争ってやがる。じゃ、後はお好きに。ご使用は用法容量を守って安全にお楽しみくださーい。
地面に落ちた麻零余子しか見えてないようで、私はあっさりと離脱できた。あんなのコナクライ近辺の山に行けばたくさん生ってるのに。上質の自然薯もね。
さて、今後こそ街道に出た。辛うじて道と分かる程度でしかないが。砂塵が目に沁みそうで嫌だなぁ……風壁ガードが外せないね。
さて、ここらでいいか。街道を外れて……岩が多いエリアへ行こう。後をつけてる奴は……見た感じいないな。コーちゃんどう?
「ピュイピュイ」
たぶんいない? この辺りの気候のせいかよく分からないんだね。そんなこともあるのか。まあ別にいてもいいんだけどさ。
では、岩陰で『隠形』っと。少し待ってみるか。尾行がいるならここまで来るだろ。もし来たらコナクライまで連行してやろっと。
岩陰で錬魔循環しながら待つ。私が集中してて気付かなくてもコーちゃんが気付いてくれるに違いない。
ピュイピュイ
おっ、コーちゃんがこっそり教えてくれた。マジで尾行いたのかよ。目をつぶったまま待つとしよう。私が見えなくなってからどんだけ時間が経ったか知らないが、気になるだろぉ? まったく動きがなかったんだからさ。
風の音に紛れて、砂を踏む小さな音が近づいてくる。マジで小さいな。私がもし歩いてたら絶対気付けないだろうよ。
見えないが岩の向こう側にいるよな?
『麻痺』
効いたな。
『浮身』
浮かせて引き寄せる。あぁ? 犬だと? しかも薄汚い野良犬……こいつも調教されてんのか? ってことはマズいな。犬を通して飼い主に見られた可能性もある……が、知ったことではないな。
『永眠』
これで見聞きできないだろ。ちょうどいいからこの犬をカムイのお土産にするかな。不味そうなら放すか殺すかしよう。シュガーバの意見を聞いてもいいしな。果たしてただの野良犬なのか、調教された番犬なのか。
帰ろ。
『隠形』
『浮身』
『風操』
ぶっ飛ぶぜ。




