88、アッシリの懇願
ひとまず解散。奴らにはカムイを同行させた。逃亡や悪巧みは不可能でも刺客が来るかも知れないからね。
私とアレク、そしてコーちゃんは街の中心にある広場でティータイム。広場と言うほど広くはないけどさ。
「ねえカース、あいつらはどこまで連れていくの?」
「特に考えてないよ。旅の共としては邪魔だけど、この大陸の案内人としては使えるんじゃないかと思ってるしね。」
「そう。それならいいわ。宮廷魔導士に引き渡すのも手かと思っただけ。役に立つうちは使ってやればいいわね。」
その手もあったな。面倒なことは丸投げするべきだが……まだいいや。
「それいいね。でもまあしばらくは案内人として使ってやればいいよね。アレクとしては目障りだったりする?」
「少しだけね? でも使えるのも事実だし、そこまで邪魔じゃないわ。それよりカース、私達も街を見て回らない? ここには多分もう来ないと思うし。」
「それいいね。じゃ、行こうか。」
そこまで広い街じゃないし、散歩がてら歩くにはちょうどいいかな。
アレクと腕を組んで散歩開始。
昨夜の大火もこの街にまでは来てないな。よかったよかった。それ以前にあちこち破壊されてるから関係ないと言えばないんだけどさ。
街ってよりは村って感じ? そこそこ住人がいただろうにどこに行ったのやら。それにしてもシュガーバ達も大変だよな。同じ国内だろうにまとまってないってことだよな? 違う部族もこの街を狙ってたわけだし。ネレコレ村なんか危うく乗っ取りが成功するところだったわけだし。
部族間の仲が悪いわけじゃないけど味方ってわけでもない。まとまってない国って面倒だよなぁ。
「ねえカース、テーブルと椅子があると便利じゃないかしら? 外で食べる時用に。今はカースが水壁の魔法で作ってくれてるけど。」
「それいいね。魔力の節約になるもんね。よし、探してみようか。」
言われてみれば確かにね。シェルター内には普通にテーブルも置いてあるけど、外で食べる時にいちいち持って出たりしないもんね。水壁を使うから気にもしてなかったよ。
さて、こんな時の定番は一番大きい建物を狙うことだな。普通に泥棒だけどアレクったら気にもしてないんだろうなぁ。無邪気なんだから。
よしゲット。意外なことに一枚板の大きなテーブルがあったんだよな。村長宅だったのかな? 重厚感あふれるテーブル、ついでに椅子が六脚。これで今後は外での食事が充実するね。
広場に帰ってみると奴らも戻っていた。早いじゃん。
「荷物はそれだけだな。じゃ収納するぞ。」
二人とも木箱に荷物をたっぷり詰め込んでいるようだ。普通ならそんなもんを持って旅なんかできないけど収納できるなら関係ないわな。それ以外には背負い袋を見つけたらしい。手荷物はそっちに入れたってわけね。
「じゃ行こうか。最初の目的地はアッシリの村だな。」
「ま、待ってくれ……」
ん?
「どうした?」
アッシリの野郎、自分の村に帰れるってのに暗い顔してんな。
「家族を助けて欲しい……このまま帰ったら殺されてしまう……」
あー、そういえば何か言ってたな。
「ふーん、対価は?」
「おれの忠誠……あとはコーヒーの豆ぐらいしかない……命を狙っておいて言えた義理ではないが……」
「いいぞ。拐われてるのを助ければいいのか?」
こいつの忠誠なんぞいらんがコーヒーは欲しい。無理矢理奪うより自発的に差し出させる方が入手しやすそうだもんな。
「虫のいいことを言ってるのは分かってる……おれの命でよければいくらでも差し出す……だからどうか家族を……」
「だからいいって言ってるだろ。その先を話せよ。拐われてるのかって聞いてんだよ。」
「勝手な言い分だと分かっている……だが、どうか家族を……え?」
やっと通じたか。
「だからいいって。約束はしないが力になってやるよ。詳しく話してみろ。お前が任務に失敗したから家族が殺されるんだろ? どこかに拐われてんのか?」
「ここからはオレが話そう」
「シュガーバ様……」
おやおや?
「こいつらの家族は別に拐われちゃあいない。ただオレが上に報告すれば執行部隊が動くだけの話だな。家族を惨殺するためのな。つまり、アッシリが言いたいのは家族を守って欲しいってことだな。できるのか?」
シュガーバまで口を挟んできやがった。
「無茶言うな。いつ攻めてくるかも分からん奴から守れるわけないだろ。つーかシュガーバお前、上への報告とかどうするんだ?」
「どうもしないさ。できると思うか?」
「知らねーよ……」
何言ってんのこいつ?
「つまりな、アッシリが言いたいのはその辺りを含めて助けてくれってことだ。失敗して家族が殺されるのはオレも同じだからな」
なんとまぁ……
「もしかしてお前らって、国とか組織に忠誠心ないの?」
「あるわけないだろう。やるしかないからやってるだけだ。オレ達を縛るものから解放してくれると言うならオレもアッシリも魔王に忠誠を誓うぞ?」
「いや、お前らの忠誠なんか要らんぞ。だが話は少し分かった。シュガーバが報告しない限りは安全なんだろ? だが、いつまでも引き延ばせないから何とかしてくれってことか?」
「そうだ。あと四日以内にオレから報告が届かなければ失敗と見做される。その場合、アッシリ達の家族は無事だがオレの家族は処断されるだろう……」
ふーん大変だね。どうでもいいけど。それよりも私の人柄の良さがバレてしまったんだろうか。容赦なく頼み事してくるじゃん。
「お前らもしかしてさ、俺が甘い人間だと思ってない? 頭下げて頼めば何でも聞いてくれるってさ。」
「思ってる。だから頼んでいるんだ。助けて欲しい。この通りだ」
「お願い、します……」
やれやれ。人望が厚いってのも辛いもんだねぇ。仕方ない。少しぐらい考慮してやるよ。
「話は何となく分かった。詳しくは歩きながら聞かせろよ。道中は長いんだからさ。」
「ま、魔王……ありがたい! 頼む、頼むぞ!」
「魔王様……お願いしますっ」
こいつら調子いいなぁ。契約魔法をかけてしまったせいで思いっきり素直になってんじゃないのか? やれやれだぜ。




