86、尋問終了
いい肉にいい酒、そして絶対服従の契約魔法。どうよ? だんだんと従うことに忌避感がなくなってくるだろう?
「お前の、お前たちの目的は何なんだ?」
やっぱシュガーバは聞きたがりだな。それとも組織の幹部として情報収集してるつもりなんだろうか? 先ほどまでの装備バカ、素材バカっぷりは擬態だったりしてね。私の話なんかあんまり信じてないくせにさ。
「話してもいいけど、なぜそんな質問をする?」
「今は虜囚の身に甘んじているが、いつか逆襲する時のためだ。それにもし逃げ帰れたなら少しでも処罰を軽くしたいからな」
苦痛に満ちた表情で言うねぇ。そりゃあ偽証なんてできないもんね。嫌でも正直に言うしかないわな。
「俺達の目的はこの大陸の産物だよ。コーヒーとかケイダスコットンとかな。あと香辛料もか。お前のその弦はあんまり興味ないかな。あとはきれいな景色とか雄大な自然とか見たいとは思ってるぞ。要は遊びに来てんだよ。」
広大な砂漠も遠くから見る分には良さそうだよね。ヘルデザ砂漠でそんな気分になったことないけど。
「先ほどお前はローランド王国と言ったな? その国は知らないが侵略の尖兵ではないのか?」
ストレートに聞いてくるねぇ。当たり前か。
「当たり前だろ。誰がそんな面倒なことするかよ。」
「ならばコナクライの村人がいなくなったのはどういうことだ?」
「知らねーよ。俺達が着いた時には誰もいなかったぞ?」
これは本当。たぶん宮廷魔導士の仕業だろうけど確定じゃないからね。
「それより読心者ってお前らの仲間なんだろ? 一体何者なんだ?」
「あいつらか……仲間なものか。あれはオレ達とは違う部族の奴らだ。やはりコナクライにもいたのか?」
「知らんな。俺が見たのはネレコレ村ってところだったか。ところで、もしかしてお前らって対立してんの?」
だってムカつくって顔してんだもん。こいつ表情豊かな奴だなぁ。
「対立というほどではないが、少なくとも協力するような間柄ではないな。と言うよりできれば会いたくない」
そりゃそうだろ。戦闘力は大したことないだろうけど、心が読まれるって最悪だもんな。
「そもそもコナクライってお前らの国なのか?」
「違う。コナクライに限らずこの周辺はどこにも属してない。というのがオレ達の部族領はセティアニア商国の中では北の方に位置するが、それでもここらまで来ようと思えば軽く二十日はかかる。支配しにくいんだ」
ふーん。分からんでもないけど。それでも商売上の付き合いはあったり、他の部族が人員を潜入させるほどの価値はあるんだろ? 地理的にはめっちゃ要衝だもんな。
「まあいいや。じゃあ俺達は寝る。お前らも好きに休んでいいぞ。こいつはサービスだ。」
『浄化』
「おお、気分いいな」
「こっ、これは……」
外にはコーちゃんもカムイもいることだし、仮に刺客が来たところで無駄だろう。しかもこいつらには、自分らの命を狙う者が現れたら抵抗するよう命令してあるし。もちろんお互いを攻撃するのは禁止。まだまだ喋ってもらわないといけないからな。
今日はシェルター内で風呂。暗いから外でもいいんだけど、何となくね。二人きりでイチャイチャ。
「カース、今日も凄かったわ。」
「そう?」
「ええ。ここからでも見えたわ。カースが辺り一面を焼き尽くすところが。夜空すら燃え上がってたわね。だから私も……素敵だったわ。」
焼き尽くしてはないよ……ぐるっと円形に燃やしただけだよ。少しは延焼したけどさ。それより、アレクも燃え上がったって言いたいんだね? かわいいなぁもう。
「ありがと。あいつもなかなか手強かったよ。色んな奴がいるもんだね。あ、あと南の方ってかなり広そうだよね。もしかしたら王国より広いかもね。」
「あり得るわね。そしたらとても歩いては回りきれないのかしら。その時はその時ね。」
「それもそうだよね。さしあたってはアッシリの村だね。かなり高地みたいだけど歩くのが楽しみなんだよね。」
「私もよ。高いところは空気が薄いってカースから教わったけど、まだそれを実感したことがないもの。気になってたのよね。」
山岳地帯はそこまで高くないのか分からないが空気が薄いと感じたことはないんだよなぁ。天空の精霊に会った時も、イグドラシルを登った時も空気の薄さは感じなかった。麓から五、六時間程度の高地だと空気って薄くなるものなのか、少し気になるなぁ。八千メイルで三割ぐらいまで薄くなるんだっけ? 酸素濃度は変わらなくても、そもそも空気が少なそうだもんな。
「山を登るのも楽しそうだよね。山頂まで飛んで行くのとは違った景色が見れそうでさ。」
「ええ、本当に楽しみだわ。」
この後も楽しみなんだぜ? ふふふ。
「シュガーバ様……おれたちはいったいどうなってしまうんですか……」
「さあな。運が良ければ生き残れるだろうよ。あの野郎はどうも甘いところがあるみたいだからな。もっとも、ここまで情報を喋ってしまったわけだし、帰れないかもな」
「シュガーバ様……なら家族の命は……」
「さあな。オレが報告しなけりゃ無事だろうよ。その代わりうちの家族が危ないけどな」
「あいつ……家族を助けてくれませんかね……」
「頼んでみろよ。言うのは自由だぞ。どうせ隠し事もできないわけだしな。どこまで甘いのか見ものじゃないか?」
「そ、そうですね……家族が殺されるって話はしましたけど、無反応でした。何とも思ってないのか、そもそもおれの話なんかまともに聞いてないのか……」
「自分の命を狙った相手だしな。普通ならそんな話されても無視だろう。まあいいさ、この際だ。お互い生き残ることに集中しようぜ。あいつにくっ付いてりゃいい思いできるかも知れないからな。さっきの肉や酒みたいにな」
「は、はぁ……」




