11、宮廷魔導士のお手並
おっ、頭が出てきたか。だったら、もう一気にやってしまおう。
『風操』
イグドラシル製の棍『不動』を構えたまま突撃。体ごとぶつかりつつ『風斬』も併用。
不動がぬるりとデビルアークオクトパスの頭に割り込む。ぬっ、手首どころか肘まで入ってしまったか。まあいい、くらえ!
『轟く雷鳴』
体内に直接流し込んでやった。もちろん魔力特盛だぜ? 終わりだ。
『浮身』
ゆっくりと巨大蛸を引き上げる。やっぱでけぇな……百メイル近いもんな。
「さすがは魔王殿。あっさりと終わらせてしまったな」
「うむ、見事な判断だ。こやつらは少々の落雷ではびくともしおらんからな」
「迷わず武器を構えて突っ込んだ判断力、躊躇せぬ胆力。見習うべきものがある」
「どうやらただの棍棒ではないようだな」
数人の宮廷魔導士がお喋りしながら近寄ってきた。
「こいつどうします? 下ごしらえしてもらえるって話でしたけど。」
「うむ。この場でやってしまおう。魔王殿、もう少し浮かせてもらえるか? 全身が海から出るまで頼む」
『浮身』
改めて見てもでけえな……何年生きてたんだろうね。これだけのサイズでもたぶん敵なしとはいかなかったんだろうなぁ。海は大変だね。
「こんなもんでどうでしょう?」
「よし。ではしばしそのままで頼む。では各々がた、わしは内臓を処理するので他を頼む」
「うむ、ならば私は足を担当しよう」
「よし。頭は私が受け持とう」
「では我は周囲の警戒をしておこう」
ちなみに船は止まることなく進んでいるし、ここは真っ暗な海の上。なのに全員平然と作業を進めている。やっぱ宮廷魔導士は違うな。
『氷刃』
『魔切』
へぇー、これは珍しい。魔切って普通なら手持ちの武器にかけて斬れ味を上げる魔法なのに。それを氷刃の魔法にかけるとは。味な使い方してんなぁ。さすがだわ。
ほうほう。胴体をぐるりと切ってから、さらに浮身を使った? 私も使ってるのに? へぇ、頭の皮だけをそうやって剥いていくのか。あれは剥くってより裏返すって言った方が近いのか? おおー、内臓剥き出しだわ。そういや蛸の頭って本当は腹なんだっけ? で、ぐるりと切った胴体あたりに脳があるんだったような。まぁどうでもいいよね。
おおー、あっという間に内臓が外された。すごいな。で、浮身を解除して海に落とした。内臓には用無しかな? いや違う。あの宮廷魔導士も一緒に海面まで降りてる。ああ、洗うのか。まずは海水で大まかに洗って……次に水の魔法で丁寧に洗ってるみたい。蛸の内臓か……食べたことないな。陸の魔物ならよくあるんだけど。
で、まとめて氷漬けね。サービスいいなぁ。
「魔王殿、これを収納しておいてもらえるか? わしの魔力庫にはとても入らんものでの」
「ええ、いいですよ。ちなみにこの内臓は食べれるんですか?」
「うむ。食べてもよいし薬にしてもよい。魔王殿の好きなようにしてやるぞえ?」
「へー、初耳ですよ。考えておきます。」
知らないことだらけだな。勉強になるぜ。
「それからこちらは魔石だの。売ってもよいが魔王殿の装備の調整に使うのが得策と見える。生半な装備ではないようだからの」
「ありがとうございます。」
強力な魔物の魔石があると装備のメンテナンスにいいんだよな。マウントイーターの魔石でウエストコートに魔力吸収の機能を付けたりもしたよなぁ。こいつの魔石だと何ができるんだろ。普通にメンテナンスするだけでも充分だよな。防汚や温度調節の機能を付け直したりさ。
「魔王殿、これも収納を頼む。一本はこちらで預かろうと思う。干物を作るゆえな」
「いいですよ。お願いします。」
軽く二十本を超える蛸足。一本だけでも長さが百メイル近いんじゃない?
「こちらも仕込みが済んだ。おすすめの食べ方は煮込みだな」
「ありがとうございます。いただきますね。」
頭の部分も終わったか。ちらっと見てたけど、ポイントはしっかり洗うことらしいな。内臓を洗うよりもかなりしっかりと丁寧に洗っていたように見えたんだよな。水の魔法がぐるぐる回りまくってたしさ。それなりにこびり付いてたフジツボみたいなのもきれいになくなってる。あの短時間で……やっぱ宮廷魔導士ってやるもんだなぁ。
よし。収納終わりっと。
「どうも、皆さんお手数かけましたね。じゃ、船に戻りましょっか。」
さすがにまだ眠くはないが、真夜中だしな。さっさと帰って風呂に入りたい。少しぬめりが付いたし。『浄化』ふぅ。汚れは落ちた。
ミスリルボードを出して全員を乗せる。各自が飛んだとしても大した手間じゃないとは思うが、ほんの気持ちってことで。いいもの見せてもらったしね。




