12、ケモナー天才料理少年
船に戻った。仕留めてから一時間ちょいってところか。あれだけの巨大な魔物の解体にしては早いよな。みんなの手際がよすぎるってこともあるが。
「魔王殿、よいものを見せてもらったぞ。もしもクラーケンなぞ現れた際は期待しておるからの?」
「それは構いませんがクラーケンって旨いんですか?」
乾いたクラーケンにはワイバーンが喰らいついてたけどさ。
「うむ。かなり美味だな。ただ先程のデビルアークオクトパスよりかかる手間もかなりだがの」
「へー、それは楽しみですね。じゃあもし現れたら呼んでくださいね。」
「もちろんだとも。このような航海の最中にクラーケンの相手など冗談ではないわえ」
だから私にやらせるってか。別にいいけどさ。そもそもクラーケンどころか大海蛇シーサーペントですら海で出会ったら生きて帰れないとかって言われてるんだよな。
「ですよねー。じゃあお先に失礼します。」
さーて風呂だ風呂だ。服は問題ないけど髪が少々潮に塗れてしまったからな。国王の湯船ですっきりさせてもらおう。
「カース、かっこよかったわ。」
浴室にて、アレクが背中を流しながら話しかけてくる。
「そう? いつも通りだよ。」
「ううん、カースはいつもかっこいいの。デビルアークオクトパスって剣も槍も刺さらないし魔法も通じない危険な魔物だわ。それをあんなにあっさり仕留めてしまうなんて……本当に痺れたわ。」
「はは、そう?」
「ええ、でもね? 痺れただけじゃなくて……体が熱くなったの……」
うむっほぉ……
アレクったらもう。分かってるさ。強者を見ると欲情するクタナツ女性の特性だね。私がいいとこ見せてしまったもんだから、さ。背中を流していた手が徐々に前に回ってくるじゃないか。悪い手だぜ。背中を撫でていた手が脇腹を通り腹を洗う。そして、少しずつ下に動いていき……
〜〜削除しました〜〜
目が覚めたのは昼前だった。かなり腹がへっている。しかも、揺れが大きくなっているじゃないか。くっ、優雅な船旅もここまでか。
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
コーちゃんとカムイも腹へったのね。しかもカムイのやつ、びっしょりじゃん。風呂に入ってたのか。上がる前に私を呼べよ……床がめっちゃ濡れてるじゃないか。まったくもう。
アレクを起こしてから昼食へと出かけた。
「こんにちは魔王様!」
「魔王様! 頼りにしてます!」
「魔王様! 昨夜はすごかったそうですね!」
「どもども、こんにちは。」
船員達が次々に挨拶してくるじゃないか。さては昨夜の話を宮廷魔導士から聞いたのか。てことは、それまでは私の実力を疑ってたってことか?
食堂に到着。誰かいるかな?
「あっ! 魔王様! もしかしてお食事ですか?」
「ああ、頼めるかい?」
少年だ。この子は確か期待のホープだったよな。
「はい! 今の時間は僕しかいませんが……もしよろしければ、僕に作らせてもらえないでしょうか!?」
「いいよ。じゃあお任せで四人前頼むね。飲み物はいらないよ。簡単なものでいいからね?」
「はい! ありがとうございます!」
頼んでるのはこっちなのに礼を言われるのは変な気分だね。
「ピュイピュイ」
ははっ、コーちゃんたら食前酒が欲しいんだね。今日はベゼルの気分なの? じゃあこれね。ベゼル男爵領でどっさりゲットした樽から。ついでだから私とアレクの分も注いでおこう。昼からワインっていいよね。
「お待たせしました! まずはこれを摘んでおいてください!」
全然待ってないよ。
「何だか香ばしいね。これは何かな?」
「料理長が昨日釣った真血鯛の鱗をフリッターにしてみました。衣も何もなく揚げただけですけど。じゃあ次の用意をしますね!」
要は鯛の鱗を揚げたわけか。旨そうだな。どれどれ……マジかこれ。うっま……軽く塩味も付いてるし……やべぇなこれ、ワインが進む。でもこれワインよりビールが欲しくなるな……プレミアムなビールが飲みたくなってきた。あの子すごいな……これ病みつきになりそうだわ……
「カース、この味好きよね?」
「え、うん。大好きだよ。」
さすがアレク、分かってるじゃないか。
「真血鯛の鱗を端白胡麻油で揚げてるのね。鱗って捨てがちだけど、こんなに美味しく料理できるのね。私も気に入ったわ。」
アレクったら油の種類まで気付いたのか。すごいな……ならば今後アレクに作ってもらえることもあるってことだな。ありがたい。
ふぅー、腹いっぱいだな。あの子やるなぁ。どうもカムイに合わせた料理って感じがするが、それでも美味かったよなあ。丼の二層構造で麦飯とステーキを食わせてくれた。
ガーリックを利かせたツナマグロのステーキを麦飯に乗せただけのものかと思えば、まさか中層にオークのステーキが仕込んであるとはね。フォークだと少しばかり食べにくかったけど、旨くて満足だ。腹いっぱい。
「ガウガウ」
お前も満足か。よかったよかった。香辛料はだめでもニンニクなら大丈夫なのね。私も好きだけどさ。
「魔王様、お嬢様。いかがだったでしょうか」
今さらな気もするけど、その呼ばれ方だとアレクが私の娘っぽく聞こえちゃうね。
「美味しかったよ。カムイもかなり満足してるしね。」
「ありがとうございます。あ、あの、カムイさんに触ってもいいです……?」
あー、そういやこの子ってカムイ好きなんだったな。どうだカムイ?
「ガウガウ」
「いいってさ。顎の下を優しく撫でてあげるといいよ。」
料理人が魔物に触ってもいいものか気になるが、カムイは清潔だから大丈夫だろうな。
「ありがとうございます! うひひ……もふっもふもふっひひ……」
ん? なんだかこの子の目つきが怪しいぞ……美少年を見るエロイーズさんのように。




