368、火焔駝鳥
さすがに遠距離狙撃は無理だったか。
それなりの高速で接近してきたのは全長五メイル程度の魔物、火焔駝鳥。火の鳥ならぬ火の駝鳥って感じ? 従来の駝鳥よりかなり首が太く、その分短い。勢いそのままに襲いかかってくるつもりだったようだが、さすがに数十メイル圏内にまで接近されたら当たるよな。アレクの魔法の威力を薄々は感じ取ったらしく速度を落とさず蛇行しながら襲いかかってきた。が、新しい手段を開発したアレクの敵ではない。片翼を撃ち抜かれて落下していった。胴体や頭が無事なので墜落するまでに立て直すことぐらいはできるだろう。どうしよっかな。せっかくアレクが一発入れたんだし……
「拾ってくるね。少しの間、湯船を頼める?」
「え、ええ。やってみせるわ。でも、持って一分だと思うから早く帰ってきてね?」
「うん。大丈夫。待っててね。」
『浮身』
アレクが浮身を使うのと同時に私は湯船から身を踊らせた。全裸のままで……
『風操』
片翼は撃ち抜いたが片翼は無事。魔物の回復力なら地面に落ちるまでに治ることすらあり得る。だからまっすぐ落ちても追いつけないと見た。
ほらやっぱり。だいぶ湯船の真下から離れてやがる。悪いが逃がさないぜ?
『狙撃』
アレクにも説明したことはあるが、そもそも私の狙撃は『魔力探査』を併用している。相手の魔力を感知し、そこにぶち込むホーミングだ。だから魔力を吸収したり無効にするような相手とは相性が悪いわけだが……今回のこいつには関係ないわな。額をぶち抜いた。
『浮身』
まだ動いてやがる。少し待とう。いや、待つぐらいなら……
『風斬』
首を切って血抜きぐらいしておくか。すごいなこいつ……流れ出た血が表皮に触れると蒸発するじゃないか。見た目通りの熱さってわけか。
よし。動かなくなったな。では、足を触って『収納』っと。熱いなぁもう。さて、全速力で戻らねば。
「お待たせ。代わるね。」
「おかえりなさい。ギリギリだったわ……」
「あはは、ごめんごめん。きっちり捕まえてきたよ。こいつは美味しいかな?」
「駝鳥の肉は臭みがあるって聞いたことがあるわ。でも火焔駝鳥だとぴりりとした辛さが病みつきになるとも聞いてるわ。」
「それは楽しみだね。スペチアーレ男爵にも食べて欲しいしね。」
「きっと驚くと思うわ。そもそもカースが来た時点で大喜びじゃないかしら?」
「はは、それもそうだね。あ、ちょうだい。」
「はい。さすがに飲む余裕なんて全然なかったわ。」
グラスごとアレクに渡してたからな。ぐびっ。さすがだな。全然ぬるくなってない。いいグラスだわ。
「やっぱ美味しいね。もう少しのんびりしようよ。」
「こんな場所でのんびりできるなんてカースぐらいだわ。ふぅ、美味しい。カース、お代わりをお願い。」
「おお、アレク早いね。はい、どうぞ。」
「ありがとう。ふあぁ……やっぱり美味しいわ。カースありがとう。」
むふっ。アレクの唇が私の頬を攻めたてる。いかん、いかんぞこれは……のんびりとリラックスするための空中露天風呂なのに! ムラムラしてしまうじゃないか! いや、そんなもんとっくにムラムラしてるけどさ! だって全裸のアレクが隣にいるんだぜ? 当たり前だろ? 王国一の美女が私の隣で全裸で酒飲んでるんだぜ? こんなのいくら大金を積んでも実現不可能だからな?
「アレクさぁ……」
「なぁにカー、っ!?」
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「アレク、気分はどう? 動ける?」
「……もう少し……寝かせておいて……」
ならば仕方ない。私一人で景色を見ながら飲むとしよう。
「ガウガウ」
あー、羊乳のお代わりな。悪かった。湯面がバチャバチャと慌しかったろ。
『水操』
カムイは羊乳に夢中、アレクは実際に夢の中。私は湯船の縁に腰かけて景色を見ながらリラックス。なんせ賢者だからな。
ん? この魔力は……下だ。
覗いてみると、何者かが昇ってくるではないか。誰だ? まあ、こんな所に現れるのなんてあの人しかいないけどさ。




