313、アレクサンドリーネの女心
「ひと勝負? 何の?」
まさかこんな所で模擬戦ってわけでもあるまい?
「もちろんダンスの勝負さ。どちらがより女性を優雅にエスコートできるかを競うんだよ。面白そうじゃないか?」
あぁダンスね。私に勝ち目なんかないんだけど……でも面白そうだからやろうかな。
「いいよ。もちろん僕の相手はアレクなんだけど、君はどうするの?」
「同じくアレクサンドリーネ様をエスコートすることで勝敗をはっきりさせたいところではあるんだけど……「無理ね。」ですよねぇ……」
あー、シャルはすでにアレクをダンスに誘ってたのね。だけどけんもほろろに断られたって感じ?
「だから少し待っててもらえるかな? 踊れる女の子を探してくるからさ」
「いいよ。急がないからゆっくり探すといい。」
なるほど。今からナンパするわけね。踊ってる女の子はたくさんいるし、こいつほどイケメンならどうにでもなるよね。おまけに近衛学院の制服だし。
「もう少しカースが遅かったら……口説かれてたかも知れないわよ?」
「えっ!?」
いや、分かってる……分かってるとも。これは嘘だ。アレクに限ってそんなことはない。ただ単に私を動揺させようと……
「話題は豊富だし声質は程よい低音。おまけにあの顔よ? 大抵の女ならコロっといっちゃいそうだわ。」
「アレクも?」
「どう思う?」
もぉー……アレクったら。えらく溜めてくれるじゃないの。これだけ喧しい空間が静まり返るかと思ったぞ。体感で三分も……
私の返答なんか分かりきってるくせに。
「アレクが僕以外にころっといくわけないよね。もちろん分かってるよ。」
当たり前だろ? アレクったらさぁ。分かってて聞くんだから。悪い子だぜ。
「もぉーー! カースのバカ! 私だってたまには嫉妬して欲しいのに! ふんっ! カースなんか知らないんだから! もおっ!」
ぐはっ!? そ、そうなの!? 私が!? アレクの!? 心情を!? 乙女を!? 読み間違えた!? そ、そんな!? 時には嫉妬されたいの!?
「ちょっ、ま、待っ……」
そんな……アレクが行ってしまった……
「女心は難しいもんですよ。気を落としちゃいけませんよ」
カウンターの向こうから店員が酒を出しつつ慰めてくれる……うるせえよ……
「カース君? アレックスちゃんが一人で踊ってるみたいだけど。いいの?」
スティード君……
「ぬおおおおーーーーん! スティード君聞いてよぉおおおーー! アレクが! アレクがさぁーーー!」
「ええっ!? ちょ、カース君どうしたの!?」
「ぐおおーーーん! それがさ! それがさぁーー!」
聞いてくれよスティード君! こんな時どうしたらいいんだよぉーー!
「へぇー、カース君でもそんなことがあるんだね。でもさ、アレックスちゃんって結構美人だもんね。そりゃあモテるよね。あ、それはそうとサンドラちゃんのことなんだけどさ。この前さ…………」
くっ……スティード君から見ればアレクといえど『結構美人』程度なのか! それどころかサンドラちゃんの惚気を聞かされてしまったじゃないか……全然私の話なんか聞いてくれないし……
「……というわけなんだ。やっぱりサンドラちゃんってかわいいよね!」
結局サンドラちゃんが料理をする時のドジっ子エピソードをひたすら聞かされてしまった……
「待たせたね魔王さん。じゃあダンス勝負しようか。あれ? アレクサンドリーネ様がおられないようだが……」
もう来やがった。ナンパが早すぎるだろ。
「悪いね。ちょっと待っててくれる?」
アレクはどこで踊ってるんだ? いくら薄暗い店内だろうとアレクほど光り輝く女の子が見当たらないはずがない。
ほら見つけた。数人の男に囲まれてるじゃないか。おや、近衞学院生じゃない。あの制服は……?




