310、友との再会
「スティード君!? うわあ……ちょっと見ない間に大きくなったね……」
振り向けばスティード君がいた。ちょっと前まで私より少し高いぐらいだった身長が……頭一つ分は高くなってる。肉付きだってかなりゴツそうだ。
「カース君! アレックスちゃんも! いつ王都に来たの!? うわぁー本当に久しぶりだね! 元気にしてた!?」
スティード君にしては口数が多いな。それだけ再会を喜んでくれてるってことだな。
「今日の昼過ぎに来たんだよ。今から宿を探すとこ。もちろん僕もアレクも元気だよ。スティード君は何してるの?」
よく見ると友人達も一緒みたいだね。全員制服を着ている。スティード君のと同じってことは近衞学院の同級生かな。
「やっとテストが終わったもんでさ、みんなで遠出して何か美味しいものでも食べようってことで歩いてたんだよ。ねえ、よかったら一緒に行かない?」
「僕らは構わないけど、スティード君達はいいの?」
同級生五人組って感じかな。いきなり部外者が来たら楽しめないだろ? でもアレクが行けばかなり喜ばれそうだな。近衞学院って女の子が少ないらしいし。
「みんな! 紹介するよ! いつも話してた僕の最強のライバル、魔王ことカース君だよ! こちらはアレクサンドル家のアレクサドリーネ様だよ! みんないいよね!?」
「ま、魔王……この人が……」
「本当の本物の本人……」
「美しい……」
「ぜひご一緒してもらいたいね!」
最強だなんて照れるぜ。それにしてもスティード君がいつになく饒舌だな。これも近衞学院での学習の成果なんだろうか。
「いやだわスティード君たら。いつも通り呼んでよね。」
「いやいやそうはいかないよ。アレックスちゃんは立派な淑女だし僕らだって未来の近衞騎士だからね。」
「そう言って愛称呼びしてるじゃないか」
「まったくスティードは」
「羨ましいぞ……」
「そんなことだからいつまで経っても首席が取れないんだぞ」
やはりスティード君は近衞学院でもいじられキャラなんだろうか? 若手最強の剣士だろうに……
「それならお邪魔しようかな。ここら辺の店って全然知らないし。ね、アレク?」
「ええ。将来の近衞騎士たちとお食事するのも楽しそうだわ。」
アレクの一言に目が輝く彼ら。近衞学院生ってモテるだろうに。おまけに全員貴族だろ? 婚約者だっていそうなもんだが。
「よし! それじゃあ朝まで飲み明かそうね! となるとどの店がいいか……」
朝まで!? スティード君らしくないぞ……そりゃあ私は構わないけど。コーちゃんなんか大喜びしてるし。
「だったらオーバータイムがいいんじゃないか?」
「おお! それがいい!」
「魔王さんもアレクサンドリーネ様もぜひ!」
「昨年できた比較的新しい店なんです。それなりに楽しめますよ」
「任せるよ。ちょうどお腹もすいてるしね。」
近衞学院生がよく行く店か。どんなのだろうね。
へー。これは面白そう。まるでディスコ、何回か行ったデビルズホールみたいじゃん。ハードクラシックって感じの熱く激しいビートとそれに合わせたメロディが流れている。ノリノリでイケイケだね。やっぱ王都は違うよなぁ。それにしても近衞学院生がこんな店を知ってるなんて。意外と遊んでるのね。
「スティード君ってこんな店によく来るの?」
「いやぁ無理だよ。だってここ高いんだもん。彼らはみんな伯爵家以上の家柄だから平気だけど僕にとってはねぇ。今日が二回目だよ。」
あー……入るだけで金貨一枚は高いよなぁ。デビルズホールは入場料だけで金貨二枚だったけど。きっとあの店がやたら人気なもんで真似してるんだろうな。きっと王都にはこれ系の店が増えてると見た。
「そうなんだね。でもまあせっかく来たんだから楽しまないとね!」
「うん! 後でカース君の話をたっぷり聞かせてね!」
「カース! 踊るわよ!」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
腹はへってるけどアレクが楽しそうだからいっか。私も踊ろっと。コーちゃんもいつもの頭をふりふりするダンスをしてるし。カムイは外で待ってるから食い物を持ってこいってか。後でな。
近衞学院の四人は早速アレクを取り囲んでいる。ふふふ、アレクのステップについていけるかな?
「おっ、スティード君! 腰のキレがいいね!」
「そ、そう? ダンスは授業でもやってるからかな。カース君こそ弱点だった足腰の弱さが少し克服できてるんじゃない?」
おっ、それは嬉しいね。でも少しなんだよなぁ。たくさん歩きまくってはいるけど、あんまり走ったりはしないからなぁ。まあちょくちょくイグドラシルの防具に魔力を流さずにパワーリストやパワーアンクル代わりにはしてるけどさ。今も。
「いやー色々あったからね。それよりスティード君の順位ってどうなの?」
さっき誰かが首席になれないとか言ってたもんだから気になっちゃうじゃん。今年で卒業だしさ。つい先日領都の騎士学校を卒業したと思ったらもう近衞学院も卒業だなんて。月日が経つのは早いもんだよなぁ。
「いやぁ……言いにくいんだけど……十六位ぐらいかな……あはは……」
え……首席どころの話じゃないじゃん……
「どういうこと? スティード君より強い者がそんなにいるってこと!?」
嘘だろ?
「いやぁ……剣術では僕が一位だよ。二位と三位の二人を同時に相手をしても勝てるしね。」
「だったらどうして?」
「座学と魔法だよ。レベルが高過ぎてさ……置いてかれるばかりなんだ……」
あー……納得……
王族の護衛を担当する近衞騎士だ。剣術の腕だけで務まるもんじゃないわな。授業でダンスもあるぐらいだし。
「座学ではだいたい中位、魔法ではほぼ最下位なんだよね……」
「あ、あぁ……」
「僕の志望はさ、ウリエンお兄さん、いやウリエン先輩と同じ所に配属されることなんだ。でも、この成績だと……」
うわぁ……兄上と同じところって、それ国王の近衞になることじゃん。スティード君らしくもない無茶なことを言うなぁ。そもそも兄上だって卒業してすぐに国王の近衞になんてなれなかっただろうし。当時の兄上は王太子の近衞になったんだったか。それはそれで大抜擢だよな?
「でもスティード君のことだから日々の努力は欠かしてないんだよね? それでもきつい感じ?」
ディスコで踊りながらする話じゃないぞこれ……なぜこの店を選んだんだよ……
2222話でした。
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