305、金貨判定と判別
ソファーに寄りかかり尊大な態度を隠しもしない。でかいのは体だけじゃなくて態度もってわけか。
「用意できたらしいな。見せてみろ」
マジで尊大だなこの丸オーク野郎。
「こちらに」
ローレンは金貨が詰まった箱をテーブルに置き、蓋を開ける。黄金の輝きが部屋を照らす。
「なっ……んんっ。よくやった。お前を信じていたとも。では数えさせてもらうぞ?」
「ええどうぞ」
思うに、こいつってマジでしばらく放置しておくつもりだったんだろうな。ところが、ローレンが金貨は揃ってない的な話をしたもんで喜んで顔を出したってとこか?
なんだこいつ? 一枚ずつ箱から出して数えてやがる……正気か? 商人のくせに金を勘定する魔法も使えないってのか? どんだけ時間かけるつもりだよ。だっるぅ……
マジでどんだけ時間かけるんだこの野郎……体感で二時間経ったぞ? 実際には三十分ぐらいだろうけどさ。
「ふむ、ローレンよ。よくこれだけもの金貨を集めたな。褒めてやる。だが、これではだめだな」
「はぁ!? どういうことですかタイタスさん! 今ちゃんと数えたでしょう!? きっちり二百枚あったでしょうが! 早くホーリィを連れてきてくださいよ!」
「ふん、所詮はただの行商人に過ぎんようだな。目利きもできんと見える。これは何だ!」
ん? 奴が箱に戻した金貨のうち数枚ほど取り出して……テーブルに並べた?
「よく見てみろ! お前の目にゴーストが入ってないのなら!」
目にゴーストが入る……緊張や重圧などで見る目が曇ることを揶揄する慣用句か。
「私の目にゴーストなど入っていない! ヘルメネース様に誓って金貨二百枚を揃えてある!」
財産と商売の神ヘルメネースか。
「ならばこれに金貨判定を使ってみろ! わしへの弁済にこんなものを使うなどふざけているのか! 今すぐ騎士団を呼んでもいいのだぞ!」
「金貨判定などと! そんなものここに来る前に使ったに決まってる! 間違いなく全ての金貨を確かめたのですから!」
ほぅ? いつの間に。でもそれが商人の嗜みなんだろうね。信用のためでもあるよね。
「いいから使ってみろ! 使えば分かるだろう!」
「いいでしょう……」
『『金貨判定』』
ん? 今、こっそりアレクも同じ魔法使ったよな? 気づいたのは私ぐらいだろうけど。
「どうだ? ん?」
「……ま、待ってください……もう一度、今度は一枚ずつ……」
『金貨判定』
『金貨判定』
『金貨判定』
「そ、そんな……」
何ごとだ?
『おいローレンどうした? 困ってんなら足を組め』
無反応かよ……私の伝言が届いてない……
「贋金……だと……?」
「そうだローレン! 確かに二百枚の内わずか三枚かも知れん! だが贋金は天下のご法度! どう始末をつけるつもりだ!」
「バカな……こんなことが……」
『落ち着け。罠に決まってんだろ』
だめだな。反応がない。さては頭が動いてないな? いきなり贋金の濡れ衣だもんなぁ。分からんでもないが……どうしたもんか。
「いくらお前でもこれは看過できんぞ! こうなったら騎士団を呼ぶしかないだろう! いいな?」
「い、いや、それは……」
『バカ! 引くな!』
私の伝言を聞けよ。
「わしとてお前を突き出すのは気が引ける。だが王国民としても商人としても贋金を見逃がすことなどできぬ。お前だってそう思うだろう?」
「そ、それは……」
「だが、商人として有能なお前がこんなことをするなどと、わしにはとても信じられない。きっと何かの間違いだ。そうだろう?」
「そ、そうです! 何かの間違いに違いありません!」
おい……
「わしに任せておけ。どうにか内々に処理してみせる。お前とわしの仲ではないか。任せておけ。な?」
「そ、そうですね……」
だめだこりゃ。
『アレク、たぶん用意してると思うけど…………を使ってやったら?』
うんうん。アレクにはきちんと届いてるね。私の方は見ずに頭が少し動いた。
「よし。任せておけ。とりあえずこれはわしが預かっておくからな。詳しくは後日相談しようではないか」
「待ちなさい。それに手を触れないで。」
さっそくアレクが動いた。ビクッと手を止めた丸オーク野郎。
「何だ? わしの好意が気に入らんとでも言うのか? ならば今すぐ騎士団を呼んでもいいんだぞ? ローレンを連行するためにな」
「あ、あの、そ、それは……」
「いいから黙って見てなさい。」
ふふふ。アレクは頼りになるんだぜ?
『判別』
そう。物品の持ち主を特定する魔法だ。私は使えないけどね。
「な、何を勝手なことを! ローレンお前! このような女を連れてきて何のつもりだ!」
「い、いえ、そ、その……」
ははぁーん……こいつ、やりやがったな?




