298、カースの小遣い稼ぎ
うぅ……ん……
よく寝た……気がする……
「あら、起きたのねカース。何か飲む?」
「おはよ……飲む……」
ふあぁーあ……よく寝た気はするけどあくびは出るもんだな。
「あら? 何だいあれは?」
「さあ? 私もよく分からないわ。」
遠巻きに私達をじろじろ見る野郎ども。正確にはアレクの剥き出しの生足を見てるのかな? アレクほどの上級貴族が人前でこんなにも足を出すことなんてまずないからな。気持ちは分かるとも。それなのに近寄ろうとせず遠くから見るだけで我慢するというのは好感が持てなくはない。
「はい、お待たせ。」
「うん、ありがと。」
全然待ってない。アレクが水の魔法で作った冷水に果実を絞って軽くシェイク。リモン水だね。ごくごく、うっま……
「ぷはぁ……すごく美味しかったよ。カツラハ村のリモンだね。ありがとね。」
ヒイズルはカツラハ村か。まだあったとは嬉しいね。
「よかったわ。でも残り少ないの。王都に行ったら色んな果実を買い集めておきたいわね。」
「それはそれで楽しみだね。スピオスライド商会にも顔を出しておきたいしね。」
香辛料もたくさん欲しいもんね。
「あらカース? 今から南の大陸に行こうという時にわざわざ王都で買わなくたっていいものもあるんじゃない?」
「はは、その通りだね。」
そりゃそうだ。香辛料なんて南の大陸に行けば安くたくさん買えそうだし。
よし。目が覚めたぞ。そして決めた。今夜の宿は……
「アレク、コーちゃん達が戻ったら対岸に渡るよ。で、あっちで泊まろう。」
「いいわよ。同じ川でも右岸と左岸で何か違いがあるのか気になってたの。おそらくあちら側もここと同じような状況とは思うけど。」
「それ面白そうだね。」
この状況は『川止め』って言うんだったかな。『浮身』を使えない者なんてまずいない。だけど川を渡れるほど魔力が持つかと言うと怪しい者がほとんどなんだよな。浮身を覚えたばかりの子供が調子に乗って空を飛び、上空で魔力が切れて落下。あるあるだもんなぁ……
ましてや馬車や荷物まで含めて対岸まで飛べるかと言うと、かなりハードな話になるんだよな。
そこで、ここの経済に影響を与えない程度で小遣い稼ぎをする方法を思いついた。
『お前らの中で今すぐ対岸に渡りたい者がいるならここに来い!』
拡声を使ってみた。
「あら、カースったらどうしたの?」
「対岸に渡るついでに一組だけ一緒に連れてってあげようと思ってさ。あんまりたくさん連れてくとここの代官に悪いから一組だけね。」
そう。ここには代官がいるらしい。れっきとしたボルドラ領主の収入源なんだよね。おまけに王都との境だし関所的な意味も少しはあるらしい。少しはね……
ガストンがまだ領主をしてたのなら嫌がらせに全員運んでやってもよかったが、今となっては何もしなくていいだろう。まあ小遣い稼ぎはさせてもらうけど。
遠巻きにこちらを見ていた奴らの中から数人が寄ってきた。本当か嘘かはともかく、気になるだろぉ?
「どういうことだ? 船の当てがあるのか?」
「対岸に渡してくれるのか? いくらだ?」
「今すぐだと言ったな? 本当なのか?」
うんうん。気になってるようで何よりだ。
「船の当てはない。対岸には渡す。料金は相場通りでいい。今すぐだ。本当だ。ただし、一組だけな。」
「船の当てがなくてどうやって……」
「相場通りだと……? 本当なのか?」
「一組だけとは? 私らは馬車二台だが?」
「相場通りとは言ったが希望者が多いなら話は別だ。一組だけだからな。馬車二台だろうが四台だろうが同じ商隊なら一組でいい。で、どうする?」
「前金で受け取って逃げる気じゃあ……」
「本当なら頼みたいが……」
「頼む! 急いでいるんだ! これが間に合わないと……」
やっぱ人によって反応が分かれるもんだな。
「じゃ、他にいないみたいだしあんたのところで決まりかな。馬車二台だったな。行こうか。」
「ま、待て! 本当なのか!? 本当ならうちだって!」
「こ、こっちもだ! 相場通りでいいんなら頼みたい!」
「待てよ! 私らが先だぞ!」
おっ、集まってきたしヒートアップもしてきたね。これでこそ小遣い稼ぎになるってもんだ。
「運ぶのは一組だけだからな。話し合って決めてくれ。」
もちろん一番高値を付けた組を運ぶけどね。リモン水を飲みながら見物。横座りしたアレクの両腿の間に頭を乗せて、寝転がりながら。この寝方もいいなぁ。
おや、なんだか増えてきた?
「一応言っておくけど高値を付けた組を運ぶからな。脅しや暴力を使ったら運んでやらないぞ?」
うちは何々商会だぞ! うちに逆らってこの先生きていけると思うなよ! 的な声が聞こえる前に釘を刺しておいた。
こいつらがある事に気付いたら一気に解決するんだけど、まあ気付かないだろうな。なかなか大きい視点で見れるもんじゃないよね。普通は自分のことだけで精一杯だし。
さあ、どうなるかな?
昨夜ふと短編を書いてしまいました。
『役立たずと傭兵団を追放された桃太ロウ! 鬼族を支配下において朝廷に復讐します! 純度100%のきび団子さえあれば無敵です! 今さら後悔してももう遅い!』
https://ncode.syosetu.com/n7454ih/
短いですよ。
童話です。




